#15 第四休憩室の怪
「君があのクレーム対応していたら大事になってたわ」
小林が入江に、愚痴り始めた。
「ハハハハ! ですね~~! なってた、絶対になってた! ふははは!」
何が可笑しいのか五十嵐は笑う。
場所設定の初期設定し忘れ事件の顛末。
これは一般的に、客を丸め込むほかない。
1.明らかに、届かない場所だと分かっていた。
2.POPの告知と違うとも、始めから? 気づいていた。
3.その上でお金を投資し続けた。
2が比較的にダメなのはもちろんだが、1と3は自己責任だ。
まず、スタッフを呼ぶなりしてもらわなければ、しでかしたスタッフ以外は割と気がつかないときが多い。
必ず、ほかのスタッフも試しに実践検証はする。入れ替え後に。
ただ、ここでーーあれ? とはなることも多いのだが、あのスタッフがやったんだし、大丈夫なんだよね?? と見過ごすことがあるのも事実。
それを、差し引いても、
『使った分の○○円返せや!』『詐欺やろ!』だの『警察呼ぶぞ!』は如何なものか。
……自己責任、ですよ????
「でさ~~小林さんが~~」
「も。その話は終わったことですからいいよ。五十嵐君」
「ふふふ。はいはいっと!」
このOBコンビは仲がいい。
腹が立つくらいに。
入江が胸中でぼやいた。
「?! 何で、腹が立つんだ???」
頭を被り振るう。そんな入江に小林が。
「何? 発情期なの?」
よく分からい突っ込みをしてくる。
「主任ーそれout~~!」
にこやかに浦飯が小林に親指を立てた。
「そうなの? そっか、気をつけます」
小林は素で浦飯に謝った。ちなみに、言った本人には謝ってはいない。
ぞろぞろーー……
4人は休憩室へと向かう。
「あれ? 浦飯さんはいつまで休憩??」
入江は聞く。
「ん~~あと5分くらいかな~~?」
◆
一同は第四休憩室へと来た。が、しかし。
「浦飯さん、君は第三でしょ。」
小林が素っ気なく言う。
「あと5分なんですからぁ~~いいじゃあないですか~~ほら! あんまり大きな声を出すと、幸恵ちゃんも来ちゃうよぉ~~う」
ぐぬぬぬ!
あの小林が歯ぎしりをする。
小林は寺下が苦手だった。
自分に好意を抱かれているからだ。告白もされた。
だが、まだーー忘れられない人がいる。
と、断ったにもかかわらず、依然と好意をよこす。
この小林が困り果てている。面白いことに。
(っざっま~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!)
にんまり、と笑っていたのが分かったのか、
「五十嵐君、その禿、殴ちゃって」
「了~~~~~~~~~~~解!」
バッコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン‼
◆
「横暴だ……」入江が頭を手でさする。
その上から浦飯が「ゴメンゴメン」と手でさすっていた。
「ったく。今回だけですよ?」
浦飯が、コクコク! と口を両手で抑えて頷いた。
はぁーー……小林がため息を漏らして、扉を開けると。
小林と五十嵐が「……」まず言葉を失い。
浦飯は「えっと。ここって休憩室でしたよねぇ??」と狼狽え。
入江に至っては。
「--……次の舞台ってわけね」
どこか冷静に受け止めていた。
この一同の中、経験済みの3人は気を引き締めていた。
初めての浦飯の目は泳いでいる。
ただ、それが一般的な反応だろう。