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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第09章.援軍

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66.搬送先

 チャイムが鳴った。

 「オイ、どうした?」

 国語の板宿(いたやど)先生の声が近付いてくる。


 赤穂(あこう)がてきぱき返事をした。

 「友田君が貧血起こしたみたいです。委員長の俺と(ともえ)君で保健室に連れて行きます」

 「そうか。そーっといくぞ。足持ってくれ」

 頭のすぐ傍で先生の声がして、腕の付け根と足首を掴まれた。体が浮いて横に移動する。


 「担架とか、大袈裟だよな」

 「委員長がおんぶしてやればよかったんじゃね?」


 「大袈裟なもんか。気を失ってる奴は、自力でしがみつけないから、おんぶはロープとかで固定しない限り、後頭部強打の恐れがある。だっこも、君らの体力と体格で保健室まで運ぶのは、階段が危ない。それに、倒れた時に頭を打っているかもしれないから、なるべく頭を動かさないように運ばないと、危険だ。赤穂の判断は正しい」

 誰かが小声で言った無責任発言に、先生が少し厳しい口調で説明した。


 体が動かないだけで意識はあるから、会話は全部聞こえている。

 「巴はいいぞ。赤穂と行く。教科書の十二から二十一ページを読んで自習! ……赤穂、行くぞ」

 先生の声と同時に、簡易担架が浮いた。


 白い天井、消毒薬の匂い。

 横を向くと、知らない部屋に高校の制服を着た姉ちゃんが座っていた。


 「気が付いた? あんた、学校で倒れて、病院に運ばれたの。無理させて……ごめん」

 姉ちゃんは涙声で俺の手を握った。

 保健室に運ばれている途中で、本格的に気絶したらしい。


 「姉ちゃんのせいじゃない。オカンのせいなんだから、謝らなくていい」

 「うん。でも、ごめんね。証拠……今朝、中央郵便局から速達で送ったから、明日には着く」

 姉ちゃんが、声を潜めて言った。

 思わず跳ね起き、両手を握りあって激しく振った。


 「もう面会時間終わるから帰るけど、後のことは心配しないで」

 「あ……病院代は?」

 「叔母さんが立て替えてくれた。学校の保険とかで、後で戻ってくるみたいだし、あんたはそんな心配しなくていいからね」

 「姉ちゃん、誕生日おめでとう。誕生日なのにこんな……」

 「そんなのいいから。あんたが無事でいてくれるだけで嬉しいから、元気になってね」

 「……うん」

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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