第三十九話 亜空間ゲートの噂、広まる
ニックさん達は、狩猟班だけあって狩りに慣れていた。
初めてサジ達を、ここに連れて来た時とは違った。
逃げ回るニーワトリを追い詰め、次々と狩っていった。
「よし、そっちに追い詰めるから、準備しとけ!」
「任せろ!」
「おらおら、待てー!」
「とりゃ-!」
「コケー!」
「やったぞー!」
「今回のドロップ品は、たまごか。やったな」
ニーワトリのたまごは美味しいと、エシャット村で人気が高かった。
「流石、狩猟班ですね」
「ははっ、森でもこれだけ狩りができてたら、ダンジョンに来る必要は無かったんだけどな」
ニックさんは、自虐を放ちながら謙遜していた。
◇
五日目になり、僕達は一旦ダンジョンを出た。
いつまでも、狩りに付き合ってる訳にいかなかった。
「クルートとウェンディとミーリアは、元の仕事に戻るんだな」
「「「うん」」」
「それじゃ、お土産だ」
「やったー!」
「ありがとう、ニコルちゃん」
「兄ちゃん、ありがとう」
今回三人は、狩猟班の手伝いという事で来ていた。
その間の給料は村から支払われるので、僕からの報酬はドロップ品だけに留めておいた。
「ニコル。いろいろと、ありがとうな」
「ありがとうだぜー」
「ああ、明日からは僕はいないんだ。無茶をするなよ」
「分かってるよ」
「安全第一だぜー」
ダンジョンにいる間、これからの事を考えて、道具をいくつか提供した。
折り畳みテントと、《照明》と《結界》の魔道具。
それに、《生活属性魔法》の《清浄》機能の付いた、体と便器の汚れが消滅するという《個室トイレ》。
ダンジョンを先に進むには必要だと思い、宿泊に必要な物を選んだ。
質の悪い奴に知られると、襲われる危険性がある事も言い含めてある。
「それじゃ、みなさん。明日から、くれぐれも怪我をしないでください」
「ああ、ありがとう。ニコルのお陰で、何とかやって行けそうだ」
「「「「ありがとう、ニコル」」」」
ニックさん達狩猟班は、父さんへの報告と獲得したドロップ品を渡しに行った。
◇
数日後、エシャット村ではプラーク街や《亜空間ゲート》の噂が広まった。
美味しい屋台が沢山あると聞いて、村人達は沸き上がっていた。
当然、そんな便利な物があるなら、プラーク街に行ってみたいという人が続出した。
この噂を広げたのはウェンディなのだが、内緒にした訳ではないので責めるつもりはない。
父さんはスーパーに集まった村人達に、説明する事になった。
「プラーク街のダンジョンのドロップ品は、スーパーの店先に並んでいるからみんな知ってるだろう」
「ええ、知ってるわ。あの美味しい野菜や果物や肉ね」
「そのダンジョンへ狩猟班が行きたいという事で、ニコルがいろいろと手を尽くしてくれた」
「また、ニコル君なのね」
「ああ、エシャット村とプラーク街を、一瞬で行き来できる魔道具を提供してくれた」
「何だそれ。そんな事が、本当にできるのか?」
「俺も一回、ニコルが買ったプラークの家に行って来た。狩猟班も既に使ってる」
「ウェンディちゃんの話だと、美味しい屋台がいっぱいあるって言ってた。私も行きたいわ!」
「私も!」
「俺もだ!」
「みんな行きたいのは分かる。だが、使用するにあたってルールを決める」
「そのルールって、何?」
「それは次の会合で、正式に伝えるから待ってくれ」
「「「「「えー!」」」」」
この場にいない人もいるので、父さんは全部を伝えず、会合で正式に伝える事にした。
◇
後日、村の会合が開催された。
その会合はいつもより規模が大きく、各家庭の代表が集められた。
そこで伝えられた《亜空間ゲート》の使用ルールは、次のような内容だった。
第一に、《亜空間ゲート》の事は、他所で他言無用。
次に、ぞろぞろ行くとプラーク街で目立つので、一日の使用人数は八人まで。
最後に、使用時は帳簿に記帳し、当面は日帰りで、一往復するのに一人千マネーの料金を徴収する。
その後、質疑応答等があり、順番はくじで決める事となった。
「という訳で、ニコル。みんなの面倒を、見てくれないか?」
「やっぱり、そうなるよね」
「村から、出た事のない連中ばかりなんだ。お前がいれば、安心だろ」
「分かった。暫く、付き合うよ」
こうして僕は、ツアーコンダクターみたいな事を任せられた。




