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<注意>第37回小説すばる新人賞 落選作品 を改稿したものです
約束の時間より五分遅れて、くーちゃんは待ち合わせ場所に着きました。
セナは黒いコートを着て、頭に雪をかぶっています。くーちゃんに気づくと、セナは右手の懐中電灯を振ります。
「電話もあるよ」
と、コートのポケットから、固定電話の子機を取り出します——それを持っていたって誰にも連絡できません——セナはセナで、必要だと思うものを用意したみたいです。
セナの案内で、くーちゃんは武家屋敷までやってきました。以前、明るい時間にナルちゃんに案内してもらったときはなんとも思いませんでした。が、武家屋敷のある通りは細く、分厚い雪が降りしきる夜にあって、武家屋敷は異様な雰囲気をかもしています。最近のくーちゃんはダウンライトのか細い明かりでも眠れるようになりましたが、いまだ、真っ暗な部屋で眠ることができないでいます。懐中電灯の明かりにすがるように、くーちゃんはセナに身を寄せます。
セナが急かすように言います。
「これからどうするの?」
くーちゃんは手袋を外して、両手を胸の前で組みました。天使の力は、残り二回しか使えません。そのうちの一回をここで使います。あとでどうなるか、わかってものではありませんが、ソラを助けるためです、なりふり構っていられません。
くーちゃんは祈ります。
「光よ、お願い、あたしをソラのいる場所に案内して」
そう唱えると、くーちゃんの目の前に、光の球が現れました——すぐにくーちゃんは、自分の身体を見回します——特別変わった感じはしません。
光の球は、武家屋敷の門をすり抜けて、しばらくすると、また戻ってきました——ソラが移動した経路をたどっているようです——光の球は、くーちゃんの前で止まらず、暗い通りをふわふわと飛んでいきます。
くーちゃんとセナは目配せをして、光の球を追いました。
ふと、くーちゃんの指先がちりちりと痺れます。最いつもより空気が寒いせいだ、と思いました。ですがその痺れは、実は、指先がかじかんで痛みに変わり始めているせいでした。
くーちゃんが痛みに気づくのは、もう少し後の話……
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