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第十八話 子供達の救出第二段

子供達が男にナイフを突き付けられているのを見て、僕は頭に血が上った。


『シュバッ!』


『『ガシッ! グシャ!』』


《瞬動》スキルで一気に男との間合いを詰め、両手首を掴むのと同時に握り潰した。


「ウギャー!」


『カラン! カラン!』


男は悲鳴を上げ、両手のナイフを手放しそのまま床に落とした。


『グシャ!』


「アギャッ!」


そして、続け様に男の顔面を殴り飛ばした。

しかし、僕はそこで止まらなかった。


『ドカッ! バキッ! グシャ! ドスッ! ドカッ! バキッ! グシャ!』


次の瞬間、その場に立っていた男達は、二人の指揮官を含め全員倒れていた。



僕は子供達の前でしゃがみ、二人の頭に手を乗せた。


「大丈夫か?」


「「おじさーん!」」


子供達は僕に抱き付き、泣き出してしまった。


「さっさと、こんな所出るぞ!」


「「うん!」」


そう言って立ち上がり、倒れている男達を避けながら裏口の扉から出た。



屋敷を出ると、先程のメイドさんが立っていた。


「この屋敷の奴等は、子供達を誘拐している。お前もこの屋敷にいたら、同罪に思われるぞ」


「そうでしたか。何やら、怪しい気配は感じていました。ご忠告、ありがとうございます」


メイドさんに忠告をすると、人気の無い場所へ行きを眠らせた。

そして、平民街の空き地に《転移》し、二人を起こした。


「「あれっ、またねちゃったの?」」


「ああ、魔法だ。気にするな。ところで、お前達はいつ攫われたんだ?」


「きょうのあさ、おうちにさっきのおじさんたちが、はいってきたんだ」


「わたしもー」


「そうか、大変だったな。それじゃ、お腹が減ってるだろ。パンケーキを、食べさせてやる」


「「やったー!」」


二人はパンケーキと聞いて喜んだが、直ぐにその表情は曇った。


「ママが、けがしてるかも」


「わたしのママもー」


「それじゃ、家に帰ってから食べような」


「「うん!」」


この後、子供達を家まで送った。



不本意だが、怪我を治す為母親に会う事になった。


先に女の子を送り届け、今は男の子の家にいる。


「誤解して済みません。一度ならず二度までも子供を助けていただいて、本当にありがとうございます。それに、私の怪我まで治していただいて」


「気にするな」


今の僕は、姿も声も性格も変えている。


この状況では、自分でも自分の事を怪しいと思う。

しかし、子供が熱心に誤解を解いてくれた。


「パンケーキ、おいしーね」


その子供は今、パンケーキを食べている。


母親の話しを聞くと、女の子の家と同様父親の留守中の犯行だったらしい。

既に父親とは連絡がつき、父親は子供を探しに出ていた。



「それで、どうしても犯人を、教えていただけないのですか?」


僕は自分と犯人の素性を明かさないと、先に伝えている。


「言っても、相手は貴族だぞ。どうにかできるのか?」


「衛兵に、訴えます!」


「証拠は?」


「証拠?」


「訴えても証拠が無ければ、受け付けてくれるか分からないぞ。それに、身分差で証拠も揉み消せる」


「では、あなたが一緒に来てくだされば!」


「そんな面倒事、御免だ!」


「子供達を、二度も助けてくれたのに?」


「うっ! それは、面倒の種類が違う」


「そんな!」


「兎に角、俺のやれる事はここまでだ。また、攫われないよう気を付けるんだな」


「そうですね。暫く、親戚の家に身を隠します」


子爵邸に《結界》を張った事は、伝えなかった。

今日のような事もあり完璧とは言えないし、何より能力を明かしたくなかった。



「じゃあな」


「おじさん、いっちゃうの?」


「ああ」


「ぼくがつかまったら、またたすけてくれる?」


「どうだかな」


一生、助け続ける事は不可能だ。

安易に、約束はできなかった。


「そうなの? ひっぐ、ひっぐ、びえーん!」


「おっ、おいおい、冗談だ。助けてやるよ」


「ほんとに?」


「本当だ。だが、もう捕まらないでくれよ」


「うん!」


僕は子供の涙に、守れるか分からない約束を、させられてしまった。


「俺は、行くぞ。じゃあな」


「うん。バイバイ!」


母親も頭を下げて、僕を見送ってくれた。


僕は子供に泣かれて、思わず素の自分が出そうになり、急いでその場を去った。



翌日の午後、子爵邸を訪れると騒がしかった。


屋敷の回りに、大勢の人がいた。

隠れて話しを聞いてみると、どうやら王城から来た調査隊ようだ。


子爵が、《救助依頼》を出したらしい。


「これじゃ、手が出せなくなったな」


念の為、誘拐された子供がいないか確認したが、今回はいなかった。


「それじゃ、帰るか」


僕は《嫌がらせ第二段》をする事なく、子爵邸を去った。



せっかく王都まで来たので、喫茶店に寄った。


コーヒーを飲んでいると、他の席から気になる会話が聞こえてきた。


「おい。コロネ子爵の屋敷が、おかしな事になってるらしいぞ」


「俺も聞いた。何でも、屋敷から出られないんだってな」


「ああ。だがおかしな事に、全員じゃないんだとさ」


「不思議な事も、あるもんだな」


「それで、王城に救助依頼を出したらしいぞ」


「いったい、何があったんだろうな」


「俺には分からん」


「何かの仕返しかな?」


「そうだな。いい噂は、聞かないからな」


『ここまで、噂が広がってるのか。随分、早いな。それに、悪い噂もあるのか』


僕はコーヒーを啜りながら、そんな事を考えていた。

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