57.姉帰還
「起きてる?」
ノックの音と姉ちゃんの声で目が覚めた。
頭の脇にノーパソ。画面は真っ暗。スリープモードになっていた。
窓の外も真っ暗だ。
俺はベッドから出て箱を除け、鍵を開けた。
スーパーのビニール袋と、エコバッグを持った姉ちゃんが入ってきた。鍵を掛け、箱を元に戻す。
「今、家に二人きりだけど、念の為にね」
姉ちゃんは、いつもの地味な恰好で言いながら、机にスーパーの弁当を置いた。
パソコンのスリープモードを解除し、エコバッグからICレコーダとCD‐Rを出す。
「写真はご飯食べながら見よう。半額のお弁当でごめんね」
俺は机にパソコンを置き、自分の分の弁当を持って、椅子ごと姉ちゃんに近付いた。
「姉ちゃん、変装は?」
「したよ。バッチリ。友達が手伝ってくれた」
「友達!?」
思わず声が大きくなった。
「高校に入ってからできた友達。妻鹿葵さんって言うの。家が遠いし、学校や外で会う分には大丈夫。服とウィッグを貸してくれて、メイクもしてくれたの。葵さんちで着替えとメイク落としもさせてもらったから、すっかり遅くなっちゃった」
姉ちゃんにも、赤穂みたいな学校限定の友達が居るんだ。
姉ちゃんも、孤独じゃなかった。
しかもこんな、バレたら洒落にならないことに協力してくれるって、親友レベルじゃないか。
「姉ちゃん、よかった。友達……できてよかった」
「ん? うん。ふふっ。ウチの学校、部活強制だから一応、調理部に入ったの。葵さんは部活の友達。私はバイトで殆ど行けないけど、何か仲良くなってね」
俺は胸が詰まって、言葉もなく頷いた。
校内限定の友達。そう言う良い縁もあるんだ。
「葵さんち、両親がそれぞれ浮気して、小三の時に離婚したんだって。でも、どっちも子供要らないって押し付け合って……結局、母方の実家に引き取られて、今も、その家に居るの」
ひでぇ……
言葉を失う俺に構わず姉ちゃんは続けた。
「葵さんに服貸してって言ったら、理由を聞かれて、説明したら、ノリノリで手伝ってくれて、尾行にもついて来てくれたの」
「えぇっ!?」
「多分、標的にはバレてないから、大丈夫。私達、観光客のフリして、葵さんのお祖父さんのカメラで、写真撮りまくったし」
姉ちゃんはCD‐Rからパソコンにデータをコピーする間、嬉しそうにミッションの報告をしてくれた。




