第四十一話 コカトリス
2020/10/26 ルチアナ義姉さんの出産を追加し、一部内容を修正しました。
プラーク街を案内した翌日、僕は自宅で休んでいた。
毎日案内するという訳ではなかったので、救われた気分だ。
するとその日の午後、父さんが僕の家にやって来て、狩猟班の事で話しがあると言い出した。
「ニコル。狩猟班の残りの五人も、ダンジョンに行きたいって言いに来たぞ」
「あれ? ダンジョンは危険だからって、妻帯者は行かないんじゃなかったの?」
「いやな、ニック達がたいした怪我もせず、成果を上げてるだろ。どうやら、対抗心を燃やしたらしいんだ」
「そうなんだ。僕は同行できないけど、装備や道具は提供できるよ」
「ああ、それで構わない。面倒は、ニック達に任せる」
「うん、頼むよ。それと、ニックさん達には言ってあるけど、大怪我をしたくないならあまり奥に行かないよう注意してね。《ウーシ》あたりから、かなり危険だから」
「ああ、分かった。俺から、言い聞かせる」
後日、残りの狩猟班を集めて、装備や道具を手渡す事になった。
ダンジョン組の人数が増えれば、僕がわざわざ狩りに行く必要は無くなりそうだ。
◇
野鶏の方も、進展があった。
「ケイコ。この雛達は、連れて行っていいのか?」
「コケー!」
「ご主人様、どうぞって言ってるニャ」
僕は暇を見付けては、ケイコにトウモローコシを与えに来ていた。
その間、ケイコは約一日に一個のペースで、たまごを産んだ。
たまごを十一日掛けて十個産み終わると、まとめて温めに入った。
そのたまごは二十一日後、孵化する事となった。
「くー! スキルで僕に服従だからって、文句も言わず子供を差し出すのか!」
僕は右腕で両目を押さえ、涙を堪えた。
他の野鶏とは違い、僕に懐いたケイコの子供だと思うと辛くなった。
「ご主人、まだそんな事言ってるニャ」
「だってさー、ひっく」
今にも、涙がこぼれそうだった。
「そんな事言ってたら、家畜なんて一生食べれないニャ」
「ううっ。シロンの言う事は、もっともだ」
僕はケイコの子供十羽を鑑定し、雌の雛六羽をエシャット村に持ち帰った。
「ダリルさん。野鶏の雛を、連れて来たよ」
「ニコルか。街案内で忙しいのに、大変だな」
「ええ、まあ。それで、この六羽別に育てて欲しいんですけど」
「それは構わないが、どうしてだ?」
「この雛は全て雌で、育てば沢山たまごを産むかもしれないんです」
「そう言えば、まだ産卵の時期には早いな」
「そうなんです。それで、この雛達はたまご採取を目的に、育てて欲しいんです」
「そうか、分かった。やってみるよ」
僕は情が移り、せめて長生きできるようにと思っての配慮だった。
それに、狩猟班がダンジョンに行くようになり、肉は何とか確保できそうだった。
たまごはノーステリア大公爵領で仕入れてるが、上手くいけばその必要も無くなるかもしれない。
僕はダリルさんに雛を託し、養鶏場を後にした。
◇
その後、プラーク街の案内役を精力的にこなした。
父さんからは、『希望者全員、一度は案内してやってくれ』と頼まれている。
同じ場所を何度も案内するのは、正直しんどかった。
二月下旬になり、妊娠中のルチアナ義姉さんが無事女の子を出産した。
女の子は、『ジーナ』と名付けられた。
親であるジーク兄さんとルチアナ義姉さんの名前から、父さんが思いついた案が採用された。
お祝いに赤ちゃん用のベッドと服をあげたら、凄く喜んでくれた。
とうとう僕も、叔父さんになってしまった。
三月下旬になり、ようやくプラーク街の案内役の任は解かれた。
基本のんびり過ごしたいのだが、何だかずっと忙しい気がする。
◇
四月になり、僕は十七歳になった。
身長も四センチ伸び、百七十九センチになっていた。
「時間に余裕もできたし、《コカトリス》を手に入れに行くかな」
僕は早速、プラーク街のダンジョンに向かった。
今までは村で安価で売れる食材を狩っていたので、ダンジョンの奥へは行ってない。
初級者向けダンジョンなので、大ボスのコカトリスまでは、シロンが変装したクロンも活躍していた。
「シロン、コカトリスはちょっと厄介なんだ。シャルロッテと、待っててくれないか?」
「ご主人と、一緒に行きたいニャ」
「コカトリスに、石にされちゃうぞ」
「それは、嫌ニャ」
シロンはその一言で諦め、《亜空間農場》で待機する事になった。
コカトリスは《石化》の攻撃を仕掛けてくるので、万が一の事を考えての配慮だった。
とは言うものの、僕は自らをその危険に晒す実験の為、一人でボス部屋へ突入した。
「うわっ、でかいな」
「グギャーーー!」
コカトリスは対峙すると、いきなり石化の息を吐いた。
僕はその攻撃を避けず、わざと受けた。
『ピカー!』
僕の体が光り、石化攻撃をレジストした事を示した。
「このネックレス、ちゃんと効いてるな。実験とはいえ、石化攻撃をまともに受けて、内心冷や冷やだよ」
《状態異常耐性》のネックレスを苦労して作ったので、魔物相手に効力を確かめたかったのだ。
その後も石化攻撃を受けてみたが、異常は見受けられなかった。
「よし! 実験はもういいや」
ネックレスの効果を確認すると、五メートルを越えるコカトリスの巨体を駆け上り、魔力を込めた魔鋼の剣で首を一線した。
「ギャーーー!」
首は『ドスン』と落ち、コカトリスは白い光りに包まれた。
そして、光りの中から現れたのは、首の繋がったコカトリスの死骸だった。
「こんなでかいの、ドロップするのかよ」
良く見ると、コカトリスの横には小さな宝箱があった。
「宝箱もあるのか。中身は何かな?」
宝箱に近付き、その蓋を開けてみた。
「袋? ただの袋じゃないよな。鑑定してみるか」
宝箱の中には袋が一つあり、鑑定してみた。
「やっぱり、魔法袋か。しかも、特大サイズだ。コカトリスを持ち帰るには、丁度いいな」
たぶん、コカトリスを持ち帰るのに、ダンジョンが気を利かせてくれたんだと思う。
ダンジョン産の魔法袋は、売ればかなりの高額になる。
それは、コカトリスも同様だった。
「取り敢えず、《亜空間収納》にしまっとこう」
お金に困っている訳ではないので、コカトリスを売るつもりはない。
どちらかと言うと、どんな味がするのか凄く興味があった。
「さて、帰るかな」
目的を果たしたので、僕は帰ろうとした。
すると、目の前に突然人が現れた。




