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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第09章.援軍

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62.緊急用

 姉ちゃんが、バスタオルで頭を拭きながら戻ってきた。


 俺は父ちゃんにどうやって知らせるのか、聞いてみた。

 「音声と動画は、腕環の子の分もDVDにまとめて、印画紙(いんがし)の写真とクレカの明細と通販伝票のコピーも一緒に、お父さんの会社に郵送するの。発送は早くても月曜日かな? ネガは店長に預かってもらったから、大丈夫。今日、写真屋さんで、印画紙にプリントしてもらった分だけでも、充分過ぎるくらい威力あると思う」


 姉ちゃんは引き出しから、緊急連絡用にもらっていた父ちゃんの名刺を出した。


 うん。スゲー緊急事態だ。


 「転送した携帯メールは、受信用アカウントのIDとパスをメールで送って、先にあっちで見てもらう。わかった?」

 メールサーバには、デジカメの画像データもある。


 「わかった。やっぱ、姉ちゃん、頭いいわ」

 「またまたー。おだてたって何も出ないよ」


 姉ちゃんは、ミッションの報告を再開した。

 スーパーから出てきた二人の写真。色々買いこんだスーパーの袋一個を二人掛かりで持っている。鳥肌が立った。


 「バカップルの動作」コンプリートだ。


 もし、デートの場所が海辺だったら、砂浜を走って「ホホホ……捕まえてごらんなさーい」も、やるに違いない。


 俺たちは、証拠を集めやすくて助かるけど、こいつら、人として終わってる。


 もしかすると、龍寿(りゅうじゅ)はオカンに「二十代の独身」って騙されてるかもしれない。でも、オカンが結婚してるの知ってて、不貞行為したなら、父ちゃんは、龍寿にも慰謝料を請求できる。


 主婦のオカンに飯を(おご)らせてるような男に払えるんだろうか?


 ディスプレイには、住宅街を歩く二人の後ろ姿が表示されている。

 二人がアパートの外階段を上がる様子。二階の一室に入る様子。部屋番号は二○三。


 アパートの全景。電柱の青い住所表示板が写り込んでいる。

 アパートの郵便受けの写真。こちらにも住所表示がある。二人が入った部屋の番号には名札が入っていなかった。


 姉ちゃんは、その住所をテキストファイルに入力した。

 「相手の名前、携帯のアドレス帳にはあった。野田龍寿(のだりゅうじゅ)……偽名じゃなきゃね」

 オカンがまだ帰っていないから、デーレヴォもまだだ。


 午前零時過ぎ。

 もう終電も行った。タクシーを使わない限り、今夜はもう帰らないだろう。


 さっきまで寝ていたのに、まだ眠い。


 「私たちは、ここで帰ったから、後の事は腕環の子が戻るまでわからないんだけど、まぁ……お父さんに任せよう。画像のコピーとかは、私がしとくから、あんたはもう寝なさい」

 姉ちゃんはそう言って、部屋の灯を消した。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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