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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第06章.情報戦

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35/95

35.いじめ

 巴は、無言で大粒の涙を(こぼ)していた。


 「ちょっとー、委員長の癖に何いじめてんのよー」

 副委員長の網干(あぼし)さんが、箸を握ったまま、こっちに来て赤穂(あこう)を非難する。

 それに呼応するように、他の女子たちもガタガタと音を立てて席を立ち、あっという間に赤穂を包囲した。みんな険しい表情だ。


 立ち上がっていた俺は、図らずも人垣の一部になってしまった。


 「あ……その、いじめじゃなくって、ちょっとしたおフザケって言うか、美味そうだったからつい……まさか、泣くとは思ってなくて、その……」

 「いじめっ子って大抵そう言うよねー」

 「相手が嫌がった時点でいじめじゃん」

 「悪気がなかったら何してもいいってもんじゃないのよ」

 「赤穂君、最悪~」

 「委員長サイテー」


 女子達が囂々(ごうごう)と非難する中、巴は首を横に振り、ブレザーの(そで)で涙を(ぬぐ)った。

 男子たちは、恐ろしい物を見る目で固唾(かたず)を呑み、こちらを見守っている。弁当に集中して無関係を決め込んでいる奴もいた。


 「いっ……いじ……違……これ、母さんじゃ……違う……」

 嗚咽で言葉にならない。


 あ……あぁ、そう言うことか。


 巴が何を言おうとしているのか、わかった。でも、これ、俺が言ってもいいのか?

 やや迷ったが、俺は口を開いた。


 「あ……あの……」


 みんなの視線が集中し、ドキリとする。背中がひやりと冷たくなった。


 「とっ巴の母ちゃん、先月亡くなったばっかりなんだって……それで、多分……いじめじゃなくって、単に委員長が『母ちゃんの弁当』って、地雷踏んだだけって言うか……」

 巴がしゃくりあげながら頷く。


 教室は、水を打ったように静まり返った。


 「うわ! マジごめん! 知らなくって、その、ホントごめん!」

 「えッウソ……マジで……?」

 「えぇーッ!? 可哀想~……」

 「あー……取敢えず、これ使って」

 平謝りする赤穂。一気にざわつく教室。同情する女子たち。

 網干副委員長が、そっとポケットティッシュを差し出した。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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