34.お弁当
作戦開始二日目の火曜。
昨日、夜遅く帰ってきたオカンは起きて来ず、クソ兄貴は彼女の所に泊まったらしく、不在。俺たちは平和に朝食を摂り、登校した。
機器類をオカンたちに盗られないように、姉ちゃんと分担して学校に持って行く。
俺はコンデジとICレコーダ二台。
巴は、昨日も今日も、先週と変わりなく無口だった。
朝、目があった時、お互いに小さく会釈した以外は、これまで通り。
きっと、昼飯のお礼とか言った方がいいんだろうけど、そんなことして、友達認定されたら、巴を危険に晒してしまう。
巴の家族にも迷惑を掛ける訳にはいかない。
オカンは、猛犬ポテ子に毒餌食わすくらいの残虐行為は、平気でやってのける。
そうこうしている間に昼休みになった。
机を寄せたり校庭に出たり、各自思い思いの場所で弁当を食べる。
俺の班の女子は、他クラスの女子と校庭に行った。
空いた席に、さも当然のように赤穂が座る。二年になってから、雨の日以外はずっとこうだ。
弁当を食べながらオカルト話をする。
昨日はデーレヴォのことは伏せて、フリマで会った占い師の爺さんの話をした。
可能性の卵に会った件で昼休みが終わり、巴の家に行ったことは話していない。話す気もない。言えば絶対、行きたがるから。
今日は、占い師の名刺を持ってきた。
最初に貰った無記名の方を赤穂に渡す。
「お、巴の母ちゃん、料理上手いんだな。一口くれよ」
名刺を受け取ろうと腰を浮かせ、視界に入った唐揚げをナチュラルに一個つまむ赤穂。
赤穂……お前って奴は……
「俺の母ちゃん、料理下手でさー、こんなのでもよかったら、交換で何か取って」
赤穂は巴に弁当箱を向けた。巴は無言で俯いている。
俺は、何気に赤穂の弁当箱を見た。
寄り弁……卵焼きを失敗したらしきスクランブルエッグは焦げ、キュウリの厚みはバラバラ、べっちょりと煮崩れた煮物と、皮を剥いた八朔が直入れしてあり、色々な汁が染み込んだご飯は、茶色くなっていた。
何このカオス。
赤穂には悪いけど、俺が自分で作った弁当の方が、まだマシ。
唐揚げを頬張ってヘラヘラしていた赤穂が、一瞬で青ざめた。
「うわ……ご……ごめん! すまん!」
焦りでしどろもどろになりながら、巴に謝り始めた。
異変を感じた奴が、チラチラこちらに目を遣る。俺もそっと立ち上がって、巴の様子を見た。




