12.占い師
「儂は魔力がないからね。占術を勉強しに行ってたんだよ」
「占い師さんなんですか。スゲー」
「魔力がないから、当たるも八卦当たらぬも八卦になってしまうけど、魔力のある人が占うと、かなりはっきり、確実な未来が視えるらしいよ」
「マジですか!?スゲー! 魔法みたい!」
「占術も広い意味では、魔術のひとつだからね。力のある人が使えば、それは魔術だよ」
爺さんは、ニコニコして説明してくれた。
いつだったか、赤穂が言ってた「魔力がなくても使える魔法」って、占いのことだったのか。
俺も、修行頑張ったら、できるようになるのかな。
未来がわかれば……悪いことが起きる前にわかれば、未然に防いだり、最悪でも、被害を少しは軽くできる。
そしたら、自分の力で、みんなを守れるかもしれない。
「あの、おじいさん、弟子入りって、どうすればいいんですか?」
「弟子? 儂は、弟子は取ってないよ」
あぁうん。そうだよな。
この国で魔法使いの弟子を育てるって、大変だろうしなぁ。
「魔道学部のある大学に行けば、占術の研究もしてるんじゃないかな? すぐ近くの帝大とか。あそこは、魔法使いの先生もいらっしゃるよ」
「帝大とか、ムリですよ……俺、そんな賢くないんで」
俺は笑って誤魔化した。
帝大どころか、どんなに頑張っても、オカンがどこの大学にも行かせてくれない、なんて、初対面の人に言えない。
「帝大の魔法使いって【舞い降りる白鳥】の巴先生ですよね? 呪い解除の専門家」
「詳しいねー」
「サイトの受け売りですよ~。俺なんか全然……好きで、本も読んでますけど、ちっともわかんないですし……」
都立図書館で、巴先生が書いた「魔術概論」という本を借りて読んだ事がある。
先生は「巴宗教」という名前で苦労してそうで、何となく親近感を覚えた。
どう読むのかわからないけど、まさかそのまんま「ともえしゅうきょう」じゃないよな……
その本は、初学者向けの基礎的な内容で、写真や模式図、用語解説もいっぱい載っていた。多分、専門書としては、わかりやすい部類なんだろう。
でも、俺のアタマでは、半分もわからなかった。
難しい字は、辞書引いて調べながら読んだから、学校で習っていない字を幾つか覚えられたのは、収穫だった。
「理解は後からついてくるよ。今は、知らないこと、知りたいこと、興味を持ったことに触れて、吸収していく時期なんだから、まだまだ、これからだよ」
占い師の爺さんは、優しい眼で微笑んで言った。
なんとなく、仏の明石を思い出してしまったので、話題を変えてみる。
「話、変わるんですけど、【急降下する鷲】って、カッコイイですよね! 魔物退治のエキスパート! いかにも魔法戦士って感じで!」
「そうだね。でも、君が欲しいのは、そう言う即物的な力じゃなくて、問題を解決する力なんじゃないかな?」
俺は、冷水を浴びせられたように固まった。
何も……余計なこと、言ってないよな……?




