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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第07章.取り説

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40.透明化

 オカンは、やたら上機嫌で夕飯を終えた。

 機嫌が良くても、何かでスイッチが入ると豹変するので、一切、気を抜けない。こっちとしては、全く気が休まらないことに変わりはなかった。


 オカンが風呂場に行った事を確認し、部屋に戻る。

 「姉ちゃんゴメン。今日はオカンが家でステレオ掛けてたから、家事しかできなかった」

 「いいよいいよ。あんたのせいじゃないんだし。その分、夜に頑張ろう」

 昨日中止になった作戦を再開する。


 俺が、腕環を外すまで、姉ちゃんの指示に従うように言うと、デーレヴォは、いつも通り「かしこまりました」と返事をした。


 姉ちゃんが腕環を着けた方が話は早い。

 でも、バイトで疲れてる姉ちゃんに、こんな体力を消耗するマジックアイテムを使わせるなんて、とんでもなかった。男で、体力のある俺が使った方がいいに決まってる。

 姉ちゃんは、透明化したデーレヴォを連れて、階段を下りて行った。


 ディスプレイに目を戻して、リロードする。巴からレスがあった。


 件名:Re:友田です

 本文:了解。金曜5時半に家で待ってます。


 ドライヤーの音が聞こえて(しばら)くしてから、二人は戻ってきた。

 「今日、家事手伝ってもらってないんだっけ? 余裕ある? 大丈夫?」

 「えっ? あっああ、うん」

 「今夜、お母さんが眠ったら、メールを転送させたいんだけど、いい?」

 「うん」

 「一晩中だけど、いい?」

 「……うん?」

 「朝六時に返しに行かせる。それまで、腕環着けたままだけど、いい?」

 「うん」

 確かに、今夜はチャンスだ。俺は躊躇なく同意した。


 姉ちゃんは、オカンケータイについて、半笑いで語ってくれた。

 ロックのパスは、オカンの誕生日まんまだったので、あっさり解除。

 アドレス帳を開いて、父ちゃんの項目のメルアド二つ目の欄に、例のフリメのひとつを登録した。


 新規メールの送り方がわからないらしく、来たメールへの返信ばかり。きっとアドレス帳がいじられたことにも、気付かないだろう。


 振り分け方がわからないのか、メールは、全て受信ボックスと送信ボックスに入っていて、最初からあるフォルダは、どれもこれも空っぽだった。


 「どうせフォルダ見ないし、過去のメールも見ないでしょ。こっちの作業がやりやすいようにしてやればいいのよ」

 姉ちゃんはそう言って、デーレヴォに指示を出した。


 透明化してオカンの部屋で待機。

 オカンが眠ったら、携帯電話と充電器を衣裳部屋に持って行き、充電しながら作業する。


 父ちゃん発・父ちゃん宛のメールは、何もせずにフォルダ1に移動。

 その他のメールは、古い物から順にフリメに転送。転送の履歴はすぐに削除。

 転送後、浮気相手らしき個人のメールはフォルダ2、通販とかの業者のメールは、フォルダ3に振り分ける。


 転送作業が進んでも、一昨日のメールまでで止める。

 終わらなくても、翌朝午前六時で作業終了。携帯電話と充電器を元の場所に戻し、腕環に戻る。


 時間までに作業が済んだ場合も、終了して同様に戻る。

 デーレヴォは、姉ちゃんにも俺に言うのと同じように「かしこまりました」と応答して、任務に就いた。


 俺は腕環を着けたまま、ベッドに入った。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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