第三十七話 ニコル君ご家族と家族になろう作戦⑦
ユミナの突然の告白に戸惑うのも束の間、ギャリング殿下の怒りの矛先が再び僕に向けられた。
その怒りの度合いは、サーシアの時より明らかに高い。
さあ、どうする僕?!
「勝負しろっ、ニコルッ! 《男》としてどちらが優れてるか決着をつけてやるっ!!」
「お断りし」
「貴様に拒否権など無ーーーーーいっ!!」
僕が断りの返事を言い切る前に、ギャリング殿下が否定する。
「でしたら《ジャンケン》にしましょう。平和的に!」
『ギリッ!』
「俺様を舐めるなーーーっ!! そんなもので《男の価値》が決まってたまるかーーーっ!! 男と男の勝負は《決闘》と決まっておろうーーーっ!!」
「決闘と言われましても、怪我をしたり死ぬのはさすがにー・・・・・・」
「心配は無用だ。大怪我をしたら《上級ポーション》を使ってやる。たとえ瀕死状態になっても《エリクサー》がある!」
「私ごときに、そんな貴重な薬を使っていただけるのですか『ハァー、さっさと負けよ』」
僕は決闘を回避できないと悟り、無難にやり過ごそうと思案する。
「パパー、サー応援するから絶対勝ってねー! 負けちゃダメだよー!」
「あははっ」
僕の思惑も知らず、サーシアは笑顔で応援する。
「ぶあーはっはっ! 娘っ、この俺様が貴様の父より優れているところ、しかとその眼に焼き付けよっ!」
「パパはとーっても強いんですよー。負けてもパパに勝負を挑んだこと、後悔しないでくださいねー!」
「世間知らずな。良かろうニコルが俺様に勝ったなら、《十憶マネー》くれてやるっ!」
「スゴーイ。パパ、十憶マネーだってー。《寄付金》の蓄えが増えるよー!」
無邪気に喜ぶサーシア。
「だがっ!!」
『喜ぶのは早い』という様な口振りで、待ったを掛けるギャリング殿下。
「えっ、なに?!」
サーシアはギャリング殿下へ向き直り、疑問符を浮かべる。
「俺様が勝ったら、サーシア貴様を貰い受ける。先にも言ったが、先ずは王城で《料理人》とし仕えろ。容姿に磨きが掛かり美しくなれば、将来《側室》として娶ってやる。言っておくが今回却下は無しだっ!」
「また言ってるー!」
「諦めてなかったのか?」
呑気なサーシアと戸惑う僕。
これでわざと負けられなくなってしまった。
「だっ、駄目ですっ! 私の発言が原因で、サーシアちゃんを《賭けの対象》にするなんてっ!!」
『ニヤッ!』
否定するユミナに、ギャリング殿下は不適に笑う。
「であれば、ユミナ殿下が《身代わり》になってもかまわんのだぞ。勿論《料理人》としてではなく、即刻《側室》としてだが!」
「・・・・・・分かりました。その条件、承諾致します」
「ぶあーはっはっ! やったぞー! これでユミナ殿下は俺様のものだーーーっ!!」
両拳を握り、大喜びするギャリング殿下。
既に勝った気でいる。
「待ってくださいユミナ殿下っ! お心遣いは感謝します。ですがサーシアの身代わりを《王族》のあなたがすべきではありませんっ!」
「大丈夫です。ニコル君が勝ってくれれば、何も問題ありません!」
『相手はアルシオン王国の《次期国王》にして《英雄》だぞ。僕が素顔を晒して勝ってしまえば、エシャット村での生活はどうなる? 今まで通り過ごせるのか? いやけど、負ければユミナは・・・・・・』
「ニコル君?」
「あっ、ああ、勝つよ。僕に任せてっ!」
「はい、お願いします!」
『ごめんない、ニコル君。《未来視》スキルでこうなる事は分かってたの。あなたの優しさに付け入り、あなたとの繋がりを深める為、画策してる私を許して』
今回の新作パスタ料理指導は、ユミナをニコルへ嫁がせる為ソフィア婦人が計画したものである。
そして成功の鍵は、ニコルの家族との繋がりにあると考えた。
だがギャリング王太子殿下の訪問により、悠長に時間を掛けていられなくなってしまった。
そこでユミナとソフィア婦人は相談し、急速に計画を進める運びとなったのだ。
ニコルへの告白も、タイミングを見計らっての事だった。
「ギャリング殿下。恐れながら申し上げます!」
「何だ、ソフィア婦人?」
「この《決闘》でギャリング殿下が負けたなら、ユミナの事はキッパリ諦めていただきとうございます!」
「俺様の負け前提での物言い、気に食わん。勝つのは俺様だ!」
「しかし勝負ですので、お互い条件を付けませんとフェアではありません!」
「・・・・・・良かろう。万が一俺様が負けたら、ユミナ殿下は諦める。《女神》と評されるユミナ殿下を娶る男は、《最強》でなくては釣り合わんからな!」
「ご了承いただき、ありがとうございます」
「ふんっ! ニコル、皆の者、行くぞ!」
「何処へですか?」
「《決闘》のできる場所だ!」
「今からですか?!」
「問題あるか?」
「武具のご用意は?」
「魔法袋で持参している。貴様はどうだ? 無いなら貸すが」
「大丈夫です。私も魔法袋に入れてあります」
この後ソフィア婦人から、決闘場所について王国軍の訓練施設を借りる提案がされた。
その結果、先触れを出し使用許可を待つ事となった。
◇
時間が少しできたので、僕は客室で待つミーリアの下を訪れた。
そして事の経緯を説明した。
「そう、ユミナさんが。でもニコルちゃん、大丈夫なの? 相手の方とても強いんでしょ。間違って死んだりしないよね?」
「安心して。ミーリアや子供達を残して死ねないよ。それに全く自信が無ければ、逃げ出してたさ」
「ニコルちゃんがそう言うなら大丈夫ね。分かったわ。ユミナさんの為にも絶対勝ってね!」
「ああ」
そう言って、僕とミーリアはきつくハグを交わした。
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