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21/21

21話

 この日から、私の周りは大きく変わった。


 まず、宣言通りにライカ殿下は王位継承権を返上する。同時に、王籍離脱をした。代わりに、侯爵位を賜る。ライカ殿下はシュリエ侯爵になり、名もライカ・ヒルトンと改めた。

 まだ、王立学園に在籍しているため、侯爵は名ばかりであるが。殿下もとい、ライカ様は信頼できる側近に侯爵領の運営を任せた。

 そして、私やセシルはというと。ライカ様の代わりにセシルが王籍に復帰した。同時に王太子に任命される。私ことルイゼ・ソアレは正式な婚約者になった。

 今まで、気楽な立場だったのに。現在は始まった王太子妃教育と学業の両立に奔走する日々だ。セシルも王太子教育に忙しく、ろくに会えないでいた。


 そんな毎日が三ヶ月も続き、気がついたら。季節は真夏になっていた。セシルは学園でするように言われていた女装をやめて、男子生徒の制服を着て通学している。カツラなども一切合切やめたらしい。おかげで、今はすっきりした表情をよくするようになった。


「それにしても、やはり。カツラ無しの生活もいいなあ」


「そりゃそうよ、今までが窮屈過ぎたのよ」


「言えてるね」


 セシルはそう言いながら、快活に笑った。女装をやめてから、こうやって笑う事が増えた。実は私達は現在、別邸にて夏季休暇を満喫している。冬期休暇になったら、離宮に行こうと約束していた。


「ルイゼ、ライカ様は元気かな?」


「ああ、姉上の婚約者のロバート先輩の弟さんがライカ様の側近候補になってるらしいわ。その人が言うには、元気にしているって」


「ふうん、確か。ロバート先輩の弟さんって、ミュラー君だったかな」


「知ってるの?」


「うん、ミュラー君は明るい性格だしね。僕にも声を掛けてきてくれてたよ」


 さらりとセシルは言うが。意外な事実に私は驚いた。

 現在、ライカ様は近い内に隣国へ留学する予定だ。将来は宰相の立場を目指すとかで。その勉強のためにも他国を外遊するのは必要だとお祖父様や父上も言っていた。


「確か、ライカ様は夏季休暇が終わったら。隣国のツェルトに行くんだって聞いたわ」


「そうだよ、僕もライカ様もまだ学園の一年生だし。卒業するまでは向こうにいるって言ってたね」


「ふうん、寂しくなるわね」


 私がなんとはなしに言ったら、セシルは苦笑いする。まあ、ライカ様は最低でも成人年齢である十八歳になるまで帰って来ない。つまり、五年間は彼は隣国にいる事になるが。


「……ルイゼ、ライカ様が決めた事だよ。僕達が応援しなくてどうするんだ?」


「それはそうよね」


「今は僕が王太子だ、君はその妃になる。この国の民の生活や命が掛かっているんだ。なら、ライカ様を見習わなきゃ」


 私は確かにと頷いた。セシルはちゃんと前を向いている。私もそうしなきゃね。二人でいずれはフローレンス王国を盛り立て、未来を担っていかないといけない。まだ、私達は幼いが。それでも、彼とならどんなに困難な道でも進んで行ける。そんな確信があった。


「……セシル、私ね。あなたとなら、フローレンス王国を良くしていけると思うの。よろしく頼むわね」


「ああ、僕もそれは思うよ。こちらこそ、よろしく頼む」


 私はセシルに片手を差し出した。彼は躊躇いもなく、その手を力強く握る。堅くライカ様としたみたいにセシルは握手を交わしてくれた。ふと、空を見上げる。二羽の真っ白な鳩が空を飛んだ。私は嬉しくなってセシルに笑いかけたのだった。


 ――The end――


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