第25話『体育祭⑦-チーム対抗男子・女子リレー-』
玉入れの後も体育祭の午後の競技が続いていく。
どの競技でも青チームの生徒達は奮闘し、得点を重ねていく。
午後の競技も終盤となって、現在は青チームは2位。1位は胡桃と中野先輩がいる赤チーム。赤チームとの差はそこまで開いていないし、配点の大きなチーム対抗の各種リレーが残っている。逆転して優勝できるチャンスはまだまだあると思う。
『ここで召集の連絡です。チーム対抗の男子、女子、混合リレーに出場する生徒のみなさんは本部テント横の召集場所に来てください。繰り返します――』
おっ、ついに結衣と一緒に出るチーム対抗混合リレーの召集がかかったか。
「よし、行くか、結衣」
「そうだね、悠真君!」
結衣はやる気十分の様子だ。そんな結衣が混合リレーのメンバーでとても頼もしいよ。
結衣と俺はブルーシートから立ち上がる。
「結衣、低田君、混合リレー頑張るのです。みんなと一緒に応援するのです!」
「結衣ちゃん、低田君、頑張ってね!」
「はい、頑張ります!」
「頑張ります」
結衣と俺は伊集院さんと福王寺先生とグータッチをした。また、これからラストのリレーに出るのもあり、ブルーシートにいる多くのクラスメイト達ともグータッチした。
男子のリレー、女子のリレーに出るクラスメイトともグータッチをして、彼らと一緒に召集場所へと向かった。
召集場所に行くと……リレー3部門全てを召集しているからか、結構な数の生徒がいるなぁ。そう思いながら召集場所を眺めていると、
「あっ、悠真、高嶺ちゃん」
チーム対抗の女子リレーに出場する中野先輩がやってきた。結衣と俺は先輩に「お疲れ様です」と言った。
「もう終盤だね。得点からして、リレー次第で優勝するチームが決まりそうかな」
「そうですね。結構僅差ですし、チーム対抗リレーの配点は高いですし」
「混合リレーは最後の種目だから頑張らないと。ね、悠真君」
「そうだな。しかも、俺はアンカーで、その前が結衣だからな」
ほんと、大役を担ったなって思う。
「あたしも女子リレーの一人として、赤チームを勝利に貢献できるように頑張らないと。あたしは中盤に走るよ。お互いに頑張ろうね!」
中野先輩はニコッとした笑顔でそう言うと、右手を拳にした状態で俺達に突き出してきた。
「はい、頑張りましょう」
「頑張りましょうね!」
俺と結衣は中野先輩にそう言い、先輩とグータッチをした。
中野先輩は俺達に小さく手を振って、赤いハチマキを頭に巻いている女子達が集まっている場所に向かった。
召集場所の中を見ると……うちのチームの混合リレーに出るメンバーが集まっているのが見えた。結衣と俺はそこに向かった。
混合リレーのメンバー達と談笑していると、係の女子生徒がやってきて、俺に青色の3番のゼッケンを渡してきた。レースでアンカーだと分かるように、アンカーの生徒はゼッケンを付けてほしいのだという。
さっそく、俺はゼッケンを身に付けた。これがアンカーの証だと思うと身が引き締まるし、勝負のときは近いのだと実感する。ちょっと緊張感も出てくる。
「わぁっ、悠真君ゼッケン似合ってるよ!」
結衣はニコッとした笑顔でそう言ってくれた。そのことで緊張感がほぐれていく。
「ありがとう、結衣」
お礼を言って、俺は結衣の頭を優しく撫でた。
気持ちいいのか、結衣の笑顔は柔らかいものになる。えへへっ、と笑うのでとても可愛くて。結衣の髪の触り心地がいいのも相まって癒やされた。
それから少しして、
「チーム対抗の各種リレーに出場するみなさん、フィールドに移動してください!」
係の男子生徒がそうアナウンスした。
結衣と俺は一緒に混合リレーに出るメンバー達と一緒に、召集場所からフィールドに移動する。
『さあ、今年の体育祭も残すはチーム対抗リレーのみとなりました! 手元に入ってきた資料によると、どのチームも優勝の可能性があるとのことです。リレーに出るみなさん、優勝を目指して頑張ってください! そして、会場にいるみなさんは応援のほどよろしくお願いします!』
放送委員会の女子生徒がそうアナウンスすると、会場は「わぁっ!」と盛り上がる。残るはリレー種目だけだし、どのチームにも優勝できる可能性があると分かればそりゃ盛り上がるよな。
『チーム対抗リレーは男子、女子、混合の3部門があり、男子は1人トラック1周、女子と混合は1人半周ずつ走ります。プログラムの通り、男子、女子、混合の順番で行ないます。それでは、まもなく男子のリレーを行ないます。各チームの第1走者はスタート地点に集まってください!』
男子、女子、混合のリレーはそれぞれどんなレースになり、最終的にどんな結果になるだろうか。
それから程なくして、チーム対抗男子リレーが始まった。
序盤から中盤までは4チームともトップ争いを繰り広げており、順位も頻繁に変わっていく。うちのクラスの生徒は2人出ており、それぞれ序盤と中盤でトップを争う走りを見せた。
ただ、終盤になって、我ら青チームと緑チームがリードしてトップ争いを繰り広げる。
ほぼ同時にアンカーにバトンが渡ると、青チームの勢いが加速。緑チームとの差をどんどん広げていき、
『ゴール! 1位は青チームです!』
青チームが1位でゴールした!
「やったね、悠真君!」
「やったな! これで勢いづきそうだ!」
結衣と俺はハイタッチを交わした。混合リレーに出る他のメンバーとも。
リレーをした男子のメンバー達はもちろんのこと、女子リレーのメンバー達もハイタッチを交わしている姿が見えた。
2位は緑チーム、3位は赤チーム、4位は黄色チームという結果となった。
『続いてはチーム対抗女子リレーです!』
中野先輩が出場する女子リレーか。別チームだけど、先輩がどんな走りを見せてくれるのか楽しみだ。
それから程なくして、チーム対抗女子リレーが始まった。
序盤は男子のときと同じく、4チーム全てがトップ争いを繰り広げ、僅差の中で順位も頻繁に変わっていく。この序盤でうちのクラスのメンバーが1人出ており、トップを争う走りを見せた。
ただ、中盤になり、状況が変わり始めた。
我ら青チームと赤チームがリードして、この2チームでトップ争いを繰り広げるようになったのだ。このタイミングでうちのクラスからもう1人出ている女子生徒が走り、赤チームと競る走りを見せた。
「もうすぐ千佳先輩の番だね」
「そうだな」
もうすぐ終盤という中、中野先輩がトラックに立っている。それもあり、中野先輩を応援する声が沸き起こり、特に、
「千佳、頑張るのよ!」
「千佳せんぱーい! 頑張ってくださーい!」
中野先輩の母親の穂南さんと胡桃の声は特に響いていた。
中野先輩は右手を大きく振った。
それからすぐに、赤チームの中野先輩は青チームとほぼ同じタイミングでバトンを受け取った。
バトンを受け取ると、中野先輩はここまでトップ争いを繰り広げていた青チームと差を広げ始めた。リレーに出るだけあって足が速いとは思っていたけど、ここまで速いとは。
「千佳先輩凄い凄い! はやーい!」
結衣は興奮した様子で中野先輩のことを見ている。
「中野先輩凄いです! 頑張ってください! 青チーム頑張れ!」
「青チーム頑張ってー! 千佳先輩も!」
結衣と俺は青チームと中野先輩のことを応援する。
「千佳先輩凄いですっ! 頑張ってください!」
「青チーム頑張ってください! 千佳先輩も頑張るのです!」
「青チーム頑張ってね! 千佳ちゃんも!」
「千佳、いい走りよ! 頑張って!」
胡桃、伊集院さん、福王寺先生、穂南さんを筆頭に、俺達の親しい人や家族の応援の声も飛び交う。
その後も中野先輩は2位の青チームとの差を広げる走りを見せて、次のメンバーへとバトンパスした。
「千佳先輩凄かったね……」
「そうだな」
それまでトップ争いをし続けた青チームを引き離したからな。
中野先輩がトップに躍り出たことで勢いづいたのだろうか。終盤は赤チームがトップで走り続け――。
『ゴール! 1位は赤チームです!』
赤チームが1位でゴールした。
中野先輩を含め赤チームの女子リレーの面々は、嬉しそうに抱きしめ合っている。男子リレーや混合リレーのメンバーもハイタッチしている姿が見られた。
その後、青チームが2位、黄色チームが3位、緑チームが4位でゴールした。
「千佳先輩、凄かったです! 1位ですね!」
「千佳先輩の走りが凄かったのです! 敵ながら天晴なのです! 青チーム2位で良かったのです!」
「青チーム2位立派よ! お疲れ様! そして千佳ちゃん凄かった!」
「千佳、とても良かったわ! 赤チーム1位おめでとう!」
胡桃、伊集院さん、福王寺先生、穂南さんはもちろん、芹花姉さんや杏さんなども中野先輩や赤チーム、うちの青チームを称賛したり、労ったりする声援を送った。
「青チームお疲れ様でした! 千佳先輩速かったです!」
「青チーム良かったです! 中野先輩速かったです!」
結衣と俺もうちのチームや中野先輩に向けてそんな言葉を送った。
「みんなありがとう! ありがとう!」
中野先輩はとびきりの笑顔で、俺達を含め、自分を応援してくれた人がいる様々な場所を見ながら何度もお礼を言った。
「さあ、あとは私達が出る混合リレーだけだね!」
「そうだな」
今年の体育祭も残すは結衣と俺が出場するチーム対抗混合リレーのみ。このリレーで勝負が決される。




