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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第07章.取り説

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42.フリメ

 食べ終わった食器を持って、台所に降りる。廊下の奥から姉ちゃんが出てきた。

 ドライヤーの音は続いている。


 「あ、起きた。それ洗っとくから、お風呂入んなさい。お母さん、もうすぐ終わるから」

 「今日……」

 姉ちゃんは、シーッと言って俺を黙らせ、親指で風呂の方を指差した。

 俺は無言で(うなず)いて、トイレに行った。オカンと入れ替わりに風呂に入る。


 「鯉澄(りずむ)まだだったの? さっさと入って寝なさい」

 「はい」

 機嫌がいいのか、オカンは普通の母親みたいに言って、自分の部屋に引き揚げていった。

 今夜もシャワーだけで済ませて、部屋に戻る。


 姉ちゃんは更に何か印刷しつつ、フリメに転送した不倫メールを別のフリメに転送して保険を掛けていた。


 メールは……何かの暗号っぽかった。

 小文字と顔文字が乱れ飛び、誤変換だらけ。所々■なのは、絵文字の文字化けだろう。


 「到底、四十代のオバンのメールとは、思えないわ……」

 姉ちゃんが溜息を()いた。


 「俺、こんなの解読できない……ってか、直視できない」

 「ギャルっぽくて痛いだけで、暗号ってワケじゃないから、私、読んどくね」

 「うん」

 頭はまだぼんやりしているが、体は大分マシになってきた。


 「ごめんね。一晩中無理させて」

 「えっいや、大丈夫」


 「メールの転送、お母さんがお風呂に入ってる間にやっといた。あの子、凄い処理早いのね。これで一昨日の分まで終わったから、今夜はもういいよ。ゆっくり休んでて」

 「何か……ごめん」


 「何で謝るの。腕環、私が着ければよかったのに、大変なこと、あんたに押し付けて」

 「そっ……そんなことない! ないから!」


 「……休むのも大事よ。倒れたら、何にもならないんだからね」

 「うん。……あ、明日の夕方、巴の家に呼ばれてるんだ」

 「えっ? 何で? 行くの?」


 「腕環の調子とか見たいって、巴先生が」

 「そうなの……じゃ、気を付けて行ってね。おやすみ」

 「うん、おやすみ」


 姉ちゃんは再びノーパソに向かい、俺は丸一日デーレヴォに会えないまま眠りに落ちた。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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