第十六話 ニコルの嫌がらせ第二段
朝食後、眠い目を擦りながら、ルークを迎えに行った。
「おはよう、ルーク。昨日は、良く眠れたか?」
「おはよう、ニコルにいちゃん。ちゃんと、ねむれたよ。ふとんがフカフカで、きもちよかった」
「そうか、良かったな。今日は村の子供達に、紹介するからな。仲良くするんだぞ」
「うん。わかった」
「ここは王都に比べると、随分田舎だろ」
「うん。はたけばかりだね」
「この村は、好きになれそうか?」
「うん。しずかでのんびりしてるところが、いい」
「ルークは賑やかなところより、こういうところが好きなんだ?」
「うん」
「昨日はカシムさんやアンナさんから、どこに住んでたか聞かれたか?」
「うん。でも、『分かんない』っていった。そして、『プラークまちのニコルにいちゃんのいえからきた』っていった」
「そうか。ちゃんと、約束を守ってくれたんだ。嘘をつかせて悪いな」
「いいよ。やくそくだからね」
話しながら歩いていると、僕の家に到着した。
「ここが僕の家で、あっちが昨日ルークが行った家だ。父さん達が住んでいて、一階は村に一軒しかないお店になってる」
「そうなんだ。どっちも、おっきいね」
「まあな。カシムさんの家と、比べたらな」
扉を開けて、図書室兼教室に入った。
「子供が、いっぱいいる!」
「一階の部屋を、子供達の勉強と読書ができる場所にしてるんだ。大人も、よく来るけどな」
「へー」
「ルークは、字が読めるのか?」
「よめないよ」
「ここにある本は、村人なら自由に読んでいいんだ。だけど、字が読めないとな。今度、教えてやる」
「うん!」
最近、子供達は文字や算数を覚え、母さんが教えに来る機会が減った。
今は、週に二日になっている。
時間があれば、僕もここの様子を見に来ている。
「ニコルお兄ちゃん、おはよー!」
「兄ちゃん、おはよー!」
「ニコちゃん、オハー!」
「みんな、おはよう」
「ところで、その子だあれ?」
「「「「「「「だれだれー!」」」」」」」
みんなルークの事が気になったのか、集まって来た。
「この子は、ルークだ。昨日から、カシムさんの家に住んでる。仲良くしてやってくれ」
「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」
「ルーク。お前からも、挨拶だ」
「うん。ルークです。ぼくと、トモダチになってください」
「「「「「「「「いいよー!」」」」」」」」
この後、村の子供達の自己紹介が行われた。
ルークも村の子供達も人見知りせず、最初から打ち解けていた。
「これなら、大丈夫だな」
僕は暫く、子供達の様子を窺っていた。
「ニコちゃん、えほんよんで」
「自分で読めるように、なっただろ」
「いいの! よんで!」
「分かったよ。読んでやる」
「やったー!」
こういう風に、よくせがまれる。
だが、決して嫌な訳ではない。
「ニコルお兄ちゃん、後で勉強見て」
「ああ、後でな」
母さんがいなくても、ちゃんと勉強をしている子供もいる。
「兄ちゃん、剣術やろうよ」
「ああ、勉強を頑張ったらな」
「ちぇっ!」
剣術や遊びを、ねだる子もいる。
母さんがいない時は、基本的に何をしても自由なのである。
◇
お昼が近くなり、ルークに声を掛けた。
「どうだルーク。楽しいか?」
「うん。たのしい」
「僕がいなくても、みんなと仲良くなれるな」
「だいじょうぶ。みんなやさしい」
「そうか。お昼ご飯はどうする?」
「アンナおばさんが、つくってまってるって」
「そうなんだ。それじゃ、家まで送るよ」
「うん」
こんな会話をしていると、他の子供達が家に帰り始めた。
「兄ちゃん、ご飯食べてくる」
「私もー」
「ニコちゃん、バイバイ!」
この後、ルークをカシムさんの家に送った。
「僕は午後、用事があるんだ。出掛けるかもしれない。困った事があったら、隣りのお店に行ってみろ。母さんがいる」
「うん」
「午後は、一人で来れるか?」
「うん。ちかいから、だいじょうぶ」
ルークを送り届けると、シャルロッテに食事を与え、シロンと一緒に自宅で食事を済ませた。
ちなみに、スーパーは営業中なので、お昼は自宅でとる事が多かった。
◇
今日は朝から、子爵邸の様子が気になっていた。
「子爵の屋敷、今頃どうなってるかな。でも先に、あれを作るか」
しかし、僕は様子を見に行く事をせず、ある物を作成する事を優先した。
「《嫌がらせ第二段》に使う魔道具」
そう言いつつ《亜空間収納》から取り出したのは、アルフォードから取り上げた《隷属の首輪》だった。
だからと言って、子爵を《奴隷》にする訳ではない。
この魔道具の仕様を参考にして、別のアイテムを作るつもりだ。
まず、隷属の首輪に刻印されている魔方陣を、錬金術の《魔道具プログラム作成》の能力で解析し《フローチャート化》する。
そして、そのフローチャートを弄って、違った効果を発揮させる。
「こんな感じでいいかな。それじゃ、魔方陣に変換して保存と」
プログラムの魔方陣ができたので、今度は《ハード》の作成に取り掛かった。
「材質は、《ミスリル》でいいな」
ミスリルのインゴットを《亜空間収納》から取り出し、形を成形していった。
「よし。次は、魔方陣を刻印だな」
先程作った魔方陣を、成形した物体に刻印する。
「魔石は、オーガあたりでいいか。魔導石もいるな」
動力の源となる魔石と魔導石を、魔方陣の中央に置き吸収させる。
「よし、できたぞ」
僕が《隷属の首輪》を元にして作ったのは、《悪事矯正リング》である。
これを身に着け悪事を働こうと思考すると、電流が流れる仕組みになっている。
電流は装着した人のレベルによって、その強さは比例する仕様だ。
魔力は本人から吸収して魔導石に溜めるので、装着者が生きているかぎり有効である。
このリングは脱着時に収縮可能なので、首・手首・足首に使用可能だ。
そして、無理矢理取り外そうとした時にも、電流が流れる仕組みになっている。
「これを着けて、少しは真っ当な人間になってくれればいいんだけど?」
いくつ必要になるのか分からないので、この後大量に《複製》した。




