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辛い×甘い=恋の味?  作者: 黒辺あゆみ
2話 不良とエリートと巻き込まれた私

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12/31

6 忍び寄る影

それから翌日の放課後。

 お菓子同好会の活動日ではないため、薫は一人自転車で帰る。


 ――今日、小坂先輩は用事があるんだっけ。


 小坂という名前と共に、昨日の「ファースト間接キス事件」が思い出され、一人ブンブンと頭を振る。


「ヤバい、私怪しいよ」


また顔が赤面しそうになるので、薫は慌てて違うことを考える。

 そう、本日の小坂の用事とはどのようなものなのか。

 不良が憂鬱になるイベントである。

 薫の頭の中では、「最強決定戦」なる大会が秘密の会場で行われる運びになっていた。

 小坂ならぶっちぎりの優勝なのだろうか。


「ふんふーん♪ 俺は世界最強~♪」


妙な鼻歌を歌いながら、自転車を押していく。

 校内では接触事故防止のため、自転車に乗っての走行は禁止なのだ。

 薫が学校の正門を出て、さあ帰るぞと自転車に跨った時。


「ねえキミ、ちょっといいかな」


そう声をかけて来た人がいた。


「はい?」


薫が声のした方を向くと、三野河高校のものではない制服を着た男子が立っていた。


 ――これって、修栄館高校の制服じゃない?


 このあたりの地域では名の知れた、有数の進学校だ。

 エリート高校の生徒が、こんな一般高校の前にいるとは珍しい。


「なんでしょうか?」


足を止めた薫に、その人はホッとした顔をした。


「ああよかった、止まってくれて。

 他校だから緊張しちゃって、声をかけるのに勇気がいるんだよね」


そう言って笑みを浮かべながら、薫に歩み寄って来る。


「ちょっと聞きたいことがあってさ。

 あ、でもここだと通行の邪魔だね、ちょっと避けようか」


「え、あ、はい」


確かに自転車を横に置いて立っている薫は、思いっきり下校集団の邪魔をしている。

 そしてエリート高校の生徒と話していることで、注目を浴びてもいる。


「目立つのも悪いから、ちょっとこっちに」


薫はその人に背中を押されるがままに移動する。

 校舎の隣は公園になっており、そこまで連れて行かれた。


 ――先に聞きたいこととやらを言ってくれればいいのに。


 こんな場所まで移動して、ショボい質問ならどうしてくれよう。

 薫は彼が、学校の用事かなにかで三野河高校を訪れたのかと考えていた。

 部活動関連で、他校の生徒が出入りするのはままあることである。

 だったら校内に入った方がよかったのではと思ったものの、流されるように移動する。

 彼のエリート高校生らしい雰囲気に、薫はそういうのに免疫のない至って普通の女子高生の身であるため、ぼうっとなっている感も否めない。


「そろそろ暑くなってきたよねぇ、三校は衣替えいつから?」


そんな話をされながら、二人で公園まで移動した。

 すると公園で、同じく修栄館高校の制服を着た男子が三人、薫たちを待ち受けていた。


 ――やっぱり部活関係か。


 彼らが集団でいることに、薫はそう理由付ける。


「連れて来たぞ」


薫をここまで誘導した男子は、そう言って三人と合流する。


「やあ、わざわざ来てもらってすまない」


待っていた三人のうち、体格の良さそうな男子が話しかけて来た。

 顔もそこそこよくて、エリート校の制服効果もあり、すごくモテるのではと思わせる相手である。


「あの、なんでしょうか?」


薫が尋ねると、その男子がすまなそうな顔をした。


「ちょっと人を待っていてね。

 なかなか出てこないから、もう帰ったのか知りたくて」


「え、と、そんなこと言われても」


三野河高校に通う学生が何人いると思っているのだ。

 その待ち人と薫が知り合いである可能性がいかほどだというのか。


「そういうのって、学校に言って呼び出してもらった方がいいと思いますけど」


部活動で来たのなら、学校側も呼び出しに対応してくれるはず。

 そう考えての薫の意見に、しかし彼はニコリと笑う。


「知っていると思うけどね? 小坂って男のこと」


「え、小坂先輩?」


薫は思わずきょとんとした顔をした。


 ――先輩とこんなエリート男子が、どんな繋がり?


 不思議だと首を捻る薫に、彼は笑みを深めた。


「うん、やっぱりキミだよ」


彼がそう告げた、その直後。


 バチィッ!


 薫の脇腹でまるで静電気が鳴ったような音がして、全身に衝撃が流れた。


 ――なに?


 自身に一体なにが起きたのかわからないまま、薫は気を失った。


「チョロい女」


「おい、自転車隠しとけ」


「スマホ持ってねぇだろうな」


彼らは意識のない薫の上着などを探る。

 そして用意されてあった車に乗せられ、薫は連れ去られて行った。



寝返りを打った薫は、布団が妙にゴツゴツしていると思った。


 ――なに、ベッドから落ちたの?


 ぼうっととした状態で身体を起こして這い上がろうとするが、何故か思うように動きにくい。

 数回瞬きをしてぼやけた視界をなんとか回復させ、首を巡らせて周囲を見る。


「……あれ」


 ――ここ、どこ?


 薫がいるのは自分の部屋ではなかった。鉄材や箱などが乱雑に置いてある、どこかの倉庫らしき場所の床の上だった。道理でゴツゴツしているはずだ。

 それに自分の身体を見下ろせば、手は身体の前にガムテープでぐるぐる巻きに拘束されており、動きにくい原因はこれであろう。


 ――私、なんでこんなところにいるの?


 薫はよくよく記憶をたどってみる。

 今日はお菓子同好会の活動日ではないため、真っ直ぐ帰るつもりで。

 でも校門前で誰かに声をかけられ、公園まで一緒に行ったら仲間らしき人達がいて。

 小坂の名前を出されたところで記憶が途切れている。


 ――ってことはどういうこと?


 薫が混乱した頭での現状確認がままならない中。


「気が付いた?」


上から声がした。


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