22回目 今はまだ慎重に
これから起こる事件を未然に防ぐ。
その為にも、あちこちにいる者達を処分していかねばならない。
だが、一気に進めるのは難しい。
巨大な超能力を持ってるといってもだ。
やはり限界がどうしても出てきてしまう。
個人の能力として見れば、トシキの能力は桁違いだ。
一対一で勝てる者はいないだろう。
小規模な集団が相手でもトシキに勝つ事は難しい。
しかし、これが一定以上の規模になると話は変わってくる。
相手が何万人となれば。
何十万人となれば。
それらを殲滅するのは難しくなる。
今はまだ良い。
せいぜい小学校の学区程度が相手だ。
その範囲にいる人間相手なら負ける事は無いだろう。
だが、ここでトシキの力が他の者に知れ渡ったらどうなるか。
より多くの者達がトシキを危険だと判断するだろう。
そうなった場合、地域どころか国全部が敵にまわりかねない。
下手すれば、世界全体が敵にまわる。
それだけは避けねばならなかった。
その為に、今はまだある程度隠れて事を進めたかった。
いずれ露見するにしてもだ。
力をそれまでに蓄えておきたかった。
対抗する力があるなら、相手が何人だろうが関係がない。
まとめて全員処分すればいい。
それまでは、出来るだけ隠れて事を進めていきたかった。
その割にはかなり派手に動いているが。
それでも、これくらいならまだ隠せていられるという目論見はあった。
それに、永遠に隠し続けるつもりはない。
あくまで短期間でいい。
より大きな力を得るまでで良い。
霊魂吸収などで力を得るまでの時間が欲しいのだ。
それが終われば、誰にどれだけ露見してもかまわなかった。
より巨大な力を手に入れ、対抗できるようになってるならば。
なので、それまでの間だけ秘密に出来れば良い。
そして、秘密にしていなければならない期間はそれほど長くはない。
霊魂の吸収による能力強化はかなり効率が良い。
今回処分する連中の霊魂を吸収出来れば、十分な力を得る事が出来る。
なので、最低でも一週間。
可能ならば一ヶ月ほどやってる事を隠蔽出来れば良い。
それ以降ならば、大手を振って歩く事が出来るようになる。
だからこそ、今はまだ慎重に。
事が表に出ないようにしなければならない。
なので、問題を起こす者達を一気に殲滅というわけにはいかない。
手の届く範囲を確実に処理せねばならない。
少しばかり面倒だが、これも今後のためだ。
それに、ただ処分するだけというわけにもいかない。
被害者の救済もある。




