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不穏な影

この国は不穏だ。数年前からとある犯罪者たちが手を組み、組織を作ったという情報が入った。

組織は『#血人__ちびと__#』と呼ばれる快楽犯罪者の集まりだとされている。





実際、その集団は、ある時は国の重鎮に殺害予告を。ある時はとある貴族の夫人に毒を盛り。ある時は小さな村ひとつを消し去り。そしてある時は、とある貴族の一家を殺した。


しかしどれだけ情報を集めてもたどり着いた先の犯罪者は、トカゲの尻尾切りのように末端ばかりで組織の中核には辿り着けていない。


捕まえたものをいくら問いつめても拷問しても中心となる人物像が浮かび上がってこない。かなり情報を集めてもいるものの、あちらも情報に強いのか、かなり手強く、どうしても届かない。





焦燥が身を焦がすような思いで、私が隠密部隊の隊長になったのは昨年の春だった。

それまでは表は騎士団長の補佐官として時折騎士団内のことも探り、隠密部隊の隊員としても街中で話を聞いたり、情報の集まりそうな場所に長期で潜入したりもしていた。



最近で言うなら、女装をしていたらフレイアさんとたまたま出会ってしまったのだけれども。



そんな私が隊長になったのは、偏に前任が音信不通となったからだった。

実力のある人だった。#血人__ちびと__#に潜入して、しばらくは連絡が取れていたのだ。だが、ある日突然、その連絡が途切れた。潜入がバレて殺されたのか、なにか不都合があり、急に取れなくなり、抜け出せていないだけなのか。どうか生きていて欲しいと願いながらも、隊長が居ないのではまとまりがないということで、当時副隊長をしていた私が隊長を務めることになった。




この部隊では実力が全てだ。たとえ隊長だとしても、率先して潜入捜査もするし、危険な仕事もする。だから、役職の挿げ替えなんてよくある話だ。



ただ、副隊長の時よりも責任が増えただけだ。それが重いと感じることがないと言えば嘘になる。私たちの仕事は国と民に対して、私たち隊員の安全や命を秤にかけなければならない。当然、隊員よりも国を守る選択を迫られる。


この1年間で私はより多くを守るために犠牲を払ってきた。自分が下した命令で死んだ者もいた。連絡が取れない者もいる。大怪我を負った者も、辞めていった者もいる。

失った命を、傷付いた隊員を、思わない日はない。けれども私は命令し続ける。この国の未来のために。









「お兄さん達、何話してるの?」

「ああ?」


ガラの悪い男たちに近付いて身を擦り寄せる。それだけでこの男たちはすぐに気を良くしたように口を滑らせる。


「うまい仕事の話だよ」

「え~なになに?教えてよ!」


わざと高くした声を、そうと気付かれないようにより可愛く声を掛ける。

バカそうな女だと思ったのだろう。男たちの口はより軽くなる。


「気持ちよくなる薬を売るんだよ」

「きもちよくなるクスリ?へぇ~面白そう!今持ってないの?欲しい!」

「今?……おい、お前持ってるか?」

「えーっと、1個だけ持ってるような……」


男がごそごそとカバンの中を探ると、何かを包んだ白い紙が出てきた。

それをこちらに差し出す。


「サービスだ、やるよ」

「えっ、いいの?!やった~ありがとう!」

「まあそれはサンプルだしな。気に入ったら俺たちにいいな。また用意してやるよ」


ニヤニヤとどこか嫌な笑みを浮かべて男たちは私にこれを勧めた。

私の今日の目的がこれだとは知らずに。


「ありがとう!お兄さんたちはいつもどこにいるの?」

「あー、まあここにはよく来るからここの店主に言っといてやる」

「やった!」

「名前は……オルって伝えろ」

「じゃあ俺らはこの後用事あるから、またな」

「うん、またね~」


満面の笑みで手を振って男たちと別れる。

彼らが店から出たことを確認してから私は小声で呟いた。




「追え」


音もなく近くの席にいた1人が立ち上がり、その場を去る。

奴らのアジトを探るために。そして、未来の被害者を減らすために。私は今日も働いている。






















「あれ?オリビア?」

「ふ、ふふふ、ふれいあ、さま、?!」


思わぬ所で思わぬ遭遇もあったり、なかったり。

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