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平民侍女は引きこもり令嬢を更生させたい  作者: いとまる。
ラズティア王国編
29/39

名前が知りたいのですよ





「……はい、討伐証明を確認しました。お二人はこれでEランクに昇格となります。Dランクの依頼も受けることが出来るようになりますが、くれぐれも自身の力量に合わせた依頼を受けるようにしてくださいね。」

「ご忠告ありがとうございます。」


ギルドの受付カウンターにて討伐証明を提出し、報酬金を受け取る。

余った角と魔石は既にギルド内の買取カウンターにて売却済みだ。


「一日で結構稼ぐことができましたね。この調子ならこれから先もなんとかやっていけそうです。」

「そうね。…Dランクの依頼で多いのはゴブリンの討伐だったかしら?そのくらいまでなら私でもやれそうね。」

「ゴブリンは単体ではそれほど脅威ではありませんが、群れとなると厄介な魔物です。念の為、明日は一日休んで次の日から依頼を受けることにしましょう。」


アリア様が戦えることは分かったが、実際に戦闘をするのは今日が初めてだろう。

疲れが残ったまま新しい依頼を受けるのは危険である。

屋敷から逃げ出して以降、ゆっくりと身体を休めることも無かったし、ちょうどいい機会だ。


すっかり暗くなった空を眺めながら、その日はまっすぐに宿へと戻った。






「あ!お客様!おかえりなさいませー!今日もご飯を食べていきますか?」

「ただいま、アーニャ。うん、席は空いてるかな?」

「はい!こちらのテーブルにどうぞですー!」


ニコニコと笑顔のアーニャに案内され、テーブル席に腰を下ろす。

宿の下に食堂があるのはとても便利で、食事はほとんどここで済ませるようになっていた。

適当に何品か注文して料理が運ばれてくるのを待っていると、ふいにアーニャがこちらへ近付いてくる。


「アーニャ、どうかしたの?」

「…お客様は冒険者様なんですか?」

「?えっと、そうだよ。」


突然の質問に戸惑うが、隠すことでもないので正直に答えると、途端にアーニャは目をキラキラと輝かせた。


「わあ!すごい!アーニャ、女の人の冒険者様は初めて見ます!!そっちのお客様もそうなんですか!?」

「………そうよ。」

「わああああ!かっこいい…!!」


純粋無垢な視線を向けられ、戸惑いながらも返事をするアリア様に笑ってしまった。

それに気付いたアリア様にキッと睨まれてしまうが、それすらも微笑ましく感じてしまう。


「アーニャ。お客様に迷惑をかけたらダメだろう。」


すると、どん と目の前のテーブルに料理が置かれ、女主人がアーニャを窘(たしな)めた。


「すまないねえ。この子は好奇心が旺盛過ぎるんだ。」

「ふふっ、私達は大丈夫ですよ。」


料理が美味しいのはもちろんだが、ここで食事をする理由の一つとして、アーニャに癒されたいという目的があるのは否定できない事実だ。

元気いっぱいに話しかけてくる姿は癒しでしかない。


「アーニャ、お客様達のお名前を知りたいです!」

「こら!アーニャ!あんまりお客様を困らせるんじゃないよ!」

「名前くらい構いませんよ。アーニャ、私がレーナでこっちがリリアだよ。」

「レーナさんとリリアさん…!素敵なお名前です!!アーニャ、お二人のこと好きです!」


満面の笑みで言うアーニャの姿に、頬が緩むどころがこのまま垂れ落ちてしまいそうだ。

いつか悪人に狙われてしまうのではと心配になるぐらい純粋で可愛い子である。


「あはは、ありがとう。」

「えへへー!あっ!他のお客様が呼んでるので行ってきますね!」


そう言うとアーニャは小走りでその場から立ち去った。

女主人はその姿を見て小さくため息をつき、申し訳なさそうに話し始めた。


「あの子の相手をしてくれてありがとうね。女手一つで育ててきたから、寂しがり屋なあの子は人に懐きやすいんだ。」

「いえいえ、私達もアーニャから元気をもらっていますので。」

「まだまだ半人前だが、愛嬌だけは一人前だからね。さあ、料理が冷めないうちに食べちまっておくれ。」


女主人は照れたように笑うと、再びカウンターへと戻っていった。

さっそく食べ始めようと料理に手を伸ばすが、ふと視線を感じてそちらに目を向ける。


「……アリア様?」

「ん、なんでもないわ。…いただきましょう。」


アリア様はじっとこちらを見つめていたかと思うと、すぐに食事を開始してしまった。

思わず首を傾げるが、女主人の言う通り料理は冷めないうちに食べてしまわないと味が落ちてしまう。



夕食を終えて部屋に戻った私達は、初めての依頼による疲れからか、その日はすぐに寝てしまったのだった。


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