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断章 ノ I
――微睡みから、覚める。
夢を、見ていた。
どんな、夢だったか。
温かい、記憶だった気がする。
光り輝く玉座の上で、俺は唯独り、微睡み続ける。
――なぁ、リィン?
――はい。ここに。
――あぁ、いたのか……。
――えぇ勿論。言ったじゃないですか。私は、いつでもあなたを見守っています、と。
――そんな昔のこと、忘れたよ。
――そうですか。
微笑む気配。
何が面白いんだろう。
――ゆめを、見ていたよ。
――ゆめ、ですか?
――あぁ……。昔、人の国を旅した時のゆめ。
――そうですか。いいゆめ、でしたか?
――そうだね……。いいゆめだったと思う。
――それは、よかった。
玉座が光る。
これは人の魂のひかりだ。
――それで、次はどこに行ったのでしたっけ?
――次?
――ええ。人族の国のつぎ。貴方は何処へ?
――あぁ……。たしか……次は――――
俺は微睡む。
ここで。
独り。
この世界が平和になるまで。