47. 兄の出発、弟の大暴走
お読みくださりありがとうございます。
兄が旅立ちました。
で、弟が早速やらかし始めました。
とても不快になる不潔な表現が出てきます。
潔癖症、並びに下ネタ嫌いの方、要注意の回です。お気をつけください。
漸く男の子部屋の整理も一段落し、風呂で皆が交代で汗を流すと夕食の時間である。
皆で和やかに食事中、ディルクとライリーの2泊3日の州都行きが家族全員に告げられた。
とはいっても、知らなかったのはミラベルとコリンだけだったのであるが。
ミラベルは
「えーー!良いなぁ!絶対お土産買ってきてね~。先生、アタシもいつか連れてって下さいね~!」
と羨ましそうに言う。
コリンは何故か何も反応を見せず、ただ一言
「はぁい。2人共行ってらっしゃい~」
と言っただけだった。
後は明日ガルシアが2人を森からシェイロ村まで送り、そこからは辻馬車を頼んで州都まで向かう予定にしている事を聞かされ、夕食後コレットがライリーの旅支度を手伝うので子供達は直ぐに休むようにと指示された。
コリンはライリーの旅支度で寝室がバタバタすることもあり、今日は両親の寝室で休む事になった。
それを聞いてもコリンは
「はぁい。わかった~」
と簡単に了解しただけであった。
家族は皆、とても大人しいコリンに不審気な視線を投げ掛けたが、特に何かを企んでいる様子も無いので誰も何も言わなかった。
夕食を終えると、クロエとミラベルは昼間とても興奮していたせいか直ぐに眠くなり、早々に新しい“自分達”の部屋に引き上げた。
ガルシアはコリンのトイレに付き合い、色々と“男の排泄”の仕方について教示した後、念のため寝室に“おねしょ”対策をした簡易のベッドを用意し、コリンを休ませた。
ディルクは夕食が終わった後、暫くライリーと明日からの打ち合わせをし、自分の準備の為に小屋に引き上げた。
コレットとライリーは、彼の新しい部屋で旅支度をしながら、何やらヒソヒソと話し合いをしていた。
そこにコリンを寝かし付けたガルシアが合流しヒソヒソ話に参加、話が決着するとライリーは寝る準備をし、コレットは明日の朝食と2人のお弁当の仕込みをする為台所へ、ガルシアは何故か外の木工作業小屋に向かいガタゴトと自分の道具箱と木切れを持って家に戻り、リビングの一角で木切れを加工し道具と共にリビングの扉近くに固めて置いた後、自分も寝室に引き上げたのであった。
明くる日の朝。
州都に出発する2人と彼等を送るガルシア、ご飯を用意するコレットはいつもより早く起床し、揃って朝食を済ませて出発準備をした。
彼等が出発する時間になると、コレットに起こされたミラベルとクロエが寝ぼけ眼で見送りにやって来た。
コリンは幾ら揺り起こしても全く目を覚まさず、コレットは彼に見送りをさせることを断念するしかなかった。
「じゃあ行って来るからね。ミラベル、クロエ後を頼んだよ」
ライリーはディルクと共にガルシアが御する荷馬車に乗り、見送りに起きてきた妹達に声を掛ける。
「うん、お兄ちゃんも先生も気を付けて行ってらっしゃい。帰ってきたら州都のお話いっぱいしてね!後、お土産忘れないでよ~!」
ミラベルが起き抜けとは思えないテンションでライリーにお願いをする。
「ライリーお兄ちゃん、先生行っちぇらっしゃい!気を付けちぇにぇ」
コレットに抱かれたクロエも、ニッコリ笑って2人に声を掛ける。
「ああ。クロエもミラベルと仲良くしてるんだよ。……後、コリンともね」
「うん、分きゃっちゃ。らかりゃ早きゅ帰っちぇ来ちぇにぇ、お兄ちゃん」
クロエがそう言うとライリーはとても嬉しそうに頷いて
「ああ、先生と一緒に早く戻ってくるからね。じゃ……行ってくる」
と応えた。
ディルクは
「コレット、ライリーを預かるぞ。なるべく予定通りに帰れるようにするからの。安心せよ」
とコレットに声を掛ける。
コレットが頷き
「はい、ライリーをよろしくお願いします。安全な佳き旅となります様、神のご加護を祈っております。
ライリー、先生のご指示をしっかり聞いてお手を煩わせたりしないのよ。
……2人共、どうか気を付けて。無事のお帰りを皆で待っていますからね」
と母親らしく、旅の無事を祈る。
皆の挨拶が一通り終わるとガルシアが
「じゃあ行きますよ」
とディルクに声を掛け、馬に鞭を入れる。
荷馬車がゆっくりと動き出した。
「行って来まーす!」
ライリーが大きく馬車から手を振る。
「「「 行ってらっしゃーーい!」」」
女性3人の声が重なった。
3人はライリーに負けないくらい大きく手を振って見送る。
やがて荷馬車はその姿を森の木立の中に溶け込ませていき、次第に見えなくなっていった。
荷馬車が見えなくなるまで見送っていた3人だったが、全く見えなくなると漸く家に戻る。
家に入ると
「母さーーん!お姉ちゃんーー!クロエーー!どこーーー?!」
と半泣きのコリンの声が聞こえた。
3人は玄関先で誰からともなく溜め息を吐くと、コリンの泣き声の聞こえるリビングに向かった。
「あ!居たーー!何で僕だけ置いてったの?!イジワルするなんて酷いよ、僕だけ見送りに行けなかったじゃないか~!昨日の事で未だ怒ってるの?誰も居ないから僕を置いて皆で州都に行っちゃったのかって考えちゃったじゃない!……皆冷たすぎるよ、ウッウッ……」
コリンは一気に不満をぶちまけると、両手で目を擦り泣き声を出し始めた。
しかしコリンの姿が姿なので、誰も泣き声を気にする者がなかった。
……下半身が丸出しだったのだ。
「コリン?!貴方何て格好なの!昨日ユルいズボンを穿かせておいたでしょ?……まさか、又?!」
コレットがリビングのラグにクロエを下ろすと、何かに気づいたように慌てる。
「ちょ、クロエはここに居てちょうだい!ミラベル、一緒に来て!コリン、来なさい!早く!」
コレットがコリンの腕をガシッと掴むと、物凄い速さでリビングを出ていく。
ミラベルは眠気もぶっ飛んだ顔になると、慌てて
「クロエ、待ってて!」
と後に続いて走ってリビングに向かう。
クロエはアタフタしながら
「にゃ、何?!何ぎゃ起きょっちゃにょ?!」
と不安な気持ちのままリビングのラグの上で待つ。
すると絹を裂くような悲鳴が2つ、リビングの開けっぱなしになっていた扉の方から聞こえて来た。
(母さん?!お姉ちゃん?!……てことはやはりアレかーー!)
クロエは母と姉の悲鳴の原因に気付き、2人の悲痛な気持ちが手に取るように分かると、思わずラグに両手をついてガックリと首を垂れた。
……次に聞こえてきたミラベルの叫び声が、全ての惨状を語っていた。
「アンタは何でオシッコしながら歩いてんのよーーー!きゃあ!踏んじゃったーーー!」
「ミラベル、止まって!動いちゃダメ!……いやあっ!だ、台所にまで……!寝室に廊下に台所……どれだけ汚せば気が済むのーーー!」
「だって、止まらなかったんだもん~。ベッドでおねしょはダメって言ったじゃないか!だからがんばってベッドからは出たの。
でも扉のとこでチョロって出ちゃってさ。後は止まんないの。
で、母さんに言おうって探してたら、オシッコもずっと止まらなかったんだよね。そしたらこれだけ出ちゃったの~。
ビックリした!」
「「 何でトイレに行かないのーー!」」
「だから~トイレに行く前に出ちゃったの!どうせ床汚れたし出るの止まらないし、もう良いや!って。だから行かなかった!
……だけど、オシッコで廊下スゴく臭いから、早く掃除して~!」
「ア、ア、ア……ン……タって子はっ………!」
「……母さん、とにかく早く掃除しなきゃ……バカの事は後回しよ!でも、アタシも動けないから、道具を早く!……このバカは次いでにトイレに放り込んどいてーー!」
「ウウッ!ミラベル、待ってなさい!コリン、アンタは後からみっちり話があるわ!暫くトイレに入ってなさい!」
「……寒いから、ヤダ!」
「「 うるさいっ!つべこべ言わずにサッサと入れーー!」」
ガチャッ、バッターーーン!
「痛いなぁもう~!ココ寒いんだから早く掃除してよ!暫くトイレで待ってるからさ~!」
「「 1日入ってろっ!バカッ!」」
クロエが居るリビングの外は、考えたくない汚染状態に在るようだ。
(コリンお兄ちゃんに悪気は無い……と思いたいけど、どう考えてもコレは酷いよ……!何で歩き回ったんだ?!
真剣にコリンお兄ちゃんのトイレトレーニングを成功させる方法考えよう!このままだと周りが今以上に大変になる!)
廊下から聞こえる母や姉の阿鼻叫喚を耳にしながら、クロエは腕組みをしてブツブツと一人言を言い始めた。
ドタバタドドド……!
母と姉のチラリと見え隠れする走り回る姿と凄い足音、そして時折聞こえる
「………アイツ、絶対シメる!」
と言うミラベルの呪いの声や
「ウッ……ウッ……ギャッ!か、壁も~……ウッ……」
と言う母の嘆きの声、その合間に聞こえてくる
「……ねぇ、まだぁ~?お腹すいた~。寒いよぉ!……つまんない~」
と言う、気の毒な女性陣の神経を逆撫でするコリンの呑気な声が混じりあう。
クロエはその声を聞きながら
(コリンお兄ちゃん……せめて謝ろう?お掃除させてご免なさいって気持ち、持とう?
……やりたい放題、これじゃ本物の暴君だよ。
でもムチじゃ言うこと聞かないタイプだと判ったし、となると飴だよね……。
ご褒美、文字通り飴がいるかもしれないなぁ。さて、どうしたものか……)
と一人思案に暮れるのだった。
次話は明日か明後日、投稿します。




