#16 エレベーターはどこまでも行くよ
第四休憩室。扉を開ければ、そこは少しのロッカーに机や椅子があるはずだった。
だったのにーー全く、違う!
「こいつァ、すげぇんじゃあねぇのォ? 小林さ~~ん」
入江が唇の端を吊り上げた。
「何を嬉しそうに言ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」
「っはァ?! 死ぬのはアンタたちじゃあねェかよ‼」
「あ゛ぁ゛??」
小林が不機嫌な声を出す。
「あんだよ! 事実だろォ~~がよォ!」
「本ッッ当に、君って奴はーー……」
二人が火花を散らす。
「……小林さん、どう思いますかぁ? コレ」
冷静に、五十嵐は腕を組む。そして、改めて小林に聞く。
「これは、招待か何かだって思っても、いい、んですよね?」
小林が頭を掻く。そして五十嵐に応える。
「そうとしか考えられないでしょ。これはーー」
第四休憩室の扉を開けたら、そこはーー
「エレベターの中だし」
◆
どこに行っても、この状態が続くと判断した。
ゾロゾロゾロ。
小林、五十嵐、入江ーーと浦飯……??
「「いや。浦飯さんはいいから‼」」
OBコンビが止めた。
「え~~」降りるも……おかしなことに。
扉が閉まらない。動かない。
ひょっとして。そんな馬鹿なことがあっていいのか???
「「……浦飯さん、乗って下さい」」
「ぅっわ~~い!」っぴょいん! 足どり軽く、浦飯は乗り込んだ。
するとどうだろうか。
ガッゴン! 扉が閉まった。
「ここのみんなが招待客ってことか」
小林の言葉の語尾が強張る。
「ま。そうなりますよね~~ワロタ」
五十嵐が、小林の肩を叩いた。
「はぁ。笑えないよ……お前と言う奴は」
「笑えば?」
入江が吐き捨てる。
「出口も、そう思うか~~」
五十嵐が、小さくなった入江の頭を撫ぜた。
「だってさー」
「ん?」
「どうせ、もうーー笑えなくなるんだし」
入江は前で、腕を組んだ。
小林と五十嵐が向かい合う。
「「…………」」
とくに言い合うこともなく、ただ、頷く。
その異様な空気に、浦飯は苦笑いをするほかない。
「なぁ~~んか。あたし、アウェイ感が半端ない~~」
すこし、動機が乱れる。心拍数も上がる。
◆
ウ゛ィ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン゛!
上へ、ずっと上へと。
「どこまで行くんスかねぇ~~? 小林さん」
「さぁ。僕が知るわけがないじゃないか」
「そうですけどねwwwww」
どこか、愉しそうなOBコンビ。
(何か腹が立つな)
ただ、この状況の打開策はない。
浦飯が居る以上危険な真似も、出来ない。
エレベーターは今ーー201階を通過したところだ。