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第五十話 ダンジョンの街の孤児院、騒動④

孤児院の家に入ると、リンゼさんはリビングで椅子に座って待っていた。


「リンゼさん。遅くなって、すみません」


「大丈夫じゃ。何か、理由があったのじゃろ?」


「引っ越しの準備を、してました」


「そうか。すまんのう」


「今直ぐにでも、引っ越しできますよ」


「しかし、ニコルの村に行くにも、どうやって行くのじゃ?」


「大丈夫です」


「まさか、奴等の馬車を奪うのか? 御者が足らんぞ」


「リンゼさん。僕は、特別な魔道具持ってます。それを使えば、あっという間に移動ができます」


「何っ! 本当なのか? いくら何でも信じられん」


「本当です。今から、その魔道具を出します」


僕は魔法袋をまさぐり、《亜空間ゲート》を取り出した。


「扉?」


「この扉の向こうは、古郷とは別の街ですが、僕の《別荘》に繋がってます」


「そんな事、ありえん!」


「そうですよね。信じられませんよね。でも、実際に扉を潜れば分かります」


「ニコルがそこまで言うなら、分かったわい」


僕は《亜空間ゲート》の扉を、開いた。


「さあ、行きましょう」


「うむ」


リンゼさんを促し、僕達は扉を潜った。



扉を出ると、部屋の明かりを点けた。


「なんという事じゃ!」


「ここは、ダンジョンの街プラークです。故郷の村に孤児院を建設するまで、使って下さい」


「こんなとんでもない魔道具を持っておるとは、お主いったい何者じゃ?」


「嫌だなー。ただの行商人ですよ」


「信じられるか! まあ、いいじゃろ。その辺は、詮索せん」


「ありがとうございます」


この後、リンゼさんに家の中を案内した。



家を案内しながら、エシャット村とこの場所を繋ぐ《亜空間ゲート》が、もう一組ある事を教えた。


それが厩舎併設の車庫に設置され、村人が利用している事も伝えた。


「村人が出入りするのか?」


「大丈夫です。みんな優しいから」


「そうか。ニコルが言うなら、大丈夫じゃろ」


そして、《亜空間ゲート》の存在を隠す為、敷地には《結界》が張ってあり、子供達が勝手に《亜空間ゲート》を使わないよう車庫にも《結界》を張ったと伝えた。


「わしにはもう、ニコルが神様の様に思えるぞ!」


「嫌だなー。ちょっと魔法が、使えるだけですよ」


「謙遜は、もういいわい!」


「ハハッ」


「それじゃ、今晩の内に子供達を移動させるかの」


「僕が荷物を運びますので、リンゼさんは子供達をお願いします」


「ああ、分かった」


この後、リンゼさんは寝ている子供達を起こすのに苦労した。

移動には、ココと数人の年長者が活躍してくれた。


僕は子供達が直ぐ眠れるよう、空いた三段ベッドを優先して運んだ。



引っ越しは、二時間程で終わった。


家の中の細かい物は、魔法袋に入れリンゼさんに渡した。

庭の菜園は、土ごと運んで移設してある。


寝付けなくなった子供には、申し訳ないが魔法で眠って貰った。


そんな中、ココだけは起きていた。


「お爺ちゃん。もしかして、孤児院には帰れないの?」


「ああ、そうじゃ。孤児院は、取り壊す事が決まった」


「孤児院を出たお兄ちゃんやお姉ちゃん達と、会えなくなるね」


「お互い生きておれば、また会えるじゃろ」


「うん」


「ココ、もう寝るんじゃ。朝は、忙しいからの」


「分かった。ニコルさん、お休みなさい」


「ああ、お休み」


食事の用意があるので、ココの朝は忙しいのである。


「ニコル。何から何まですまんの」


「いえ、いいんです。僕は、賊の様子を見てきます。朝になったら、また来ますよ」


「そうか。よろしくな」


「この扉は、回収します。子供達が悪戯すると、不味いんで」


《亜空間ゲート》を魔法袋にしまい、一旦外に出て《転移》でエーテル街の孤児院に戻った。



孤児院に戻ると、見張りを頼んだ二人は眠っていた。


「おい、起きろ。移動だ」


「まだ、眠いニャ」


『もう、朝ですか?』


「ここは引き払うから、起きてくれ」


「しょうがないニャ」


『分かりました』


馬車の荷台をしまい二人を《亜空間農場》へ押し込むと、敷地の《結界》を解いた。


続けて、賊の《睡眠》魔法も解いた。



「うっ、うう。ここは、何処だ?」


「俺は、寝てたのか?」


「体がいてー」


「おい、起きろ! ここは、孤児院だ。仕事を済ますぞ!」


賊達は起きると、《結界》の事など忘れ家に入って行った。


「何だこれは。何も無いぞ!」


「子供達を探せ!」


「いねーぞ。どの部屋も空だ。魔道具も見当たらん!」


「こっちもだ!」


「俺達が寝ている間に、逃げたというのか?」


「あれだけの人数だ。遠くへは行ってまい。探すぞ!」


賊達は孤児院を出ると、暗い夜道を駆けて行った。



僕は隠れて、その様子を見ていた。


「行ったか。探しても、無駄なんだけどね。それにしても、目的は当たってたな」


《ご都合主義》が働き、子供達に被害を及ぼさずに済んだ。


「孤児院に来るタイミングが一日でもずれてたら、大変な事になってたな」


僕は明日に備えて、《亜空間農場》の家で眠った。

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