38.女の子
作戦開始三日目の水曜。
どうやらオカンは外泊したらしく、朝になっても玄関に靴はなかった。
どうせなら、このまま帰って来てくれなくていい。
教室に入ると女子に囲まれた。
「ちょっとちょっと! 何で巴君のお母さんのこと知ってんの?」
「いつの間にそんな仲良くなってたの? どうして?」
「あんたばっかりズルい!」
何これ、怖い。
巴はまだ来ていない。
赤穂の姿を見つけて、目で助けを求める。赤穂は激しく首を横に振った。
まぁ、そりゃそうだ。
昨日、知らずに地雷踏んだ張本人じゃなぁ……
教室を見回すと、包囲網に加わっていない女子もいた。
須磨春花と塩屋さん、網干副委員長を含む真面目で大人しい系と、三次に無関心なオタ系と、彼氏アリのリア充達だ。
他の男子は、とばっちりを恐れてか、目を合わせようともしない。
俺は腹をくくった。
「偶然……なんだ」
「は?」
「立ち聞き?」
「うわ、盗み聞きとかサイテー」
「あんただけ聞くなんてズルい!」
いやいや。何でそんな発想になるんだよ。どういう超理論だよ?
「フリマで偶然、巴に会ったんだ。その時に」
「キャー! 私もフリマ行けばよかったぁ!」
「その時に、辛い話もできる仲になったの?」
「ズルいズルい! あんたばっかりズルい!」
最後までちゃんと聞けよ。人の話。
俺は強引に説明を続けた。
「……その時に、巴んちの人に言われたんだよ。引越して来たばかりだから、色々教えてあげて、とか……まぁ、その……アレだから、仲良くしてあげて、とか……」
「家族公認のお友達じゃん!」
「えぇーッ!?いいな! いいなー!」
「私も言われたいー!」
「いやー! ズルいズルい! あんたばっかりズルい!」
阿鼻叫喚。
女子が大騒ぎしている中、西代が登校してきた。
「はいはい、ちょいとごめんなすってよ」
わざわざ、女子の囲みをおっさん臭い会釈で崩しながら、席に着いた。女子を遠巻きにしていた付近の席の男子も、西代班長に倣って着席する。
女子は数人ずつで、チラチラと視線を交わし、何かブツブツ言いながら散って行った。
巴は予鈴直前に入ってきた。




