第48話 大柄のドワーフの男①
アーロン達に怯えてガタガタ震えているドワーフ達の中に一人だけジッとこちらを見ているドワーフの男がいる。
その男は周りのドワーフ達より体格が大きく筋肉も凄い盛り上がっている。ドーラ達の力を見ても平気な顔をしていた。
大柄なドワーフの男が話しかけてきた。
「おい!少し良いか?」
「あ!ごめんごめん。忘れてたよ!」
アーロンが返事をする。
「お前さん達はこの後、ワシらをどうするつもりだ?奴らと同じで売り飛ばすつもりか?」
「そうだね、気になるよね。でも安心して君達を売ったりしないからさ。」
「そうか、助かる。ありがとよ!」
アーロンが助けるといった言葉にドワーフ達は涙を流しながら喜び合っている。
「やったーー!」
「又、鍛冶ができるんだな!」
「くそ!こんな嬉しい時に酒がないなんて泣いちまいそうだぜ~」
「早く国に帰りてぇ~な~」
アーロンが檻のカギを火の魔法で溶かして開けてやると次々と檻の中からドワーフ達が出てきて、最後に大柄なドワーフが出てくる。
今まで檻の中に座っていたからわからなかったが、かなりの大男で身長も2メートルを越える程デカい。
ジッとドワーフ達を見ていたドーラがシルフィーに話しかける。
「シルフィー!エルダードワーフが混ざっておるぞ!」
「やっぱりね!そうじゃないかと思ってたのよね。無駄にデカいのが要ると思ったらやっぱりね」
「そこの無駄にデカいのコッチに来なさい!」
シルフィーが大柄なドワーフの男を呼びつける。急に呼び出しをくらった男は動揺しながらも答える。
「ワシか?」
「ワシか?って偉そうね!デカいのってあんたしかいないでしょ。馬鹿じゃないの?とにかく私が呼んでるんだからくればいいのよ!」
「シルフィー、とても口が悪いけどどうしたの?」
「・・・・・・」
アーロンの問いかけに答えないシルフィー。
大柄なドワーフの男が走ってシルフィーの所に来た。
「あんたエルダードワーフよね!」
「しー!デカい声で言うんじゃねぇよ。あいつらには言ってないんだから」
「大丈夫よ。聞こえやしないわよ。今、イフリートのバカは何してるの?」
イフリートとは火の大精霊の事である。
ドワーフ達が神様として崇めてる火の大精霊の事をバカ呼ばわりしたシルフィーを見て何かに気付いたのか大柄なドワーフの男がシルフィーの前に膝まづく。
「もしかして、あなた様は大精霊様でしょうか?」
「やっと気づいたのね!遅いんですけど!私をバカにしてたのかしら?」
「そんなことは決してありません。飲まず食わずの長い旅で疲労しておりまして気付くのが遅れました。私はドノバンと申します。あなた様のように麗しくて綺麗なうえに高貴な魔力に気付かないなんてどうかしておりました。お許しを」
ドノバンという名のエルダードワーフが丁寧に謝ってシルフィーに許しを請う。最後の方はお世辞まで言っていた。
「麗しくて綺麗で高貴だなんて、よく解ってんじゃないの!疲労してたんならしょうがないわね、今回だけは許してあげるわ!次からは気を付けなさい!」
シルフィーさん簡単に許しました。
「でもおかしく無い?エルダードワーフならあの子から直に加護を貰ってるはずよね。加護持ちのあんたが誘拐されてあの子が気付かないはず無いと思うんだけど」
「妾もそこが不思議だったのじゃ、奴に何ぞあったのか?」
「あの、こちらの方は?」
「竜神よ!」
「竜神じゃ!」
ドノバンがさらに深く土下座をしてオデコを堅い岩場の地面にこすり付けて謝罪する。
「重ね重ね申し訳ございませんでした」
「良いぞ!妾に精霊のルールなど関係無いからの気楽に話して良い。気にするでない」
先程シルフィーの機嫌が悪かったのは、このルールのせいである。
精霊には、神>大>上>中>小>>>>>加護持ち(半精霊)。
このような上下関係が存在するらしい。最後の加護持ちとは、ドノバンのように大精霊から直に加護を授かった者達で一番下に位置づけられるらしい。
精霊の中では最下位だが、普通はどの種族でも最上位の存在である。
加護を授かると精霊達のランク的な事が解るようになるらしい。
だから大精霊のシルフィーに何の挨拶もなく気付きもしなかった事で無視されたと思って怒っていたのだ。
アーロンに聞かれたときシルフィーが答えなかったのは、アーロンに器の小さい奴と思われそうな気がしたから言えなかったらしい。
竜神であるドーラはその名の通り神なのでほとんどの種族が畏怖する存在である。
そんな2人と友達の様に接しているアーロンが異様な存在(人間?)である。
「で、イフリートに何かあったの?」
「はい。3年ほど前からイフリート様はご自身の魔力が減少している事に気付かれまして魔力の減少を抑える為にドワーフの国のリート火山に籠っております」
「魔力の減少ってどういう事よ?」
「解らないのです。3年ほど前から世界の魔力が薄くなっているとイフリート様がおっしゃっておりまして。現にドワーフの国で大量に採れていたミスリルやアダマンタイトなどの魔力を大量に含んだ鉱石が採れにくくなっていまして。このままでは武器の生産で成り立っているドワーフの国は滅んでしまいます」
「あんた達の国なんかどうでもいいのよ!イフリートは大丈夫なの?」
ドノバンの襟首を掴んで詰め寄るシルフィーの表情が強張っていてイフリートの事をとても心配しているのが伝わってくる。
「ぐふっ! だ・だ・大丈夫でございます!まだ100年は大丈夫だと申されていましたから」
「そう~なら良いわ。でも100年なんてあっという間よ・・・」
アーロンにはシルフィーの表情がとても暗く寂しそうに見えた。
「シルフィー!イフリートに会いに行ってみようか?」




