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女の私が女の子を抱かなきゃ帰れないって、どういうこと!? ~エロゲ世界に転生したのでヒロイン十六人を攻略します~  作者: 円井ねここ
第七章 君が歌うなら

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第137話 明後日も来る理由、察してよ

 月曜日の午後、奈々(なな)は約束どおり、帽子とマスクで顔を隠してうちへ来た。

 私の部屋に入るなり帽子とマスクを外し、持ってきたノートを開く。


「相談なんだけど」


 奈々はベッドに座り、書き込んだ二箇所を指した。

 私はノートを覗けるよう、奈々の隣に腰を下ろした。


「ここの歌詞ちょっと短くして欲しいのと、ここ、ちょっと文字が足りなくなっちゃった」

「なるほど、ちょっと考える」


 短くするのは、サビの三行目にある『遠い場所で見つめるだけじゃなく』。文字を足すのは、その次の『君の隣で奏でていたい』だった。

 私はノートを膝に置いて二つの行を読み返す。奈々は隣でスマホを開き、文字を打ち始めた。


「何してるの?」

「SNSの更新。空いてる時間にこういうことしないと」

「アイドルってスタッフが更新してるのかと思ったけど、奈々が自分でやってるんだね」

「そう。そんなことはいいから真白(ましろ)は集中して歌詞を考えて」

「はーい」


 私はノートへ、奈々はスマホへ戻る。

 奈々が投稿文を考える隣で、私は歌詞を書いては消した。話していなくても、同じベッドで別々のことをしていられる。こういう時間も、私は好きだった。


「できた!」


 短くする方と文字を足す方それぞれに、三つの案を書いた。


「奈々、これどう?」


 奈々は投稿を終えるとノートを受け取り、スマホの録音を流して、短い方から順番に歌った。


「これは、『遠くで見つめるんじゃなく』を採用」

「こっちは?」


 続いて、四行目の案へ移る。


「なんかしっくり来ないな」

「じゃあ、こうはどう? 『君の隣でこの歌を奏でていたい』」


 奈々が同じ部分を歌い直す。『この歌を』の四文字が途中の音に入り、『いたい』がメロディーの終わりに重なった。


「これいいかも」

「やった!」


 奈々は採用する二行に印をつけ、録音を最初へ戻すと、Aメロから歌い始めた。


 誰にでも笑う奈々が、私にだけは素直じゃないこと。

 名前を呼べば怒った声が返ってきて、それでも、もっと好きになること。

 私が奈々へ書いた言葉は、奈々のメロディーに乗って、Bメロからサビへつながっていく。


『眩しい笑顔も 君の本音も

 全部好きだと伝えたい

 遠くで見つめるんじゃなく

 君の隣でこの歌を奏でていたい』


 最後の音を歌い終えると、奈々が私を見た。


「すごい……! めちゃくちゃいいじゃん」

「私も、すごくいいと思う……」

「じゃあ、完成ってこと!?」

「うん、メロディと歌詞は」

「やったー!」


 完成した嬉しさのまま、私は奈々へ抱きついた。奈々の身体が腕の中で固まる。


「ちょっと、真白っ」


 離れようと思えば、すぐに離れられた。でも、奈々は私を拒まない。

 もう少し、このままでいたい。抱きしめる腕を緩めずにいると、奈々の腕が私の背中へ回る。


「この歌詞、私が歌っても嘘にならないから」

「え?」


 奈々がこの歌詞を歌っても、嘘にならない。

 『全部好きだ』『君の隣で奏でていたい』。奈々も、私に向けて歌えるってこと?


「それって……」

「……私も真白が好きってこと。二回も言わせないでバカ」


 前に聞けなかった返事を、今度は奈々の声で聞けた。

 嬉しい。抱きしめているだけじゃ、足りない。

 私は奈々から身体を離し、その唇へキスをした。


「ばっ! 何やってっ!」

「ダメだった?」


 奈々は私の胸元をつかんだまま、手を離さなかった。


「だめ、じゃない」


 もう一度、奈々へキスをする。奈々も顔を上げ、唇を重ね返した。


「うぅ……」


 唇が離れると、奈々は目を伏せた。頬が赤い。


「奈々、可愛い」

「当たり前でしょ。アイドルなんだから」

「でも、こんな姿見られるの私だけだよ」


 奈々は言い返さず、私の服をつかんだまま顔を上げた。

 もう一度唇を重ねる。奈々の唇から力が抜け、開いた口へ舌を入れると、奈々の舌先が私の舌に触れた。


 私は奈々の肩を押し、ベッドへ仰向けにした。腰の両側へ膝をつき、上から唇を重ねる。

 唇を離して頬へ口づけ、耳たぶを唇で挟んだ。歯を立てると、奈々の身体が跳ねた。


「ひゃん!」


 奈々の指が私のシャツの袖をつかみ、強く引く。耳たぶを再びくわえ、舌先で耳の縁をなぞると、奈々の背中が震えた。


「ぁっ……ん、そこ……っ」


 これまで触れてきた子たちとは、反応の速さが違う。こんなに敏感な子は初めてだ。

 舌を動かすたび声が変わり、袖を引く指にも力が入る。そのたびに、次はどんな声を聞かせてくれるのか試したくなった。


「奈々、大好きだよ」


 奈々の顎に手を添えて顔を横へ向け、耳の付け根を吸った。


「ひぁ……っ、ま、真白……!」


 奈々が私の袖を引く。私は耳から首筋へ唇を下ろし、服の裾から手を入れ、脇腹を撫で上げた。


「んぅ……っ、ぁ……」

「奈々ってこれだけで、こんなになっちゃうんだ」

「……それ、誰と比べて言ってるの?」


 私は答えず、奈々の唇へキスをした。

 唇を重ねたまま、服の中の手を上げていく。指先が下着の縁に触れたところで、ベッドの上に置いてあった奈々のスマホが鳴った。

 奈々と顔を見合わせる。画面には、マネージャーからの着信が表示されていた。


「マネージャーからだ」


 画面の時刻は、もう二十時だった。

 私は奈々の上から退き、二人で起き上がる。奈々は服の裾を直し、私は乱れた髪を手で押さえた。

 奈々は帽子を被り、マスクを着けた。いつもの外向きの姿に戻ると、ノートを鞄へ入れた。


「次、明後日来るから」

「でも、曲完成したよ?」


 奈々が私を見た。


「……バカなの真白?」

「ええ?」

「それぐらい察しろバカ! アホ!」


 奈々は怒って部屋を出ていった。


「ちょっと待ってよ奈々!」


 私は奈々を追いかけ、玄関まで降りた。奈々は振り返らないまま外へ出て、待っていた車へ向かった。

 玄関の扉を閉めると、リビングから出海(いずみ)が顔を出した。


「お姉ちゃん、もしかしてすでに四股してるのバレて、あの子が五番目の女だってこと、バレた?」

「バレてない!」

「すでに四股してて五股しようとしてるのは否定しないんだ……」

「してないからね!?」

「いや、否定するの遅いよ?」

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