#14 亡霊の妻と迫る舞台(ステージ)
「いい度胸ですね」
がに股で歩く入江の背中に大きな棘のある言葉があてられた。
「全く、もう、子供でもないというのにーー」
「~~~~~ッッ!」
ワナわな。
「言っておきますけど、うちの子供より上は大人ですからね」
勢いよく入江も振り向く。
そこには虚ろな目、薄い茶色の髪をツインテール姿の女がいる。
「アンタの子供って、二歳じゃァねェか!」
「そうですよ。あなたは二歳児なんかじゃないですよね」
喧喧囂囂。
っち! この女が勤務だったとは、忘れてたぜェ~~‼
この女。
入江がもっとも、頭が上がらないーー江頭保の嫁、平子である。
「アンタだって、何してんの??」
「? 巡回しているのよ。当たり前ではありませんか?」
ああ言えば、こう言うの関係。
『 』
「ぁ」
この平子を視て、そして会ってーー思い出した。
「俺」
怪訝そうに平子も入江を視る。眉間にしわをよせて。
「何ですか? そろそろ仕事をなさってはどうですか?」
「《神魂特急》」
ビクリ!
虚ろな目に光が宿る。目も吊り上がっている。
それはーー怒りの表情、そのものだ。
「……それを、どちらで聞きました? 誰から、聞きました??」
低い声が、入江に尋ねる。
「‼ っいや、何でもねェ!」
誤魔化し走ろうとするも、
「逃すわけないですよね?」
ギリギリーー……!
「は、離せよ」
「嫌です。離しません」
「離せってば」
「嫌です」
「痛いっつ~~の!」
「知ったことではありません」
互いが睨み合う。
理由はなくもないが、今は、ない。
「何やってんのぉ~~?! お二人さ~~ん??」
そこに、休憩を使ってゲームをしに来ていた彼女が声をかけた。
硬そうな髪を後ろでまとめ、ポニーテールとなっている。
まつ毛の長い目がパチパチと瞬きする。
驚いた~~とばかりに。
もちろん、態とにだ。
「そぉ~~んなに、仲がよかったんだぁ~~」
「「冗っっ談」」
にひ!
犬猿の仲と呼ばれる、この二人の仲に入れるのは、中々といない。
だが、彼女はーー浦飯トオルは、小林や五十嵐同様に突っ込みを入れられる。
貴重なスタッフだ。
◆
「浦飯さんのおかけで助かりましたよ。ありがとうございました」
あのあと平子も手を離した。
『また。あとで話し合いましょうか』
口をへの字にさせながら。
「いいんだよ~~。てかさー、入江ちゃんさ~」
「うん?」
ピタ。
浦飯が足を止めた。
「……どうして女の恰好しているのか教えてちょうだい」
「‼ っえ??」
「女装にしても、みんな何も言わないのなんて可笑しいじゃない」
「じょ、女装じゃあねェし~~俺はーー……」
入江も逃げ腰になる。
「お! いたいたっ‼ 出口!」
問い質されている入江に、五十嵐が手を振った。
「! げェ~~ッ」
そんな五十嵐に入江が嫌な顔をした。
っゴっツん!
「い゛っでェ゛な゛ァ゛‼ 何で殴りやがんだよ!?」
「何となくだ! 何となくだッッ‼」
「ふっざけんじゃあねェ~~よ! あ゛ァ゛??」
これまた、話が進まなくなってしまう。
「休憩に入るよ。入江君」
ここで最後。あきれ顔の小林が声をかけてきた。
「別に休憩が要らないってなら別にーー」
「入るよ! いらねェ~~とか言うわけがねェだろうが‼」
「煩い」
小林の横で五十嵐も頷く。
(本当に、おのOBコンビわよォ~~‼)
この三人にも徐々に時間が迫っていた。
次の 舞台は、すぐ、そこまでーー。




