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<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです
天使の力を失くしたからと言って、くーちゃんの仕事が無くなったわけではありません。
祖父江さんはしばらく仕事をお休みにしてくれましたが、三日と経たず、ごく自然に仕事を割り振ってきました。
二月末から三月初旬を過ぎるまで、庭神町ではひな祭りと称して、大々的に地域復興イベントが開かれます。古い町並みが、竹細工や雛人形たちで飾られ、観光客も大勢やってきます。閑静な町全体が、「田舎」という衣装から、「観光地」という衣装に早着替えしたような変化に、くーちゃんは目を見張ります。
町の宿屋は、どこもこぞって、日々満員のようです。普段にない忙しさで、どこのスタッフもうれしそうに声を張り上げていました。
一時は悪評が広まったゲストハウス星山も、いまは元の評価を取り戻して、毎日泊まりの客がやってくるようになりました。となれば、祖父江さんだけで切り盛りするのも大変で、くーちゃんに仕事が渡されるのも、不思議ではありません。廊下の拭き掃除、大部屋の片づけ、宿泊客が使った布団からシーツを剥がしたり、それを洗濯機に入れてスイッチを押したり……祖父江さんから新しく、お風呂の掃除をするように言われたときも、くーちゃんは黙って、言われたとおりに仕事をこなしました。
仕事をこなす間、くーちゃんは何も考えずにいられました。
ですが、一日が終わり、お風呂に入ると、汗と埃で汚れた身体が鏡に映されます。
鏡に映る自分がこう言います。
——あんたはもう、天使じゃない。
シャワーを浴びなければ汗臭くなってしまうなんて、もはや人間とそう変わりません。くーちゃんは、シャンプーで泡立った頭を強引に振り、弱気な考えを振りほどきます。
(あたしは天使だ)
どんなに身体が汚れても、お腹が空かないという事実は残っています。
それに、くーちゃんは、天界に帰るという目的を諦めたわけではありません。
——この世で最も愚かなものはなにか。
その答えを、意地でも見つけ出すつもりです。
そんなわけで、くーちゃんは今日も、人間の愚かなところを見つけようと、廊下の拭き掃除に精を出しました。
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