第十八話 子供達の救出第二段
子供達が男にナイフを突き付けられているのを見て、僕は頭に血が上った。
『シュバッ!』
『『ガシッ! グシャ!』』
《瞬動》スキルで一気に男との間合いを詰め、両手首を掴むのと同時に握り潰した。
「ウギャー!」
『カラン! カラン!』
男は悲鳴を上げ、両手のナイフを手放しそのまま床に落とした。
『グシャ!』
「アギャッ!」
そして、続け様に男の顔面を殴り飛ばした。
しかし、僕はそこで止まらなかった。
『ドカッ! バキッ! グシャ! ドスッ! ドカッ! バキッ! グシャ!』
次の瞬間、その場に立っていた男達は、二人の指揮官を含め全員倒れていた。
僕は子供達の前でしゃがみ、二人の頭に手を乗せた。
「大丈夫か?」
「「おじさーん!」」
子供達は僕に抱き付き、泣き出してしまった。
「さっさと、こんな所出るぞ!」
「「うん!」」
そう言って立ち上がり、倒れている男達を避けながら裏口の扉から出た。
◇
屋敷を出ると、先程のメイドさんが立っていた。
「この屋敷の奴等は、子供達を誘拐している。お前もこの屋敷にいたら、同罪に思われるぞ」
「そうでしたか。何やら、怪しい気配は感じていました。ご忠告、ありがとうございます」
メイドさんに忠告をすると、人気の無い場所へ行きを眠らせた。
そして、平民街の空き地に《転移》し、二人を起こした。
「「あれっ、またねちゃったの?」」
「ああ、魔法だ。気にするな。ところで、お前達はいつ攫われたんだ?」
「きょうのあさ、おうちにさっきのおじさんたちが、はいってきたんだ」
「わたしもー」
「そうか、大変だったな。それじゃ、お腹が減ってるだろ。パンケーキを、食べさせてやる」
「「やったー!」」
二人はパンケーキと聞いて喜んだが、直ぐにその表情は曇った。
「ママが、けがしてるかも」
「わたしのママもー」
「それじゃ、家に帰ってから食べような」
「「うん!」」
この後、子供達を家まで送った。
◇
不本意だが、怪我を治す為母親に会う事になった。
先に女の子を送り届け、今は男の子の家にいる。
「誤解して済みません。一度ならず二度までも子供を助けていただいて、本当にありがとうございます。それに、私の怪我まで治していただいて」
「気にするな」
今の僕は、姿も声も性格も変えている。
この状況では、自分でも自分の事を怪しいと思う。
しかし、子供が熱心に誤解を解いてくれた。
「パンケーキ、おいしーね」
その子供は今、パンケーキを食べている。
母親の話しを聞くと、女の子の家と同様父親の留守中の犯行だったらしい。
既に父親とは連絡がつき、父親は子供を探しに出ていた。
「それで、どうしても犯人を、教えていただけないのですか?」
僕は自分と犯人の素性を明かさないと、先に伝えている。
「言っても、相手は貴族だぞ。どうにかできるのか?」
「衛兵に、訴えます!」
「証拠は?」
「証拠?」
「訴えても証拠が無ければ、受け付けてくれるか分からないぞ。それに、身分差で証拠も揉み消せる」
「では、あなたが一緒に来てくだされば!」
「そんな面倒事、御免だ!」
「子供達を、二度も助けてくれたのに?」
「うっ! それは、面倒の種類が違う」
「そんな!」
「兎に角、俺のやれる事はここまでだ。また、攫われないよう気を付けるんだな」
「そうですね。暫く、親戚の家に身を隠します」
子爵邸に《結界》を張った事は、伝えなかった。
今日のような事もあり完璧とは言えないし、何より能力を明かしたくなかった。
「じゃあな」
「おじさん、いっちゃうの?」
「ああ」
「ぼくがつかまったら、またたすけてくれる?」
「どうだかな」
一生、助け続ける事は不可能だ。
安易に、約束はできなかった。
「そうなの? ひっぐ、ひっぐ、びえーん!」
「おっ、おいおい、冗談だ。助けてやるよ」
「ほんとに?」
「本当だ。だが、もう捕まらないでくれよ」
「うん!」
僕は子供の涙に、守れるか分からない約束を、させられてしまった。
「俺は、行くぞ。じゃあな」
「うん。バイバイ!」
母親も頭を下げて、僕を見送ってくれた。
僕は子供に泣かれて、思わず素の自分が出そうになり、急いでその場を去った。
◇
翌日の午後、子爵邸を訪れると騒がしかった。
屋敷の回りに、大勢の人がいた。
隠れて話しを聞いてみると、どうやら王城から来た調査隊ようだ。
子爵が、《救助依頼》を出したらしい。
「これじゃ、手が出せなくなったな」
念の為、誘拐された子供がいないか確認したが、今回はいなかった。
「それじゃ、帰るか」
僕は《嫌がらせ第二段》をする事なく、子爵邸を去った。
せっかく王都まで来たので、喫茶店に寄った。
コーヒーを飲んでいると、他の席から気になる会話が聞こえてきた。
「おい。コロネ子爵の屋敷が、おかしな事になってるらしいぞ」
「俺も聞いた。何でも、屋敷から出られないんだってな」
「ああ。だがおかしな事に、全員じゃないんだとさ」
「不思議な事も、あるもんだな」
「それで、王城に救助依頼を出したらしいぞ」
「いったい、何があったんだろうな」
「俺には分からん」
「何かの仕返しかな?」
「そうだな。いい噂は、聞かないからな」
『ここまで、噂が広がってるのか。随分、早いな。それに、悪い噂もあるのか』
僕はコーヒーを啜りながら、そんな事を考えていた。




