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第十二話 ニコルの気苦労

子供達を送り届けた後、僕は一人残った子供の処遇に困っていた。


「お前、知り合いはいないのか?」


「いないよ」


「教会には、行ったのか?」


「いってない。どうして?」


「教会なら、助けてくれるかもしれない」


「そうなの?」


「まあな。あと孤児院に、行くという手もある」


この子に行く気があれば、エーテル街のリンゼさんに預けようと思っている。


「んー、こじいんってよくわかんないけど、おじさんといっしょがいい」


「おじさんって・・・、まあしょうがない。それで、何で俺と一緒がいいんだ?」


僕は今、死んだ二十五歳当時の姿に変装していた。

『おじさん』という言葉に動揺したが、話しを続けた。


「おじさんは、たすけてくれたし、おいしいものたべさせてくれた」


この子にとって、今頼りになるのは、僕だけなのかもしれない。

大変だが、腹を括るしかなかった。



「俺は仕事で旅に出るから、いつも一緒にはいられない。俺の親に預けるけど、それでもいいか?」


「・・・・・」


僕の言葉に、ルークは考え込んでしまった。


「俺の父さんと母さんは、優しいから心配しなくていいぞ」


「うん、わかった」


「そうか、良かった。それと、俺には秘密があるんだが、誰にも言わないって約束できるか?」


「ひみつ? わかった。やくそくする」


「それじゃ、その秘密を教えるぞ」


「うん」


「俺は今、変装をしている」


「へんそうって、なに?」


「そうだな。顔が違う人になるって言ったら、分かるか?」


「うん。でも、かわっちゃうの?」


「見せてやるから、場所を変えるぞ」


「うん」



人目に着かない場所に移動し、僕は変装を解いた。


「わっ!」


「これが、本当の姿なんだ。名前は、ニコル。この事は、誰にも言うなよ」


声質と口調も、元に戻した。


「わかったよ。ニコルにいちゃん!」


呼び方が、おじさんからにいちゃんに変わった。

少し、嬉しい。



「それで、お前の名前は?」


「ルーク!」


「ルークか。格好いい名前だな」


「そお?」


ルークは、少し照れていた。


「歳は?」


「五歳」


「そうか。まだ、五歳なんだ」


「ニコルにいちゃん。なんか、こえとしゃべりかたもかわったね」


「そうだな。こっちが、本当の僕だ」


「なんでかえるの?」


「みんな一人一人、顔と声が違うだろ。顔が変わったら、声も変えなきゃ」


「そうだね」


苦しい回答だが、ルークは納得してくれたみたいだ。


「それじゃ、僕の家に行くぞ」


「うん」


「《睡眠》」


不意を突いて眠らせてしまったが、この後使う《転移魔法》を見られたくなかった。


「《転移》」


僕はとある事情により、一度プラーク街の別荘に転移した。



「ルーク、起きろ」


「あれっ、ボクねちゃったの?」


「魔法だ」


「まほう? そういえば、ろうやをでるときもねたよね」


「あまり、深く考えるな。いろいろと、僕にも事情があるんだ」


「ふーん、そうなんだ」


ルークは追求する事無く、素直に受け入れてくれた。



「ここは、プラーク街の僕の家だ」


「えっ、おうとじゃないの?」


「まあな。ルークが寝ている間に、連れて来た」


ルークは、不思議そうな顔を浮かべた。


「これから、もう一つの家があるエシャット村に行く」


「ニコルにいちゃん。ふたつも、いえがあるんだ」


「まあな。それでルーク。頼みがあるんだ」


「なあに?」


「エシャット村に着いたら、プラーク街の僕の家から来たって言って欲しいんだ」


「なんで?」


「いや、いろいろと言えない事情があってだな」


僕がこんな回りくどい事をしているのは、《転移魔法》の事を内緒にしているせいだ。

村人で知っているのは、父さんだけだった。


ルークが正直に言ってしまったら、僕が一日でエシャット村と王都を往復している事がバレてしまう。

どう誤魔化しても、辻褄が合わない。


どこまで誤魔化せるか分からないけど、ルークが協力してくれない事には始まらなかった。


「ふーん、そうなんだ」


「頼む、ルーク!」


僕は手を合わせて、懇願した。


「うん、分かった!」


どうやら、ルークは素直で良い子らしい。

見た目も、可愛らしかった。


そう言えば、攫われた子供達は、全員可愛らしかった。



「それじゃ、ルーク。どこから、来たんだ?」


「プラークまちの、ニコルにいちゃんのいえ!」


「おっ、ちゃんと覚えてるな。偉いぞ」


「えへっ!」


「もう一回、言ってみようか。どこから、来たんだ?」


「プラークまちの、ニコルにいちゃんのいえ!」


「おー、凄い。それじゃ、エシャット村に着いたら、頼んだぞ」


「うん!」


この後《亜空間ゲート》を通って、エシャット村に帰った。


子供達を救出するより、能力を隠す方が大変だった。

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