食事会のスタートですよ
店内は普段利用している食堂の二倍ほどの広さで、案の定多くの人で賑わっていた。
二人の姿を探していると、奥のテーブル席からこちらに手を振っている人物が視界に入る。
「お待たせしました。昼にギルドで会った時もそうですが、よく私達だと気が付きましたね。」
「私、昔から勘だけは鋭いんだよ。それより二人とも早く座って座って!なに食べる?ここは酒のつまみが最高にうまいよ!」
「シャロン!少しは落ち着きなさい!二人が困ってるでしょう!」
相変わらずの勢いに思わず圧倒されてしまう。
この二人はいつもこんな感じなのだろうか。
ひとまず席に座り、まずは自己紹介をする。
私の名前は知られてしまったが、アリア様だけでも偽名で突き通すつもりだ。
「改めまして、私はセレナです。それから隣の子が、」
「………………リリアよ。」
アリア様、溜めが長いです。
緊張しまくっているアリア様に内心苦笑しつつ、慌ててその場を誤魔化す。
「すみません。リリアはかなりの人見知りでして…。」
「そうだったんですね。緊張しなくても大丈夫ですよ。」
アリア様に向けて話すクレアの声は、シャロンと話している時とは打って変わって穏やかだ。
腰に届きそうなほど長い黒髪は高い位置で一つに結い上げられ、ふわりと微笑む姿は大人びた雰囲気がある。
「二人ともよろしくね〜。それじゃあとりあえず飲み物を頼もう!みんな果実酒でいいかな?」
「あっ、すみません。リリアはまだ15歳なのでジュースでお願いします。」
飲酒が許されているのは16歳からだ。
厳しく取り締まられているわけでもないのだが、今の私はアリア様の保護者的な立ち位置でもあるため、そういう所はしっかりとしなければ。
「ええ!リリアは私の一個下なの!?てっきり同い年だと思ってたよ〜。じゃあ他の3人は果実酒でいーよね!」
そう言ってシャロンは店員に飲み物と適当に選んだ料理を注文した。
アリア様が一個下だということは、シャロンは16歳のようだ。
たしかにアリア様よりも少しだけ身長は高いが、肩下ぐらいの長さしかない茶髪と気さくな喋り方から、もう少し幼いかと思っていた。
その後も話を続けていて分かったが、どうやらクレアは18歳で私と同い年らしい。
シャロンと喋っている時の彼女はわりと感情的だが、普段は落ち着いた性格のようだ。
やがてテーブルの上には注文した品々が次々に並べられていく。
シャロンは随分とたくさん注文していたようだ。
隣に座るクレアの顔が若干引きつっているのが見える。
「おっ!きたきたー!!んじゃ乾杯しよっか!」
「乾杯する意味なんてあるのかしら…。」
「リリアは冷めてるねえー。宴会はこれやらなきゃ始まらないでしょ!ほら!かんぱーい!」
シャロンの勢いに引き気味のアリア様に笑いつつ、四人でジョッキを合わせる。
アリア様の緊張も少しずつではあるが解けてきているようだ。
屋敷の者以外とは関わることなく生きてきたアリア様には、友人と呼べるような人物はいなかった。
せっかく知り合えたのだから、二人と仲良くなってくれればいいのだが。
私は密かにそう考えつつ、ぐいっと果実酒を喉の奥に流し込んだ。




