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第四十九話 ダンジョンの街の孤児院、騒動③

僕が孤児院を支援してると言っても、贅沢をしてる訳ではなかった。


食事は一日二食で、朝はパンとスープ、夜はサラダが追加されるくらいだ。

この風習は、僕が支援してからずっと続いている。


普段の食事は、リンゼさんとココが中心に年長者の仕事だ。

人数が多いので、手の込んだ物は作れなかった。


たまに僕が来て、いつもと違った夕食をご馳走している。

今日は、庭でのバーベキューだった。


「おいしいねー!」


「しょっぱくて、すごくあまーい!」


「しょうゆのこげるにおいが、すき!」


肉が人気なのは当たり前だが、プラーク街ダンジョン産の《焼きトウモローコシ》も人気である。



夕食が終わりいつもなら帰るところだが、代官の残した言葉が気になり、その日の夜は外にテントを張り泊まった。


「ご主人、起きるニャ!」


夜中にテントで寝ていると、シロンに起こされた。


「シロン、どうした?」


「馬車が複数、近付いて来るニャ!」


「馬車?」


聞き耳を立てると、確かに音がする。

こんな夜中に馬車を走らせるなんて、よっぽどの事である。


テントの外に出ると、シャルロッテもそわそわしていた。


『ご主人様。複数の馬車が、近付いてます』


「そうみたいだな。《結界》」


孤児院の敷地に結界を張り、万一に備えた。


十数秒後、五台の馬車が孤児院の前で停止した。

その馬車からは、合わせて十人降りて来た。


「行くぞ!」


一人の掛け声で、全員が動き出した。


『ドスン!』


「いてっ! 何だこれは?」


孤児院の敷地に侵入しようとして、先頭の男が結界に阻まれた。


覆面をしていて顔の判別は難しかったが、今の声で男の正体が分かった。


「昼間、代官と一緒にいたやつか」


僕は、呆れてしまった。


「貴族って、何なんだろうな」


取り敢えず、こいつらの用件を聞く事にした。



僕は柵を飛び越えて、結界の外に出た。


そして、男達に静かに近付き、横から声を掛けた。


「こんな遅い時間に、何の用ですか?」


『『『『『『『『『『ビクッ!』』』』』』』』』』


「お前は!」


昼間の男が、呟いた。


「まさか、人攫いですか?」


「くっ! こいつを殺れ!」


男達は手にナイフを握り、僕を囲んだ。


「《睡眠》」


『『『『『『『『『『バタン!』』』』』』』』』』


騒ぐと子供達が目を覚ますので、何もさせず眠らせてしまった。

その直後、馬車で待機してる男達も眠らせた。


『キー!』


その時、孤児院の扉がゆっくりと開いた。


その人物を窺うと、リンゼさんだった。



リンゼさんは、こちらに歩いて来た。


「騒がしいと思って来てみたんじゃが、何かあったのか?」


暗くて、状況が把握できてないようだ。


「賊が来ました。恐らく代官の手下です。御者も含めて十五人いますが、今は全員魔法で眠ってます」


僕は男の覆面を、剥ぎ取った。


「なんと! 昼間、代官と来た輩ではないか」


「昼間の代官の口振りから、恐らく子供達や魔道具が目的でしょう」


「そうじゃったか。ニコルがいなければ、大変な事になってたの」


「ここにいては、またいつ来るか分かりませんね」


「直ぐにでも、ここを出た方がいいようじゃの」


「僕はこいつ等を、ロープで縛り上げますので、その後話し合いましょう」


「分かった。待っておるぞ」


リンゼさんが家に入るのを確認し、魔法で賊を縛り上げた。


そして、プラーク街の別荘に転移し、《亜空間ゲート》の片割れを設置した。



当初、別荘を宿泊施設として、エシャット村の人達に貸出していた。


しかし、利用する人が少なくなり、今は止めている。


「たしか、リンゼさんを含めて三十七人だったな」


最初に出会った頃から、数人増えていた。


子供達を受け入れるのに、足らない物が無いか家の中を見て回った。


「寝室は家具をしまって、今使ってる三段ベッドを詰め込めば大丈夫だな」


この家には、広めの寝室が四部屋あった。

部屋の物を次々と《亜空間収納》にしまい、魔法で部屋を綺麗にした。


「屋根裏も綺麗にして使えば、余裕ができるな」


本来物置として使うのだが、居住スペースとしても充分な広さだった。


「流石に、ダイニングキッチンは狭いな。トイレと洗面所も足りないし、風呂はどうするか?」


僕は思いきって、家の裏側を増築する事にした。



初めに《亜空間収納》内で建物を建築し、次に地面を平らに慣らし排水設備を整えた。


そして、その場所に建物を設置し、キッチン・トイレ・洗面所・風呂・洗濯・照明に纏わる設備を設置していった。


「よし、できた。後は、渡り廊下で繋げてと」


こんな感じに準備を整え、孤児院に戻った。


「ただいま」


「ご主人。どうする気ニャ?」


『どうするんですか?』


「この街は孤児院の子供達にとって、安全な場所じゃなくなった。一時プラーク街の別荘に避難して貰い、エシャット村に孤児院を建てたら引っ越そうと思う」


「ご主人は、お人好しニャ」


『ご主人様。お優しいです』


「僕に救えるのは、目の前にいる極一部の人だけだ。そんな、大した人間じゃない」


「謙遜しなくていいニャ」


『その通りです』


「まあ、いいや。僕は、リンゼさんの所に行ってくる。何かあったら、呼んでくれ」


「分かったニャ」


『分かりました』


二人に見張りを任せ、僕はリンゼさんのところへ行った。

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