第53話 運命的な邂逅
スイーツ巡りを街々で繰り返しながらアーロン達はドワーフの国の王都に続く岩場地帯の街道を進んでいた。
街道を進んでいると複数の馬車が街道を塞いでいる所に遭遇する。
「なんか前の方で揉めているみたいだから馬車が進めそうにないよ~」
「この子達が言うにはエルフと獣人が戦ってるみたいね。あんたの国の貴族も居るみたいよ」
「邪魔のようなら妾がけちらしてくるのじゃ!」
アーロンはシルフィーの言葉を聞いて興味がわいたので見に行くことに決め、馬車を近づけていく。ドワーフのクローンの眼を通して目の前の光景に意識を集中するとそこには、交戦中の親友2人と傍に立っている成長した娘がいた。
「・・!!あいつ等何やってんだ?」
アーロンがもう一度よく見てみるとラグの首に奴隷の首輪のが付いてるのに気づく。さらにクーロ伯爵の存在にも気づいた。クーロ伯爵はアーロンが死ぬ前にも色々と面倒を起こす人物だったので覚えていた。
この状況を見たアーロンは大雑把に状況を理解した。
奴隷の首輪で第一王妃派のクーロ伯爵のによってラグが隷属させられていてカミラと戦っているのだろう。カミラがラグに攻撃をしていない様子からラグをどうにか助けようとしている事。
娘は何で居るんだ?わからなかった。
とにかく助けたいと思ったが正体を隠したままどうやってカミラ達を助けようか考えていた。
「シルフィーどうしよう?僕の親友と娘達が戦ってるみたいなんだけど、正体を隠しながら助けるにはどうしたら良いと思う?」
「何言ってんの?4歳児のあんたを見たからって、誰が何に気づくっていうのよ。アーロンさんは自意識過剰ですか?クスクス」
「そうなのじゃ!バレるわけなかろう」
2人の言うとおりである。4歳のアーロンを見て(王であったアーロンの生まれ変わりだ!)なんて思う人など100%と言っていい程いない。初めから気にする事ではなかったのだ。
「そうだね、なんだか考えすぎてたみたいだね。今から娘たちを助けるから2人とも手伝ってくれる?」
「いいわよ!」
「任せよ!」
カミラ達を助ける事に決めた3人は馬車から降りて、戦いを見ているアンジーの隣まで近づいていく。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「・・! え?ビックリした~。なんでこんなちっさい子がいるの?」
アンジーはアーロンに話しかけられてとても驚いた。声に驚いたというよりは全く気配を感じ取れないまま、すぐ隣まで接近された事にである。しかも3人もいる。
「何が有ったのか聞いてるのだけど、どうしたの?」
「悪そうな輩がかなりの人数倒れて居るようじゃが、そなたの仕業か?やりおるのう」
アンジーが3人に連続で話しかけられてとまどっているとシルフィーがもう一度話しかけた。
「あのエルフの剣士は獣人を助けようとしてるんじゃないの?違うの!」
「そうです!師匠の知り合いがどうやら操られてるみたいで苦労してるんです」
シルフィーが何か考えている芝居をしてから解決策を話す。
「どうやらあの首輪であの獣人を隷属させて操ってるみたいね」
「そんな事が解るんですかお姉さん!すごーい」
「ドーラ、あなたならあの首輪をどうにかできるんじゃない」
「そうじゃな、妾なら簡単に解除できるがの手を出してもよいのか?」
あっという間に解決策が提案されその解決までしてくれるという3人に少し疑いを持ったが今にも負けそうなカミラを心配したアンジーが3人にお願いすることにした。
「貴方たちが誰だかわからないけど、お願いします!師匠と師匠のお友達を助けてください」
アンジーが深々と頭を下げた。するとドーラがアンジーの頭をなでた後ゆっくりとカミラとラグのもとに歩いて行く。シルフィーはすぐさまクーロ伯爵を魔法で身動き取れないようにした。
「うわぁ!何だこれは、動けん」
ドーラが、二人がぶつかり合う瞬間、間に現れ2人の腕を取り同時に地面に組み伏せる。組み伏せて身動きを封じた後、光魔法を使って奴隷の首輪をただのアクセサリーにかえた。
「痛い!・・?」
「ぐへぇ・・・?・・体が自由に動く?」
「これで終わりじゃな。アーロン!終わったのじゃ!感謝しても良いのじやぞ!」
アーロン達の怪しまれない様にカミラ達を助けてその場を速やかに立ち去るという計画はドーラのこの一言でややこしいことになる。
「父上?」
「アーロン?」
「アーロンだってか?」
3人の視線がブンブンと手を振ってアーロンの元へ向かうドーラの先に居る4歳児の男の子に向けられる。
アーロンの眉間にはシワがより、こめかみに血管が浮かび上がる。(ドーラのバカ!)
奴隷の首輪の効果が切れたことで、戦う理由がなくなったカミラとラグが立ち上がってアンジーとアーロン達の所に歩いてくる。
「どなたか分らぬがご助力感謝します」
「誰かは知らねえが助かった。感謝する。あんたらに何かある時は俺の命に代えても助けるから言ってくれよ!本当にありがとう」
カミラとラグから感謝の言葉がでるがカミラはジーっとアーロンを見ている。
アーロンの目は右に左に泳ぎ回っていた。
「しかし、あなたの強さは桁違いですね。私があんなに簡単に組み伏せられるなんて正直今でも信じられない。私などまだまだ弱者なのだと感じさせられました。」
「ホントだぜ、SS級冒険者2人を簡単に倒せるなんてスゲーぜ。まるで武神じゃねえか」
武神ってのも、なまじ間違いじゃないんだよねとアーロンは心の中で笑っていた。
「ところで、その子はアーロンという名前なのですか?」
「あー私もそれ気になってたんだよね」
「俺もだぜ」
この後アーロンは現在の自分の事を話せる範囲で話した。父で門番であるジルが死ぬ前のアーロンに良くしてもらった事で自分の息子にアーロンと同じ名前を付けた事。魔力が生まれ持って多い子供だったので魔力操作を学ぶため冒険者のめちゃめちゃ強いお姉さんと一緒に旅をしてるという怪しさ満点の話と共に説明した。カミラの側にアンジーという規格外の7歳の女の子が居たので疑われることなく信じてもらえた。
「そうなんだ~。アーロン君は凄いんだね。お姉ちゃんと仲良くしようね」
「この道を通っていると言う事は王都が目的地ですね。私達も同じなので是非ご一緒しましょう。ラグあんたも一緒よ。聞きたい事がたくさんあるしね」
「良いぜ!」
「やったー!アーロン君、一緒に行けるね♡楽しみだよ」
「そ、そうですね」
「あんたそれでいいの?」
「アーロンが良ければ妾はそれでよいのじゃ」
カミラの提案を断ることが出来ず、一緒にドワーフの国の王都まで一緒に行くことになった。
「それはそうと、あんた達、こいつの事忘れてるんじゃないの?魔法で拘束するのも面倒なんですけど!」
「すまない、忘れていたこちらで回収するから渡してもらって良いだろうか?」
「拘束を解くのも何だから、アーロン!持続型の魔法の鎖で縛りあげてくれる」
「良いよ、それ!こんな感じでいいかな?」
アーロンが大量な魔力で練り上げて創った魔法の鎖でクーロ伯爵を拘束する。一年ぐらいで消えるようにしてある。
「十分ね。これなら一年ぐらい持ちそうね」
「?」
「・?・」
「・・・?」
カミラ達は一瞬思考が停止したのち目の前で起こったことに驚いている。
「今とてつもない量の魔力を感じたのだが。まさかあの鎖は魔力で創り上げたのか?」
「かなりヤバい魔力量だったぜ!」
「アーロン君てばすごーい。天才じゃん」
カミラは驚いた後クーロ伯爵を引き取って自分たちの馬車の奥に縛り付ける。ドワーフの国に着いた後、王都にある冒険者ギルドで依頼してエアフルトの王城に居るエイベルに送り付けるようだ。
「地面に転がっている奴らはどうするの?必要ないなら、私が片付けるけど」
カミラは必要ないというのでシルフィーが風魔法を使って一瞬で細切れにして片付ける。
ドーラばかり活躍したのでシルフィーも目立ちたかったようだ。
いらない馬車もシルフィーが細切れにして街道を片付けた後みんなで王都に向かうことにした。




