84.積上げ
昼過ぎに父ちゃんが戻って来た。
母方の……花隈の祖母ちゃんと、オカンの兄……花隈家長男の義一伯父さんが一緒だった。
花隈の祖父ちゃんは、ずっと前に亡くなったが、オカン以外みんな常識人だ。何でオカン一人があんななのか、謎過ぎる。
居間と客間の襖を取って広くした部屋に、全員集められた。
姉ちゃんが、手に持っていたICレコーダの録音ボタンを押す。
俺のポケットに入っていた物だ。姉ちゃんのは、証拠として警察に預けてある。
「一度ならず二度までも、こちら様には大変なご迷惑をお掛け致しまして、誠にお詫びの言葉もございません」
祖母ちゃんは菓子折り、義一伯父さんは、三十キロ入りの米袋を差し出して、友田家の親戚一同に土下座した。
父ちゃんは、分厚いA4封筒三つを脇に置いて、重々しく口を開いた。
「笑美華は、結婚当初から不貞行為を続けていました。相手は七人、明確な証拠があるのは、直近に交際した三人。全員の素性と交際期間、証拠写真などのコピーです」
顔を上げて固まった二人の前に、封筒のひとつを置いた。
祖母ちゃんと義一伯父さんは、泣きそうな顔で、もう一度頭を下げた。
「不埒な娘で申し訳ございません。この償いは、必ず致しますので、子供たちの為に離婚は思いとどまって下さいませんか……?」
「私は単身赴任していましたが、家計費の口座は別に作って笑美華に渡し、毎月決まった日に、十五万円ずつ振り込んでいました。家のローンと税金、子供たちの学費の積立は、私の口座からの引き落としで、十五万円は、食費や光熱費等の生活費として、渡していたお金です」
一週間の食費三千円で一カ月だと二万以下……
オカン、何に使ってたんだよ。いや、まぁ見たけどさ……
「笑美華が、審査のゆるい所でクレジットカードを作り、浪費していたことがわかりました。家計費の殆どを使い込んだ上、娘のアルバイト収入も、この子たちの為に友田の祖父母が積み立てていた貯金も、お年玉も全て、私が留守の間に取り上げて、浪費していました。これは、その浪費の証拠のコピーです」
父ちゃんが、ふたつ目の封筒を不貞の封筒の上に重ねた。
祖母ちゃんと義一伯父さんが、更に低く頭を下げる。
「至らぬ妹で、申し訳ございません。借財は、私共が必ずお返し致します」
祖母ちゃんの涙が、畳に落ちた。
「以前は、私の両親と同居していましたが、七年程前に笑美華が追い出してしまいました。その後、長女と次男に家事の全てを押し付け、暴言や暴力などの虐待もしていました。私に告げ口しないように、暴力で脅されていた為、不覚にも最近まで気付かず、子供たちには……長い間、申し訳ない事を……」
父ちゃんは、そこで声を詰まらせ、祖母ちゃんが、涙でぐしゃぐしゃになった顔を姉ちゃんと俺に向けた。
義一伯父さんも、目にいっぱい涙を溜めている。
「お母さんは、お兄ちゃんのことは甘やかしまくって、お小遣いいっぱいあげて、どんな悪い子と付き合っても、何も言わなくて、万引きとか悪いことしても、全然叱らなかったから、今でも不良大学生で、昨日イケナイお薬使ってるのがわかって、逮捕されたの」
涙を拭う父ちゃんに代わって、姉ちゃんが淡々と説明を始めた。




