89.係争中
オカンは結局、起訴されなかった。
釈放後は、花隈の祖母ちゃんと義一伯父さんが、本家に連れて帰った。
前科者の子にならなくて済むから、これはこれでよかったのかもしれない。
クソ兄貴は公判中で、拘置所に移された。来月中には一審判決が出るらしい。
父ちゃんは、会社に事情を話して、暫くは帝都の本社で働けるようになった。
七月一日付で、師国の田岐支社に転勤する。
今月末には天神府の社宅を引き払って、会社が手配してくれた田岐市内のマンションに移ることになった。
離婚調停は、不調に終わった。
調停の最中にオカンが父ちゃんを殴って、止めに入った調停委員にも暴力を振るって、全く話にならなかったからだ。
今は裁判をしていて、こちらは今月中にも判決が出る。
俺は、父ちゃんが代理で、姉ちゃんは、自分で、改名の手続きをした。俺は「幸助」、姉ちゃんは「幸枝」になる予定。
虐待した親が付けた変な名前で、この名前を呼ばれるのも、名乗るのも苦痛だ、と言う証拠を書類に添えて提出した。今は結果待ちだ。
DNA鑑定の結果は、先週届いた。
クソ兄貴は浮気の子で、姉ちゃんと俺は、父ちゃんの子だった。
父ちゃんは、姉ちゃんと俺を抱きしめて「これからもずっと家族だ」と言ってくれた。もし、俺たちが浮気の子でも、何とかして、オカンから引き離してくれると言っていた。
この人は、離れて暮らしていても、ちゃんと俺たちの父親だった。
クソ兄貴の親子関係不存在確認調停をして、「友田創歌瑠」は、父不詳の「花隈創歌瑠」になった。
父ちゃんは、創歌瑠に掛かった学費の返還をオカンに求め、オカンの実家の花隈家が一括で支払った。
それから、バレンタイン事件で友田家が払った賠償金も返してくれた。
父ちゃんは、そのお金で親戚に借金を返し、住宅ローンも一括で繰上げ返済して、家を売りに出した。
まだ、買手はついてないけど、どうせ月末には、俺たち姉弟も父ちゃんと一緒に田岐市に引越す。




