9話
再度ギルマスの部屋に入ると、いきなりギルマスが謝ってきた。
「先ほどはすまなかった。・・あいつは最近、最上位冒険者になったボルディウス・マクランナー
腕は申し分ないんだが、性格がアレでなユキ殿と同じく特殊冒険者として登録してある。」
とギルマスはボルディウスの事を話してきた。
「・・でだが、ユキ殿、冒険者ギルドの古い掟に冒険者同士のいざこざは決闘で解決するって言うのがあるんだが・・・いや・・聞かなかったことにしてくれ・・」と話を切った。
要するに・・決闘しかければ容認するから潰しちゃって良いって事だろ?
「ギルドマスター。」俺は立ち上がりドアに向かう「その話受けますよ・・アイツ潰してもいいんでしょ?」と微笑みながらギルドマスターの顔を見る。「あ・・あぁほどほどにな?」と了承を得てギルドマスターと一緒にアイツの元へ行く。
「ボルディウスお前の処遇が決まった・・・ユキ殿との決闘・・今から闘技場で行う、付いて来い」
と用件だけ伝えギルドマスターはギルドから出て行く。ボルディウスは何も言わなかったが恐らく楽勝だとか考えているんだろうなぁ・・こっちも手加減しないけどね。
「で?ギルマスただ決闘してねじ伏せるんじゃ詰らないよな?負けたら相手の奴隷になるってどうだ?昔やってたんだろ?最上位冒険者がデメリット無しで初心者に勝っても俺の名が傷付くだけだぜ?」と笑いながら提案してきた。ギルドマスターはこっちを見ているが・・
「私もよろしいですよ、こちら的にメリットですからね」 「っは!勝てればだろ?」
とボルディウスは言う。「装備、着替えてもよろしいでしょうか?」と一応確認する
「うむ、装備は各自自由とする30分後に始める」とだけ言い残しギルマスは何所かへ行ってしまった。まぁ俺もさっさと着替えてコンディション整えないと。
・・とりあえず何時もの装備にちょっと小細工をしようかな・・・
準備が出来て闘技場に入るとコロッセオみたいな作りになっていた。魔法で結界を張っているらしい、ある程度の攻撃では壊れないみたいだ。
「ん?もう準備はいいのか?」とギルマスが気がついたらしく声をかけてきた。
「その装備は・・・まぁいいか改めてすまなかった・・こんなことに巻き込んでしまって、一応 回復魔法を使えるやつらを集めてきたから多少の怪我は治せるから思う存分やってくれ・・奴隷の話は本当にいいのか?」と話題を変えてきた、まぁ実際俺が奴隷になろうがこっちにはセバスがいるし如何にかなると思ってるから受けたんだよなぁまぁ兎に角
「はい、問題ないですよ、私が勝てばいいんですから」と微笑んでおく
「はぁ・・人選間違えたかも・・来たようだな・・」 ギルドマスターに釣られ視線を移す。
そこには先ほどの西洋鎧に大剣を背負ったボルディウスがいた、某ゲームの狩人にしか見えない・・「っは!早速はじめようぜ!」と意気揚々としているが、こいつバカなのかも・・
「はぁ焦るなボルディウス・・コレより契約の術式に入る」 ギルマスが魔法詠唱を始める
手元には二つの紙があり徐々に赤黒くなり白の文字が書かれていく
「二人とも内容の確認と最後の欄に署名を」と言って紙を渡してくる。
俺は軽く読むだけでサインした。「ん?キチンと確認しなくて良いのか?」と言ってくるが別に確認するほどではない、負けたら奴隷、その事実があるだけで俺は充分だと言った。
「俺もいいぜ・・」とボルディウスの目がギラリと光った。
「はぁ二人とも離れて・・・それではサーズベルトギルド伝統闘技場決闘を開始する!」
ギルドマスターの声と共に上空に炎の魔法が爆発した。それを合図に対人戦が始まった。
「先にどうぞ?小娘」とボルディウスは剣を構えながら隙無くこちらを見ていた。
「それではお言葉に甘えて」と微笑んでおく
「『ラピットファイヤ』」と俺の魔法詠唱の声が響く、空かさず『ダークエンチャント』を自分にかけ
『召喚』を使い今手持ちの中で一番強い【ホワイトウルフリーダー】を5匹出しておく
この子たちはホックスウェルゼンで捕まえたホワイトウルフが進化した子達だ、愛着もある、
だから『ダークエンチャント』『フレイムエンチャント』を5匹にかける、
『ダークエンチャント』は闇属性魔法で防具や身体にダメージ軽減10%をつける魔法だ、
『フレイムエンチャント』は武器に火属性攻撃を追加する補助魔法だ
ボルディウスに視線を戻すと何食わない顔で平然と立っていた。
まぁMPなんて余り込めてない魔法だったからねぇ~
「っは!こんなものかよ!それに召喚したのだってただのウルフリーダーじゃないか・・・なめてんのか?」と段々低い声でこちらを威嚇する。まぁまだ始まったばかりだってそう焦るなよと心の中で言っておく。
「いやぁ~召喚中に邪魔されたら勝ち目なくなるからねぇ~牽制の意味も込めてやっただけだよっと!」言葉が終わると同時に右手をボルディウスに向けウルフ達に指示を出す
「行け」とウルフが走り出すと同時に『ヒートファンネル』で援護する、
形だけの火のミサイルが転移でボルディウスの後ろに5発、よければ追尾し当たっても防いでも それなりのダメージを与えるんだが、ボルディウスはすぐに反応し5発のミサイルを真っ二つにした、それを呆然と見ていたせいで、瞬く間にウルフ達が切られていった。
(魔法を切るなんて反則だろ!)と声に出して叫びそうになるがグッと我慢する。
(それにしてもウルフ達をよくもやったな!)俺はすぐにスキル『アンデット作成上位』を使用する。
切られたウルフ達に黒い霧が被いしばらくするとそこには『アンデットウルフリーダー』が5匹立っていた。「な!アンデットウルフだと!くっそ!」と声を荒げながら剣を構え直すボルディウス
周りにいるギルマスや回復要員たちも驚き、恐怖している・・・まぁここに居ない種が目の前で生まれたら怖いよね、と軽く受け流しながらウルフ達の戦いを見る。
5匹のウルフ達の連携はすばらしかった。1-2-2で分かれ隙を作り攻撃を叩き込む、
更には動きを見て同じ技を食らわないようにしている。
本来アンデットモンスターに知性はない。団体さんで来ようが戦力は1と変わりない
それが連携をとればどうなるか・・・答えは簡単1が100にも成りうる、誰かが言った『1+1=3にも成る』それがこの事かと、思うほどにウルフ達はボルディウスを攻めていった。
でも流石に最上位冒険者と言った所か、苦戦はしたがウルフ達を倒してしまった。
でもこれで相手の力量は分かった。(ありがとう・・ウルフ達)と心の中で別れを告げる。
「はぁはぁ・・・これでチェックメイトだな・・・召喚もさせる時間など与えないぞ?」とボルディウスは口角を上げ不気味に笑いながら言ってきた。
「あぁこっちも準備できたよ・・・『ヒートソード』・・貴方はここで負ける・・『ラピットファイヤ』」
ボルディウスは舌打ちしながら剣を構え直し後ろへと下がり火球を切る・・・が
「っがは!?」とボルディウスの口から声が零れた、まぁ当たり前だろう、さっきは極小のMP使用率で使った『ラピットファイヤ』今のは、さっきのより3割ほどMPを込めた物だ、しかもイメージも変えてある。当たると炎上から、触れたら爆発へ、剣で切ろうと【触れる】と爆発し、炎上する
ゲームでは【当たると炎上】だったからな、色々実験しててよかったと言うべきか
魔法のイメージ変更何て普通思いつかないし、まぁ今回はスキルや魔法のいい練習台が出来てよかったよ。『ダークゲート』俺の目の前に黒い霧が集まり俺の身長つまりユキの身長より少し大きいくらいの光すら通さないほどの黒い「穴」とでも言うべきかその中に飛び込むように駆け出した。
『ダークゲート』の出口は闘技場に張ってある結界の高さ限界約100mほどの上空に作る。
ゲートから出ると一気に浮遊感が押し寄せる、崩れた体制をすぐに整え『ヒートファンネル』をボルディウス目掛けすぐに撃ち、撃ち終わったら再度『ダークゲート』を発動。落下速度そのままでゲートに飛び込む。