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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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48. コリンの後悔

お読みくださりありがとうございます。


コリンさん、少し反省します。

 漸く掃除が終わり、グッタリした母と姉がリビングにやって来た。


 ミラベルは

「はぁ……何とか片付いた……疲れた~……」

 とクロエが座ってる横にドサッと倒れ込む。


 母は

「着替えさせなきゃ……コリンのとこに行ってくるわ……」

 とふらつきながら、リビングからトイレに向かった。


 流石にあそこまで汚しまくってしまったので、コリンも言いつけ通りトイレから逃げ出すような事は無く、文句を言いながらも個室に大人しく閉じ籠っていた。


 コレットは叱り飛ばす気力も無くし、無言でコリンを洗った後服を着替えさせ、朝御飯の準備に入った。


 コリンはトコトコとリビングに入ってきたが、グッタリと寝ているミラベルに声を掛ける事無く、ラグの隅っこに座ってじっとしている。


(コリンお兄ちゃん…?ちょっと変…じゃない?)


 クロエは首をかしげながらコリンを見つめる。


 コリンはどこを見るともなく、膝を抱えてじっと座っている。


 見ると彼の下半身は、朝からの騒ぎに疲れはてたコレットが着けたと思われるオムツの微かな膨らみがあった。


(母さん、余程精神的に参っちゃったんだね……普通にお兄ちゃんにオムツ着けちゃったんだ。気持ちは解る……今日のはホントに心が折れるわ)


 ミラベルは普段とは違うコリンの様子に気付いているかな、とクロエは臥せている彼女を見ると、疲れたのだろう、微かに寝息をたてている。


 思わずクロエはミラベルのピンクの頭をナデナデしてしまった。


(お姉ちゃんお疲れ様……偉いよね、5才でこんなに動いてくれる子居ないよ…。コリンお兄ちゃんの事、怒ったり叩いたりしててもやっぱり可愛くてしょうがないんだよね……)


 クロエはミラベルの頭を優しく撫で続けてると

「……わざとじゃないのに……」

 と呟く小さな声が聞こえた。


 顔をあげると、こちらを見ていないがコリンが小さな声でポツリと呟いている。


「僕だって……あんなことしたい訳無いよ。ホントに寝惚けてて、誰もいなくて……だから慌てて起きたらズボンがずれて脱げて……扉の前でズボンが引っ掛かってコケたんだ。……我慢してたのにコケて力が抜けちゃって、だから……」


 そこまで言うと、彼は膝に顔を伏せてしまった。


 ポーズかなと暫く見ていたが、泣くわけでなくこちらを見てくるわけでなく、ただ顔を伏せてじっと固まっている。


「何れ、母しゃんに言わにゃいにょ?言っちゃりゃ解っちぇくれりゅよ」


 クロエがコリンにそっとアドバイスする。


 するとコリンは顔を伏せたまま動かずにクロエに答える。


「格好悪いもん……そんなの。だから、面白く言っちゃったんだ……。そしたら母さんが何にも話してくれなくなった。お姉ちゃんも僕を見てくれないし。何で何も話してくれないのっ………!こんなの……嫌だ、淋しいよ……」


「……何れ謝りゃ無きゃっちゃにょ?汚しちぇぎょ免にゃしゃいっちぇ」


「……わざとじゃないし」


 ボソッとこぼすコリン。


「れも綺麗にしちぇきゅれちゃにょに」


「……それでも言いたくない」


「何れ?」


「……負けるのヤダ。……だから謝るの嫌い」


(どんだけ負けず嫌いだよ……てか、誰に負けるって?謝らないのはそういう理由とはね)


 クロエは静かに聞く。


「負けりゅっちぇ、誰に?」


「……お前や兄ちゃんや姉ちゃん」


「アチャシ?」


「………怒られるの僕だけだろ?お前は褒められてばっかじゃないか……兄ちゃんも姉ちゃんもだ。僕だけ……負けてる」


「……にゃら悪戯しにゃきゃ良いにょに」


「……違うことしなきゃ見てくれないもん。兄ちゃん達の真似したってさ」


「ホンチョは悪戯しちゃきゅ無いにょ?お兄ちゃん?」


「……わかんないよ、そんなの。でも一緒の事したって、僕のが下手だし。……悪戯なら負けない。僕が一番悪戯上手い」


(悪戯に上手下手……あるんだろうか?でもコリンお兄ちゃんの考えが分かった気がする。

 コンプレックスかあ……確かに上2人は天才だし、下のアタシは凡才でも25才の中身だし、コリンお兄ちゃんからしたらキツい兄姉プラス変な妹なんだ。

 だけど構って欲しいからって違う土俵を選んだのは解らないでは無いけど、今の悪戯戦法は余計にキツい方向にしか事態は動かないよ?……とにかく今はこれ以上、(こじ)れ無いようにしなきゃね。そこからだ)


「……れも謝りゃにゃいちょ駄目。今日にょは母しゃんみょ、お姉ちゃんみょ謝りゃにゃいちょ許しちぇくれにゃいよ。……コリンお兄ちゃんにゃりゃ解りゅれしょ?

 怒られりゅ前に謝りゅんらよ。じゃにゃいちょ……淋しいまんまらよ。良いにょ?」


 コリンはピクッと伏せた頭を動かしたが、無言のままだ。


(否定はしないか……でもあまりしつこく言ったら反発するだろうから、待つか)


 クロエもそれ以上は話さず、傍らでスヤスヤ眠るミラベルの頭を優しく撫で続けた。


 コリンもそのままクロエの問いに答える事無く、足を抱えたまんま座り続けていた。





 やがて朝御飯の支度を終えたコレットが3人を呼びに来たが、やはり疲れが隠せず声に元気が無かった。


 コレットは既に済ませていたため、いつもより人が少なくて淋しい食堂で、朝御飯を3人で食べる。


 ミラベルは少し寝たお陰で大分元気が出たようだが、やはり先程の惨状には思うところが有る様で、コリンを全く見ようとしない。


 コレットは汚れ物の始末に洗い場へ行ったっきりだ。


 クロエは朝御飯を食べながら

(う~ん、空気が重い。これは母さんとお姉ちゃんを責められないよね。

 お兄ちゃんがどうするか……さっきの様子じゃ、未だ意地を張りそうだよな。プッシュが必要かしらね、でも余り言うのもなぁ~)

 と口をモグモグ動かし考える。


 ミラベルは早々に食べ終わると立ち上がって食器を片付け始めた。


 洗い場に食器を持って行く為、彼女が食堂から移動しようとした時だった。


「……ごめん、お姉ちゃん」


 小さな謝罪の声が聞こえてきた。


「……何?」


 立ち止まり、コリンを見ずに尋ねるミラベル。


「わざとじゃ無かったんだ。今日のは……寝惚けてコケて、我慢してたのに痛みで力が抜けて……それで……」

 モゴモゴと口ごもりながら話すコリン。


「何ですぐ言わなかったのよ?」

 と、振り向いてミラベルがコリンに突っ込む。


「だって、格好悪いし……だから笑って貰えるように面白く言っちゃったんだ」

 と俯いて言いにくそうに訳を話す。


「ばかっ!あんなの笑える訳無いでしょ!正直に謝れば未だしも、アンタは!」

 戻って食器をガチャンとテーブルに置くと、ミラベルがコリンの頭を小突く。


「だ、だからごめんって……悪かったよぉ~」

 頭を庇いつつ又謝るコリン。

 心なしかミラベルに小突かれて嬉しそうだ。


「おいで!母さんとこに謝りに行くよ!ちゃんと自分で訳を話して謝んなさい!……ったく、手間の掛かる子!」

 とミラベルはコリンの腕を掴み、洗い場のコレットの元に連れていこうとする。


「え、待って、僕まだ朝御飯……」


「うるさいっ!先に母さんに謝んのよ!当たり前でしょ!おいで!」

 とミラベルは有無を言わさず、コリンを立ち上がらせると食堂を出ていった。


 クロエは口をモグモグさせながら、2人のやり取りを見ていた。


(な~んだ、案外素直に謝ったじゃないコリンお兄ちゃん。心配しなくて良かったかも。本人もきっかけが掴めないだけだったんだ。アタシ出歯亀だったね~アハハ!良かった良かった!……ん~朝御飯が美味しいねぇ)


 2人が出ていった扉の方を見てニッコリ笑ったクロエは、又自分の朝御飯を美味しそうに食べ続けたのだった。





  「アレッ?!何で!何でなの?!母さん、僕部屋に入れない!」


 クロエが朝御飯を食べ終わろうとした時だった。


 コリンの叫ぶ声が聞こえて、次いでバタバタと走る音が廊下から響いてきた。


 コリンの叫び声に冷静に答えるコレットの声が聞こえる。


 「ああ、扉が開けられないようにしてあるの。大丈夫、玩具はリビングにあるし、服はライリーが帰るまでの分は私達の寝室に置いといたから。

 これで貴方はライリーが帰るまで、あの部屋には入る必要は無いでしょ。寝るのも私達の寝室よ。

 文句無いわよね、オムツ外しトレーニング、気合い入れていくわよ。今日みたいな惨状、もう見たくないしね」


 コレットの言葉に

 「ひどい!何で!僕の部屋なのに~!」

 と憤慨するコリンに

 「オムツが外れたら、開けてあげます。おしっこを部屋で漏らしたら貴方隠すでしょ?だからガルシアとライリーが昨日決めたのよ。勿論ライリーが帰ってきたら開けるしね。今日と明日、失敗しなければ開けてあげます。頑張りなさい、コリン」

 とキツい内容を静かに諭すコレット。


 やらかしたばかりで無茶な反論が流石に出来ないコリンが、ワナワナ震えて叫んだ。


 「何だよーー!謝って損したーー!こんなの詐欺だーー!」


 クロエは食べ終わってご馳走さまをしながら

(ハハ!流石、あの兄の母だわ。負けてない負けてない。うん、でも良かった良かった。コレで普段通りだ~)

 と肩から力を抜いたのだった。

次話は明日か明後日投稿します。

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