#19 ホラーからのファンタジー!
緊迫する事態に突入する。
「こんなん、ホラー映画やパニック映画とかーー」
「あと、サスペンス映画?」
入江の言葉に浦飯が続く。
「そうそう。密閉の場所で起こる恐怖にーー」
「殺人?」
「そうそう! 殺人事件‼」
和気藹々とする二人に。
「そこ落ち着き過ぎだろ」
小林が、さすがにツッコんだ。
「ヘイヘイ! いいじゃないっスか、今だけなんだからー」
「……まぁね」
ガッゴオオオオ゛オオ゛オオ゛オ゛オ゛オオオオオオ゛オ゛オオ゛゛オオオ゛オオオ゛オオ゛ン゛ん゛ン゛‼
「ふぎゃ‼」
浦飯が小さく悲鳴を上げた。
とうとう背後の壁面が落っこちてしまう。
バリンバリン! と鏡が割れる音も鳴り響く。
どこまでも、どこまでも、落ちて壁面のどこかに接触する音が木霊する。
だが、不思議なことに、壁がなくなったいうのに依然として、このエレベーターは上がり続けていく。
マジックのように。種も仕掛けもないとばかりに。
「こ、これ、この状況下って……かなり、危険じゃなぁい??」
「ぅんにゃ。大丈夫だべ」
胸を張って入江が言い切る。
どこから来る、自信なのか。
理解が出来ない。
浦飯は、自身よりも若い入江を見る。
「適わないな~~若い子、怖~い~~」
ふふふ、と浦飯が笑った。
「? 2歳しか違わないじゃないか。浦飯さんと俺」
「ん~~そうだね~~」
「変なの」
ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんン゛‼
「「「「あ゛‼‼」」」」
突然、エレベーターの扉が開いた。
ガッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
同時に底が抜けた。
「ぅお!?」
咄嗟に入江は浦飯の腕を掴み、開いた扉へと放り投げた。
火事場の馬鹿力だった。
なのに、入江自身は抜けた床に足を踏み込んだために、落ちそうになっていたが。
「「この禿‼」」
それを五十嵐、そして、小林が。
それぞれが入江の腕を掴み、浦飯のように放り上げた。
「のォあァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!?」
放り込まれた入江の身体がゴロゴロと転がり、何かにぶつかり止まった。
瞑っていた目を開けると、
「大丈夫ぅー~~入江ちゃん??」
心配そうに入江の顔を見る、浦飯の顔があった。
「……禿じゃ、ねェ~~~しィッ‼」
もう、この一言しか出なかった。
◆
空気が濃厚だった。
少し、むせ込んでしまうほどに。
「ごっほ! げほ‼」
入江がむせ返る。
寝っ転びながら、ひっくり返っている世界を見る。
そこは原始林。
--ようこそ、第二の舞台へ。