12話
翌日、お祖父様から返事が届いた。
短く、「わかった、この件は陛下にも伝える」とあった。お沙汰は数日後になるだろう。私はほうと息をつく。
急いで身支度をして、エントランスホールに向かった。姉やロバート、何故かレウィシアまでいる。
「おはよう、ルイゼ」
「おはようございます、姉上」
「おはよう、ルイゼちゃん」
「おはよう、ルイゼさん」
「おはようございます、ロバート先輩にレウィシア様」
私は姉にロバート、レウィシアといった順に挨拶をした。三人が別邸にいるのは珍しい。
「あ、ルイゼさん。私のことはレヴィでいいわよ」
「はあ、では。レヴィ先輩と呼ばせてもらいますね」
「ええ、私もルーちゃんと呼ばせてもらうわ」
レウィシアもとい、レヴィはにっこりと笑った。
「……さ、レヴィもルイゼも。そろそろ、行きましょう」
「うん、わかったわ」
姉が呼びかけると、レヴィが手を差し出す。私は自身のそれを載せた。キュッと柔らかく握られた。姉と似たような感じでしなやかでほっそりとした手だ。それでも、レヴィは優しく私の手を引っ張った。
馬車に四人で乗る。ロバートと姉が御者台の側に私とレヴィが向かい側に座った。
「……それはそうと、ルイゼ。昨日のことなんだけど」
「はい」
「学園長に報告をしたの、そしたらね。ミラーさんを停学処分にするとのことだったわ」
「え、あの。それは本当ですか?」
「本当よ、ミラーさんは下手すると。フローレンスさんに怪我を負わせていたかもしれないのよ。バケツに入った水でなかったら、もっと大事になっていたわ」
姉は真面目な顔で告げた。それは確かにと思う。セイラがずぶ濡れになった程度ですんだから、よかったが。
「そうだったの、ルーちゃんもその場に居合わせたと聞いたわ」
「はい、フローレンスさんにすぐに魔術を使って髪などを乾かしてあげましたが」
「あら、ルーちゃん。やるわね!」
そう言ってレヴィは、私の頭をいい子と撫でた。ちょっと、恥ずかしくはある。
「ルイゼ、あなた。今後はフローレンスさんと一緒に行動してあげなさいな。その方がいいような気がするわ」
「うん、僕もそれには賛成だ。ルイゼちゃんが睨みをきかせていたら、嫌がらせをする奴も手出しをしにくくなるだろうね」
「わかりました、姉上やロバート先輩の言う通りです。フローレンスさんと一緒になるべく行動するようにしますね」
私が頷くと、姉やロバートにレヴィもそうしたらいいと言ってくれた。馬車はその間にも走るのだった。
学園に着くと、私は姉達と一旦別れた。教室に向かうためだ。玄関口から下駄履に行き、靴を上履きに替える。靴を仕舞い、廊下を歩く。まだ、朝早いから生徒の数もまばらだ。
「……あ、おはようございます。ソアレ様」
「おはようございます、フローレンスさん」
前から元気よく声をかけてきたのは、セイラだった。私は笑顔で答える。
「本当に昨日はありがとうございました、約束通りに今日はお弁当やお菓子を作ってきたんですよ」
「そうなんですか、楽しみです」
「ソアレ様、私のことはセイラと呼んでください。私もルイゼ様と呼ばせていただきます」
「……わかった、セイラ。私のことも呼び捨てで構わないわ」
「え、いいんですか?」
「いいわよ、敬語もなしで構わないわよ」
「……うん、今後もよろしくね!ルイゼ」
にっこりと嬉しそうにセイラは笑った。本当は男子だと言うことを忘れてしまいそうだ。そう思いながらも、私は頷いた。
教室に着くと、私はセイラと一緒に席に向かう。ライカ殿下が声を掛けてきた。
「おはよう、ソアレ嬢、フローレンス嬢」
「おはようございます、殿下」
「おはようございます」
先に私が次にセイラが言った。殿下は意外そうにしている。
「……朝から二人一緒なのは珍しいね」
「そうでしょうか?」
「いや、呼び止めて悪かったね。俺は授業の準備をするよ」
殿下は苦笑いすると、自分の席に行ってしまう。私とセイラは顔を見合わせた。互いに首を傾げたのだった。




