エピローグ
「しまったああああ……」
薬の効果が切れた後、わたしは頭を抱えた。
アーレインは侯爵家のお方。
下級貴族のわたしが罵倒し、更に殴ったとあっては不敬罪で訴えられかねない。
下手したら投獄。処刑だってありえる。
間違ったことをしたとは思ってないが、貴族社会とはそういうものなのだ。
けれど。
時が過ぎても、わたしが罪に問われることはなかった。
薬を盛ったことはもちろん、それに乗じてキスしようとしたことさえ明白にし、わたしが取った態度は至極当然のことだと自ら申し出てくれたらしい。
アーレインからは、謝罪の手紙も届いた。
そして――今も、アーレインは毎日のように閉店後やって来て、扉の前で頭を下げて帰って行く。ただ、赤いアネモネの花束を置いて。
アーレインはお店に入ろうとはしない。もちろん、わたしも入れる気はない。
だって、許せるわけがないでしょ?
でも、わたしがカーテン越しに見ていることにさえ気づかず、申し訳なさそうに俯いているアーレインの姿は、正直可愛く見えないこともないけど……
それに、赤いアネモネの花言葉は――
ですが麗しい侯爵様、媚薬づくりは犯罪です~だから、今更『愛してる』と言われましても~
《完》
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