55.大学生
訳のわからない理屈で、ボディに一発喰らわされた。
吐きそうになる。
吐いたら、昼ご飯が勿体ない。
片付けの手間が増える。
無駄に消耗する。
何とか耐えて部屋に戻った。
鍵を掛け、ドアの前に教科書を詰めた箱を置く。ICレコーダを停止して、ベッドに潜り込んだ。
大学生なのに勉強してないのは、お前の癖に、何が勉強しろよ、だ。
バイトも勉強も就職活動もしないで、遊び呆けて金をドブに捨てやがって。
その金は、父ちゃんと姉ちゃんが、汗水たらして稼いだ生活費だよ!
須磨さん家の損害賠償の足りない分は、父ちゃんの親戚が立て替えてくれたから、一括払いできた。
父ちゃんは今、親戚に借金を返す為に、全力で働いてる。
家のローンとオカンのせいで背負った余計な借金で困ってるのに、何で、二十一歳にもなって、そんなバカなんだよ!
直接言ったら、暴れて後片付けが大変だから、言えない。言わない。
姉ちゃんをブスって呼んで欲しくない。
姉ちゃんはブスなんかじゃない。質素で地味なだけで、普通だ。普通に可愛い。
顔しか取り柄のないクソ兄貴に、姉ちゃんをブス呼ばわりする資格なんかない。
ムカつき過ぎて眠るどころじゃない。ストレスで消耗する。
あのクズだけは、マジで存在そのものが害悪。
クソ兄貴は、友達や彼女との付き合いを禁止されていない。だが、今まで一人も、家に連れてきたことはない。
ベラベラ一方的にされた話を総合すると、つるんでる奴らは、金だけの付き合い。彼女は遊び。家に連れて来て「結婚して」と言われるのがイヤ。
どこまでも浅ましくて、賤しい付き合いしかしてないんだ。
玄関が開く音がした。
カーテンを細く開けて通りを見る。クソ兄貴の後ろ姿が、遠ざかって行くのが見えた。
雲ひとつない晴天の下、下衆はどこかへ行った。
一階に降り、玄関をしっかり施錠して台所を覗く。
皿もスプーンもそのまま。テーブルの上には食べ零し。空気がヤニ臭い。
食事マナー、離乳食レベルかよ。
園児でも食器を流しに運ぶくらいするっての。
俺は換気扇を回し、躾のなっていない二十一歳児が荒らした台所を片付ける。
階段昇降と後始末で、余計な体力を消耗してしまった。
怒ると更に余分な体力を消耗するので、今後について考えることにした。




