93.引越し
土曜の午後。
俺の家に初めて「友達」が来た。
赤穂と巴を居間に通して、卓袱台に珈琲と姉ちゃんの手作りクッキーを出す。
他愛ない話をしてオカルト話をして、その流れで体力モードのデーレヴォを呼び出した。
「スゲー! マジックアイテム、生で見んの初めてなんだ! スゲー!」
赤穂は大興奮でスゲーを連発していた。感動に言葉が追い付かないらしい。
レンタルだから、もうすぐ返すことを言うと、物凄く残念そうに悔しがった。
巴は、最近かなり元気になってきていた。
以前よりも口数が増えて、今日も普通に会話に参加している。まだ、赤穂の冗談に弱々しく笑う程度だけど、始業式の日よりも、ずっと生き生きとしていた。
夕飯前に解散し、三人でメルアドを交換した。
塩屋さんから、要点がよくわからない内容のメールが来ていた。なんだかよくわからないまま、当たり障りのないレスを送った。
日曜は、家族三人で引越しの準備を進めた。
すぐに使わない物を段ボールに詰める。アルバムは全部、花隈家に送った。もう会えないから、せめて写真だけでも祖母ちゃんの許へ。
火曜日に裁判が終わって、離婚が成立した。
姉ちゃんと俺の親権者は、父ちゃんに決まって、オカンは俺達の養育費と父ちゃんへの慰謝料と使い込んだ家計費を一括払いすることになった。
すぐに花隈の本家が、父ちゃんの口座に振り込んでくれた。
俺達の改名は、引越し前に通知が来た。
普通はその名前の使用実績が要るみたいだけど、すんなり認められた。
「店長の名前が、長田正枝さんなの。新しい名前に一文字下さいって言ったら、何か、すごく喜んでくれて……」
姉ちゃんは、嬉しそうに名前の由来を説明した。
塩屋さんから「これからもメールしてもいい?」と、メールがきていたので、「別にいちいち俺の許可とか、要らないんじゃない?」と返信しておいた。




