53. カレー
眠れないまま、うだうだゴロゴロしている内に、正午になってしまった。
今、オカンは浮気相手と逢っていて、姉ちゃんとデーレヴォは、それを尾行している最中だ。
「しっかり食べて体力を回復させなさい」
俺は姉ちゃんに言われた通り、昼食を食べに台所に行く。
姉ちゃんがタイマーをセットして行ってくれたお蔭で、ご飯は今丁度、炊きあがったばかりだ。
調理と片付けの労力を節約する為、一パック八十八円のレトルトカレーと三缶パックで百九十八円のツナ缶が、用意してある。
鍋でカレーを温めて、ご飯にツナ缶をかける。手抜きツナカレーだ。
姉ちゃん、昼飯どうするんだろう。
刑事の張り込みみたいにあいつらを監視できる位置でアンパンでも食べるのかな。
もしかすると、あいつらと同じ店の監視できる座席でランチセットを食べるのか?
後者だと、姉ちゃんの独立資金の減りが洒落にならん。
カメラ代とかも、姉ちゃんが出した。
俺も出すって言ったけど「あんたはまだ先が長いんだから、取っときなさい」って断られた。独立まで時間のない姉ちゃんの方が困るのに。
思考がループし始める頃、手抜きツナカレーを完食した。
食器洗いも、姉ちゃんが帰ってからするって言われてるけど、せめてこのくらいは……
流しに立つ。
玄関で物音がした。鍵を開ける音。ドスドス響く足音。
誰が帰ってき……いや、これはクソ兄貴。
俺は、部屋着のポケットの中で、ICレコーダの録音ボタンを押した。
平静を装って皿を洗う。
「昼飯、何?」
「カレー」
クソ兄貴は手も洗わずに座った。全身がヤニ臭い。
「は? コレ? チッ! シケてんなぁ。まぁいい。食ってやるよ」
俺は黙ってレトルトを鍋に入れた。お湯捨てる前でよかった。
カレー皿にご飯をよそう。盛りを見せると、クソ兄貴は何も言わずに頷いた。




