91.幸せ味
須磨春花は、毎日、俺に弁当を作ってくれる。
最近は、全部一人で作っていると言っていた。ちょっとずつ弁当のレベルが上がって行くのがよくわかる。
普通に美味い。
姉ちゃんのご飯も、店長の料理も美味いが、それとはまた別の美味しさだった。
どう違うのか、説明が難しいが、強いて言うなら、誰かの為に作った家のご飯の味。
「普通の幸せ」を形にして、ぎゅうぎゅうに詰めてある。
それが、須磨春花の弁当だった。
相変わらず、通学路では微妙な距離を保って、挨拶以外の会話はしない。
帰宅後、洗った弁当箱と姉ちゃんと一緒に作ったクッキーを持って、お隣にお礼を言いに行く。
姉ちゃんは、チョコが怖いのは相変わらずなので、チョコチップクッキー以外の物を、色々作っている。
これまで、全く会話がなかったから、弁当とクッキーのお礼と感想を交わしたり、学校の話をするのは、とても新鮮だった。
近所の人たちとも、普通に挨拶や、世間話ができるようになった。
学校でも、少しずつ赤穂と巴以外の奴とも喋るようになった。
校務員さんとも、毎朝挨拶する。
西代班長に「人見知り、治ったんだな」と言われた。そう言うことにしておいた方が平和そうなので、否定はしなかった。




