その5
「賢児さま、コーヒー、お取替えしますね」
急な休日残業も一段落して帰宅しようとした玲香は、その前に、もう少し残業を続けるからと言う賢児にコーヒーを淹れておこうと思い、カップを下げようとしていた。
賢児のデスクから、そっと、お盆にカップを載せたそのとき、賢児のスマホがけたたましく鳴った。
「はい。あ、親父? どうしたの」
次の瞬間、少し離れたところにいた玲香にも聞こえてくるぐらいの音量で、電話の向こうの主が怒鳴っていた。
「ちょっと待てよ。何なんだよ、順番てさ」
耳から離したスマホの通話口から、再び怒りの声が聞こえてくる。
「いろいろ事情はあるんだろうが、私や涼一にちゃんと話をしてからというのが筋だろ!」
「だからさ、何の話だよ。え? 帰宅時間?……そうだな、5時半くらいかな……あ、ちょっと、ちょっとってば、親父!」
わけがわからないといった様子で、ため息混じりに首を振る賢児。そんな彼をキッチンブースのアコーディオンカーテンの隙間から窺っていた玲香は、賢児の視線が、隙間から目を凝らしている自分のほうを向きそうなのに気づき、慌ててブースから出てきた。
「わけわかんないよ。何なんだよ、親父のやつ…」
「どうかなさったんですか? 何かお怒りのご様子でしたけど」
「うーん。よくわかんないけど、俺が何かしたらしい」
心配そうな顔をしながら、玲香は賢児のほうに一歩近づいた。
「何か誤解でもあったんでしょうか。お帰りになってお話になれば、きっと大丈夫だと思いますけど」
賢児はスマホのストラップを指に掛け、ぐるんぐるんと回した。
「帰ったら親父の説教だな。理由わからないと気持ち悪いなあ。…たまったテレビの録画でも、ゆっくり見ようかと思ってたのに」
「あーーーーっ!!」玲香が叫んだ。
「ど、どうした?」
「い、いえ、あの…すみません、大きな声を出して…」
“うわあ、やっちゃった。録画予約し忘れた。まずいわ、これはまずい。どーしよ…”
玲香が制作部にいたときの先輩、芦沢が先月結婚したのだが、その結婚式がちょっと変わったものだったために、彼の友人がディレクターを勤めるテレビ番組で取り上げられていた。
玲香は、明日の日曜日に彼女の家で行う予定の同期入社の同僚達との飲み会のときに、その録画を見せると約束していたのだ。
“5時からのニュースの特集だっけ。確か番組冒頭数分だと言っていた。急いで帰っても終わっちゃってるだろうな…”
「何かまずいことでも思い出したか?」
「実は…」玲香は泣きそうな顔で事情を話した。
「そうか……ちょっと待ってて」
賢児は手に持っていたスマホでどこかに電話をかけた。
「あ、龍か?…あのさ、今日5時からの千代田テレビの録画をお願いしたいんだ。……うん、それ。で、撮り終わったらDVDにダビングしておいてくれるかな。……悪いな。サンキュ」
電話を切ると、賢児は玲香のほうを見てOKサインを出した。
「龍に頼んだから大丈夫だよ。これから家に寄ってDVD持ってけばいい」
「ありがとうございます!」玲香は恐縮しながら、深々と頭を下げた。
「助かりました。本当にありがとうございます。すみません、お手数おかけして」
「あはは。お礼は龍に言って。…そう言えば、会うの初めてだっけ?」
「はい。ですが、電話ではお話したことがあります。昨日、賢児さまにお届けものをされるというご連絡をいただいたときに。お話はよくうかがってましたから、すぐにわかりました。残念ながらお会いすることはできませんでしたが、とても利発そうなお子さんで…」
賢児は玲香の言葉に、うれしそうに笑った。
「だろ? 本当に賢くてさ、あいつ。しかもとびきりのイケメンだぜ」
「賢児さまよりもですか?」
「俺なんて比較にならないよ。本当に綺麗な顔立ちしてるんだ」
“しまった。賢児さまがさらっと流してくれたので助かったけど、これじゃ面と向かって、あなたはめっちゃカッコイイですよと言っているのと変わらない”
「じゃあ、帰り支度始めようか。…いや、正直言うとさ、玲香が来てくれると助かるよ。親父も初対面の人間の前で、いきなり説教とかないだろうしさ。ちょっとクールダウンさせるきっかけになるっていうか」
「そう言っていただけると…少し気が楽になります」玲香は恥ずかしそうにうつむきながら微笑んだ。
「そうそう。例のすんげえカワイイ妹のほうも見て行ってくれ。お転婆でマイペースだけどな」
「はい」
“賢児さま、うれしそうだ。きっとその子たちのことを、すごく可愛がっているんだろうなあ。妹さんのほうは紗由ちゃんだっけ。彼女のほうは写真見せてもらったことがあったけど、確かに「すんげえカワイイ」子だったわよね。会えるの楽しみ”
思いがけず賢児の家に行くことになった玲香は、いろんな意味でドキドキしていた。
* * *
豪邸という言葉は、こういう家を指すためにあるのだろう。
運転席の賢児が「着いたよ」と告げてから、窓の外に見える塀がなかなか途切れない。いったいどれだけ敷地があるのか、玲香には見当もつかなかった。
「一見、すごく広そうでしょ。うちね、縦長なの。塀の向こうはほとんど庭というか畑というか。昔は近隣住民が勝手に栽培して勝手に収穫したりてしたんだけど、家のほうまでやって来る人間が後を絶たなくて、家の周囲の畑ごと塀で囲んじゃったんだ」
「へえ、そうなんですか」
塀を左に曲がったところは、ちょうど車の幅くらいの細い路地のような一角だった。賢児はいったん車を降り、塀の一部をまさぐったかと思うと、左右に開いた小さな扉の中にあるインターホンで話を始めた。
「田端さん、ただいま。地下開けてくれるかな」
2、3秒で、目の前の門の一部かと思われたスペースが左右に開け、車が中に入れる状態になった。その先は、緩やかな坂になっており、賢児の言うところの「地下」へつながっていた。駐車場には他にも2台の車が停めてあった。だが、まだあと数台は入りそうなスペースがある。
車を降りると、目の前にはエレベーターがあった。
「郊外のスーパーの駐車場みたいですねえ…」
「これは入り口も含めて最近作ったばかりなんだ。親父の就任前にいろいろあったから、防犯対策をそれなりに施してある」賢児が厳しい表情で言った。
会社にいるときの癖で、賢児の斜め前に出てエレベーターのボタンを押そうとした玲香だったが、賢児の言葉に反射的に手を引っ込めた。やたらと触ると非常ベルとか鳴らされてしまうかもしれない。
「なーんてね」
玲香のびくついた様子を見て、賢児はくすりと笑う。
「大丈夫だよ。防犯の仕掛けはかなりしてあるけど、家の周囲を通る一般人や客にすぐわかるレベルのものじゃ、あまり意味ないから」
玲香は再びエレベーターのボタンに手を伸ばした。開いたドアを押さえながら、賢児が中に入った後、続いて入る。
「有名人が身内にいらっしゃると、それはそれで大変なんですね……こんなお宅に住めるなんて、うらやましい限りですけど」
「ここって元々は地元の支援者の人たちからのいただきものなんだよ」
「こんな豪邸を下さる方がいるんですか? 政治家って庶民には想像もつかないことがあるものなんですね」玲香はびっくりして賢児を見上げた。
「いや、親父に対してじゃないよ。その昔、伯母さんがもらった家なんだけど、親父が議員に立ったときに、事務所代わりに提供されたのが最初。伯母さんがいなくなったときに正式に親父のものになった」
「そうなんですか」
そう答えたものの、玲香の頭の中には次の疑問がわいてきた。なぜその伯母さんが誰かから家をもらったんだろうか。伯母さんという方は、もうお亡くなりになっているのだろうか。
気になって仕方が無い玲香だったが、あまり聞くのも立ち入りすぎて失礼かもしれないと思い、その先を確認するのはやめた。
エレベーターは2階で止まった。廊下を何メートルか歩くと、右側に焦げ茶色の重たそうなドアが少し開いた部屋があり、話し声が少しもれてきていた。
「ただいま」
賢児がドアを開いたとき、中にいた5人が一斉に振り向いた。
「おかえり、賢ちゃん!」
「おかえりなさい、賢ちゃん」
「おかえり、賢児」
「おかえり」
“すごい。「おかえり」の部分が重ならずにきれいに続いているみたいに聞こえる”
玲香はつい笑いそうになったが、慌ててガマンした。
“ご挨拶、ご挨拶…と
”
だが次の瞬間、何か妙な空気を感じ、玲香は部屋に入るのを躊躇してしまった。5人全員の視線が、おかえりの言葉とは裏腹に、賢児を通り過ぎ玲香の上に集中していたからだ。
客が珍しい家とも思えないが、ものすごく見られている気がした玲香は、やっぱり夕飯どきにお邪魔したのは失礼だっただろうか、後で賢児が何か言われたらどうしようかと、この場に来たことを少し後悔し始めていた。
「どうぞどうぞ。中へお入りください」
最初に玲香に声を掛けたのは、賢児の父親で現外務大臣の西園寺保だった。長身で端正な顔立ちがマダム達に大人気で、私設ファンクラブまである。玲香の叔母も彼のファンで、国会中継を彼のためだけに毎回録画しているくらいだ。
“うわ。テレビよりもずっとかっこいい。この人、声がまたいいのよね、すごく渋くて”
「ありがとうございます。賢児さまの下で働いております、高橋玲香と申します。突然おうかがいしまして、申し訳ございません」
頭の中でぐるぐる踊るミーハーな感想とは裏腹な言葉を、卒なく並べる玲香。
「いやいや。お気になさらないで下さい。こういうのは、思い立ったが吉日ですから」
保はニコニコしながら、ソファーの一角へ玲香を手招きした。
思い立ったが吉日という表現に何か妙なものを感じながらも、玲香は賢児の後ろに従って、ソファーのほうへ進んだ。
「賢児の兄の涼一です。いらっしゃい」
次に声を掛けてきたのは、賢児の3歳上の兄、涼一だった。眼鏡の奥からのぞく、切れ長の瞳が知的な印象の二枚目だ。
「高橋でございます。失礼いたします」
“これが噂のお兄様か。雑誌で写真を見たときにも思ったけど、今どきの研究者ってこんなにかっこよくてスマートな印象なのね”
研究者に対して、かなり失礼な感想を抱きながら、玲香はお辞儀をした。
「初めまして。涼一の妻の周子と申します」
瞳が印象的なロングヘアーの女性が玲香に微笑んだ。
“何ていうか、目力が強くて、いかにも綺麗な人だなあ。賢児さまってば、こんな綺麗な人と一緒に住んでるんだ。大丈夫なのかなあ…”
何が大丈夫なのか、わけのわからぬ心配をしながら、玲香は頭を下げた。
「初めまして。高橋と申します」
頭を上げたそのとき、3、4歳くらいの女の子が駆け寄ってきて、玲香を見上げた。
「およめしゃんだー」うれしそうに叫びながら、顔全面で笑っている。
“お嫁さん? 誰かと間違えてるのかな”
「さいおんじさゆです。もうすぐ、よっちゅです!」紗由は、右足を前に踏み出すと、右手を前に突き出し、数字の4を示した。
「もうすぐって、まだ2ヵ月以上あるだろ」賢児が笑う。
写真でもかなり可愛かったが、実物はそれ以上だったので、玲香は思わずまじまじと彼女を見つめてしまった。
“お人形のようにかわいいと、よく言うけれど、お人形よりよっぽどかわいい。うわあ、まつげ長いなあ。少し分けてほしいくらい。くりくりのお目目は誰に似たのかしら。ご両親は切れ長系だし。うーん、あんまり見てると吸い込まれそう。
でも、気のせいかな、どこかで会った事があるような…。いや、そんなことはないわね。こんなに可愛い子だったら忘れるはずないもの”
「玲香です。こんばんは」
「れいかちゃんは、およめしゃん。およめしゃん」紗由は自分の言葉に勝手に節をつけて歌いながら、辺りをスキップし始めた。
「紗由、いい子にしてないと駄目だよ」
紗由の手を引いて、自分の横に座らせたのは、紗由よりいくつか上と思われる男の子だった。彼は礼儀正しく深々とおじぎしながら言った。
「玲香ちゃんですね。西園寺龍です。賢ちゃんの甥です。よろしくお願いします」
玲香は釣られるように頭を下げ返した。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。確か昨日、お電話で少しお話しましたよね」
“何だろう。この子を見てると背筋がピンと伸びるというか、ほどよい緊張感が走る。確か、西園寺先生はこの子に跡を継がせる気でいると賢児さまが言っていた。
賢い子なのは一目ですぐわかるけど、人を寄せ付けない感じと、どこか甘えん坊な感じの両方を持ち合わせていて、不思議な吸引力を持った子だ。賢児さまの言ってたとおり、かなりイケメンになりそうなのも確かだし”
「龍。頼んでおいたDVDできてる?」
賢児が言うと、龍は席を立ち、テレビ台の下からケースを取り出した。
「はい、これ。さっき確認もしたから大丈夫だよ」賢児にケースを渡す龍。
「おう。ありがと」
「龍くん、どうもありがとう。助かりました」龍に微笑みかける玲香。
「これ、玲香ちゃん用だったんだ」
「そうなの。今日うっかり録画予約を忘れたまま会社に行ってしまって。本当にありがとうね。これ、明日使う大事なものだったの」玲香はもう一度龍に頭を下げた。
「いや、急な出勤頼んだ俺のせいだから。今日はありがとう」賢児が言う。
「いいえ、とんでもないです。今日だいぶ資料作りが進みましたので、月曜日の会議前に慌てなくて済みますし、かえって助かりました。……あの、お食事時に本当に失礼いたしました。では、私はこれでおいとまいたします」玲香は保たちに向かって、丁寧にお辞儀をした。
「帰るんですか!?」保、涼一、周子の3人が一斉に叫びながら、玲香を見つめた。
「あ、あの…」
彼らの声にびっくりした玲香は、持っていたケースを絨毯に落としそうになった。
“何でこの人たち、私が帰るくらいで、すごく大変なことみたいな反応するんだろう。西園寺家って、お客を30分以内に帰してはいけないという家訓でもあるのかしら”
「どうしたんだよ、みんな。これ取りに来ただけなんだから、用事が済んだら帰るよ、そりゃあ」賢児が怪訝そうな顔で、保たちを眺めた。
すると、賢児の言葉に保が立ち上がり、一歩前に進むと言った。
「“だけ”ってことはないだろ? お前が嫁さんにしたい相手を紹介するというから、こうして皆予定を変更して、ここにいるんだぞ!
夕べだって桐山さんに“賢児さんはそろそろね”なんて言われて、びっくりしたんだからな」
「はあ?」賢児は、ぽかんと口を開けたまま、保を見つめた。
「賢児さま、皆様に誤解が…」
そう言いながら、一番動揺していたのは玲香だった。
“賢児さま、もしかして本当にそういう方がいるの? 何かの事情で、その人と私が混同されちゃったの? 結婚しちゃうの?”
「あのさ、親父。どうしてそんな話になったわけ? 俺、嫁さんにしたい女を紹介するなんて言った覚えないし、そんな状況になったら、普通、前もって親父と兄貴に話して、二人の都合を聞いてから連れてくるだろ?
二人とも忙しいのわかってんだし、いきなり相手を連れてきて、嫁さんにするからよろしくなんて、そんな非常識なことするかよ!」
“ええと、結局、相手はいるのかしら、いないのかしら。桐山さんという方が言っていたのは、どういうことなのかしら。賢児さま、それは説明しないのかしら。先生も、そこは聞かないのかしら”
二人の顔を交互に見ているうちに、紗由がこちらをじーっと見ているのに気づいた玲香は、こんな揉め事の最中に、そんなことを考えている自分が恥ずかしくなった。
「ちょ、ちょっと待て、賢児。……今日は、賢児がそういう相手を連れてくるという話だったよな?」保は涼一に聞いた。
「え……そういう話だったよね?」涼一は周子に聞いた。
「ええ、そうよね、龍?」周子は龍に聞いた。
「うん。紗由が朝からずっとはしゃいでたよ。“今日は賢ちゃんのお嫁しゃんが来るんだよ”って。誰か紗由にそう言ったんじゃないの?」龍は保たちに聞いた。
沈黙がしばらく部屋を包んだ。
「あ。あー、すまない、申し訳ない、賢児。誤解だったようだ。悪かったな、変なこと言ってしまって。…玲香さんも、とんでもないところをお見せして、失礼しました。本当にすみません」保は玲香に向かって長々と頭を下げた。
「紗由、駄目だろ」
涼一が紗由を叱ると、紗由は両手を握り締めて父親に言い返した。
「だめじゃないもん! さゆ、だめじゃないもん!」
“まずい。何か親子喧嘩になっちゃう”
慌てた玲香が言った。
「い、いえ。そんな。お気になさらないで下さい。紛らわしいタイミングでおじゃました私もいけないんですから。…こちらこそ失礼しました」
何か妙な雰囲気というか、自分に興味津々みたいな空気をいぶかしんでいた玲香だったが、そういうわけだったのかと合点がいった。
「別に玲香が謝ることじゃないよ」父親から怒鳴られた不快感からか、賢児は口を尖らせたまま言った。
「玲香ちゃん、ごめんなさい。僕が紗由の言ったことを鵜呑みにしたからいけないんです。…あの、お詫びと言ってはなんですが、一緒にご飯食べていって下さい。お願いします」龍は懇願するように玲香を見た。
“もう「鵜呑み」なんて言葉をちゃんと使えるんだ、この子。すごいな”
「ほんとごめんな。いい歳した大人が何人もいるのに、こんなでさ…。でも、この人たちのことだから、けっこう美味いもの用意してると思うし、飯食っていってくれよ」賢児は、龍の頭をポンポンと撫でながら玲香に言う。
「ええ、ぜひご一緒に」保もすかさず言う。
“長居するとスーパー閉まっちゃうけど、ここで失礼したら、龍くんが後で怒られちゃうかも…。明日の飲み会の料理作るための食材も、できれば今日調達しておきたかったんだけどな。困ったな”
そんな玲香の気持ちと事情を察したのか、賢児が耳元でささやいた。
「今の時期、うち、いろいろと貰い物も多いし、畑の野菜も山ほどあるからさ、帰りに持っていくといいよ」
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えてご馳走にならせていただきます」
電車に乗って野菜を持ち帰るのかと思うと、少々気が引けたが、こんなところで食事なんて、そうそうできるわけじゃないし、かわいい姪っ子から“お嫁さん”と呼ばれたのは悪い気はしなかった。
少し気分が落ち着いたせいか、やや空腹な自分に気がついた玲香は、これからありつけるであろうご馳走に思いを馳せ、にっこりと笑った。
* * *




