21.呼出し
俺は、改めて巴家の台所を見回した。
格調高い雰囲気の食器棚。食器も棚に相応しい高そうな物ばかり。
一番上のあれって、もしかして、銀の食器セットか?
因みに我が家の食器で最高級品は、パン祭の白くて、やたら頑丈な皿だ。買えばかなり高価な外国のブランド物らしい。
テーブルも、我が家のは六人掛け。
ニタリで買った安物で、足がちょっとグラついている。
ここのは、何て言うか、こう……格が違う。重厚な「食卓様」だ。
だんだん、怖くなってきた……そろそろ帰りたい……
「政晶さんとお友達の方、ご主人様がお呼びです」
完全に自分の考えに入り込んでいた俺は、不意に声を掛けられて、飛び上がりそうなくらい驚いた。
巴は怪訝な顔で、いつの間にか台所にきていた黒江さんを見ている。
恐る恐る巴に聞いてみた。
「ご主人様って?」
「もう一人の叔父さん」
巴は標準語で答えて、立ち上がった。俺も立ち上がる。
黒江さんのご主人様で、巴のもう一人の叔父さんって、あの巴先生だよな?
俺は、感動と緊張で強張る足を叱咤して、使い魔の黒江さんの後について行った。
廊下の奥、中庭を挟んで玄関の向かい側にある階段を昇る。
手すりを掴む手は、じっとりと汗をかいて、指の間がベタついた。
「あっあああの、トッ……トイレ……」
「二階にもあるよ」
階段を降りようとした俺を、巴が呼びとめた。
こんだけ広いと、トイレも一カ所だけじゃ、足りないんだな。
二階のトイレは階段の左隣。お店みたいに男性の小用と洋式の個室がある。
緊張し過ぎて洩れそうだったが、何とか間に合って一息ついた。
冷たい水で手を洗い、汗のベタつきがなくなると、気持ちも少し落ち着いてきた。
巴先生、俺たちに何の用だろう?
一人で待っていた巴が先に立って歩き、階段右側、二つ目の部屋のドアをノックする。
心臓が、百メートル全力ダッシュ直後のように暴れ出した。
鎮まれ! 俺の心臓!
「どうぞ」
間髪入れず、小学生くらいの女の子の声が、返事をした。
巴、妹がいるんだ。
いよいよ、本物の魔法使いとの対面だ。緊張で頭がくらくらしてきた。
巴がドアを開け、部屋に一歩足を踏み入れる。




