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SIRAN  作者: ルイ《wani》
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3/5

SIRAN 3

「…で? のん君」


崩れるように由井の部屋の玄関先で、私は座り込んでいた。

どうやら彼氏さんはいないらしい。

でもいようがいまいが、私はきっとここに来ただろう。

由井は私の懺悔のような告白を、ビール片手につまみのドーナツをほおばりながら、

彼女なりに、とっても真剣に聞いてくれた。


「…なんと自転車が盗まれまして…」


「マジでー、ぶっそうだな」


「…そして副店長は車で送ってくれました…」


「おー、ぶらーぼ」


ぱちぱちという拍手が場を白けさせる。

私はため息を、はき落とした。


「気づいちゃったね、のん君」


見上げると、由井はビールを口に含みながら微笑んでいる。


「…こんなの、気付いたところでどうなるの。

胸が苦しくて、顔もまともに見れないし…

すっごく好きなのに、」


まぁ上がんなさいよという由井の気楽な受け答えに、涙が出てくる。

別に由井のせいじゃない。でも、涙が出てきた。


「私、どっちにしても、苦しいよ…」


副店長の指に光る、あの指輪。

結婚しているのか、婚約しているのか、それとも恋人とのおそろい指輪なのか。

私は知らない。知りたくもない。


「いつも楽しそうに笑ってるけどさ…」


幸せだと口にする彼の声を聞いた。

その幸せに私はいない。含まれていない。

彼にとって私は特別な、あの指輪の相手と同じじゃあない。


「どうしたって、私の気持ちは終わりだよ…」


もし彼が私の気持ちを受け入れたとしても、彼は少なからず傷つく。

奪ってやろうなんて思えない。

幸せでいてほしい、誰よりも、いつでも。

じゃあ、私の気持ちはどうすればいいの。


ぎし、と床が軋む。

由井が歩み寄ってきた。


「今日ね、彼氏が出て行ったのさ」


思わず由井の顔を見た。由井の目は、少し赤かった。


「あたしも、どうしようもない気持ち、持ってるんだ。

でも、これは本当にどうしようもない。

自分で何とかするしかないよ」


床に胡坐をかいて座る。由井は強いて気楽そうに話していた。


「別にいいじゃない、好きだって。

問題はその気持ちをどうするかだと思うよ。

あたしは、この気持ちを時間をかけてでも、

…全力で、忘れる。


のん君は、どうするの」


忘れていきたい? それとも、


「…私、初めてなんだ。

片思いはいっぱいしてきたけど、いつも言葉にしなくて終って、それでいいって思ってた。


でも、この気持ちは…伝えたいの」


結果を望んでるわけじゃない。

ただ知っておいてほしい、私のわがまま。


「わがままじゃないでしょ」


由井はビールを飲み干して、私に言った。


「だって、恋してるんだもんね」


笑う。この気持ちを持っているのは辛い。

好きになった瞬間に失恋してるけれど。

かなってほしくもないし、かなうはずもない。

悲しくて苦しい、どうしようもない恋だけど。


「…そうだよね」


私は、彼のことが好き。しかもすっごく。

それは、私にとって大切な気持ちなんだ。


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