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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
24/292

1-24 不思議植物

お読みくださりありがとうございます。


更新遅れました、寝落ちです。



  程好くお腹もいっぱいになった一行は、又各々別行動を取り出した。


 コレット母さんと側仕えチーム(?)は、昼食の後片付けである。


 ガルシアとジェラルド、騎士の二人は円座になって何やら難しい顔で“会議”の真っ最中だ。


 ジェラルドに凄く可愛がってもらったコリンは、精神的に相当疲労したのか昼食後コテンと眠ってしまったので、今はラグの上ですうすうと夢の中である。


 アナスタシアとクロエ、ライリーにミラベルは、野原の真ん中で円座になって不思議植物達の“お勉強”の真っ最中だ。


 “講師”はミラベル先生。


 “助手”をライリーが務める。


 “生徒”であるアナスタシアとクロエは目をキラキラさせて、ミラベル先生の講義を熱心に聞いている。


 前に教えてもらった純生クリームの花や鈴の音がする雄しべ雌しべがガラスの花、透明な風船花、ラッパ花以外にも新しい花を幾つか教えてもらった。


 前の世界にも“おじぎ草”という草があったのだが、その草と同じ様で居て、更に面白い動きをする花があった。


 “おじぎ草”とはその名の通り、触れると開いていたシダの様な葉を閉じ、お辞儀をするようにしなだれていく事から名付けられた。


 この世界の“おじぎ花”は最初蕾で触ると花開く。


 そして触った者の方に自然と“頭”を向けお辞儀をするのだ。


 まるで玩具の様に見えてしまうが、紛れもなく花なのである。


 風が吹くと群れて咲く“おじぎ花”は踊っているかのように、花が揃って“顔”を右に左にリズミカルに振る。


 クロエは揃って“顔”を振るおじき花を見て、自然と自分も頭を振ってしまった。


 お座りして花達と同じ動きをする生後半年の赤ちゃんであるクロエの姿は、正直物凄く可愛い。


 周りで見ていたミラベルやアナスタシアが可愛さ余って、思わず抱き締めてしまった程だ。


 ライリーも抱き締めたかったが、そんな自分の想像して恥ずかしくなり、必死に姿を愛でるだけに留めた。


 赤ちゃんの無意識の可愛いアピールは、破壊力抜群である。


 後、同じ茎から全く違う色形の花が咲く“七色花”と呼ばれる、綺麗だが何とも(まと)まりの無い花があったり、レース編みの様に繊細な模様の花弁のとても清楚且つ豪華な花があったりした。


 しかしクロエは今回一番不思議だったのは、前に教えてもらった透明な風船花だった。


 確かミラベルが花の茎にシャボン玉を作る要領で息を吹き込んだ際、花は膨らみ中が“赤く”色付いてパンッ!と破裂した筈だ。


 なのに今回ライリーが助手として花を膨らませたら“青く”色付いてパンッ!と破裂したのだ。


 心なしか周りの空気が冷たくなった気がした。


(あれ?前の花と同じじゃないの?“色”が違う…?でも今のは透明なあの花だったよね?色違いが有るのかな)


 次にアナスタシアもやってみた。


 今度は何と“緑”に色付いてパンッ!


 すると周りの空気がつむじ風になって花達を大きく揺らした。


 アナスタシアもミラベルも髪を押さえたり服を押さえたり。


 クロエは風に煽られて、後ろにゴロン!


 慌てたライリーがクロエを抱き上げて怪我がないか、彼女の頭や体を確かめる。


 アナスタシアも乱れた髪で慌ててライリーとクロエ、ミラベルに覆い被さる。


「皆怪我は無い?!」


 アナスタシアの切羽詰まった問いに、ライリーもミラベルも

「無いですよ、大丈夫です!」

「はい!大丈夫です!」

と、大きな声で返事した。


 クロエはひっくり返った自分が余りにも間抜けで思わず

「アヒャヒャヒャ!」

と、怪しげな笑い声をあげてしまった。


(ダルマさんだ!アタシ完全にダルマさんだよ~。ゴロンだって、ブハハッ!マンガだ、これ!ダメだ、笑える~!)


 ライリーに抱かれたまま変な声で笑うクロエを見て、アナスタシアもミラベルも彼女を抱いているライリーも、クロエが頭を打ったのかと心配でオロオロしている。


 “不思議植物”お勉強チームの場所で風が巻き起こったのを見て、ジェラルドやガルシア、騎士達、側仕えが走ってきた。


 もしもの時に備えて、コレットはコリンに駆け寄り彼を抱き抱えた。


「何があった!大丈夫か!」


 ジェラルドがアナスタシア達に厳しい声で問う。


「申し訳ございません、(わたくし)のせいですわ。あの“花”を膨らませましたら破裂してしまいましたの。その後“風”が急に…」


 アナスタシアが指差した“花”を見てジェラルドが

「…なるほど。あれは鏡映花だ。…アナスタシアよ、何色に変化した?」

と問うた。


「緑ですわ。…やはりそうですのね。申し訳ありません」


 アナスタシアが俯く。


 ジェラルドが微笑みながら首を振る。


「アナスタシアよ、気にするな。怪我が無ければ問題ない。

緑か。アナスタシア、其方余程ここで過ごした時間が楽しかったのじゃな。ここ暫くの気鬱も何処へ飛んでいったと見える。安心したぞ」


 アナスタシアはジェラルドの言葉を聞き

「はい、お父様。ガルシア達のお陰ですわ」

と嬉しそうに微笑んだ。


 ジェラルドは大きく頷くと

「ライリー、ミラベル。其方等は問題ないかの?」

と二人にも聞く。


 ライリーとミラベルは頷いたが

「僕たちは問題ありません。ただクロエが」

と腕の中のクロエを見る。


 既に笑い終えたクロエが

「アウ?」

 とライリーをもの問いた気に見る。


「クロエがどうした?怪我が有るのか?」

とジェラルドがクロエを覗き込む。


 クロエは首を小さく横に振る。


(怪我?ナイナイ!ありませんて!アタシはダルマさんみたいにゴロンって転がっただけ、アタシはダルマさん、ゴロン……ブハハッ!ダ、ダメ!ニャハハハ!)


「アヒャヒャヒャ!」


 しかし止せば良いのに、クロエは自分の転んだ姿を再び想像してしまい、変な声で笑い出してしまった。


 ジェラルドが急いで側仕えのモニカに

「モニカ!クロエを診てやってくれ。大丈夫だと思うが、外傷はないかの?」

と命じた。


「畏まりました。さ、クロエお嬢様をこちらへ、ライリー様」


 モニカがライリーに手を伸ばす。


 ライリーは心配そうな表情のまま、モニカに笑い転げるクロエをそっと渡す。


 モニカは笑うクロエを隈無(くまな)く診察する。


「クロエお嬢様に怪我はありませんわ。単に笑ってらっしゃるだけですよ。楽しいことが有ったのですね。今も思い出して笑っていらっしゃいますもの」

 と笑ってジェラルドに診察の結果を伝える。


「クロエは大丈夫なの?モニカ」


 アナスタシアがモニカに問う。


「はい。クロエお嬢様はどうやら“笑い上戸”でいらっしゃるご様子。なにか余程面白い物を見られたか聞かれたのではないですか?」


 モニカの言葉にホッとする一同。


 クロエは笑いながら

(ごめんなさい!しょうもない笑いのツボにドハマりしただけなんです!ホント人騒がせでごめんなさい!)

 と心のなかで詫びたのだった。




 漸く落ち着いたクロエをモニカがあやしていると

 「モニカ、クロエをこちらへ。大丈夫か確認させてくださいませ」

 とアナスタシアが手を差し出す。


 「はい、奥様」


 モニカがクロエを渡す。


 「落ち着いたようね。クロエ、ごめんなさいね。(わたくし)があの花を破裂させてしまったから、驚きすぎて笑ってしまったのかしらね?」


 アナスタシアがクロエの頭を撫でる。


(違います~!アタシは昔から笑いのレベルが低すぎて、しょうもない事で笑い過ぎてしまうんです。ごめんなさい!)


 クロエが首を小さく横に振るのを見て、アナスタシアはフフッと笑った。




 「そろそろ引き揚げましょう。もうすぐ日が暮れます」


 ガルシアが声を掛けると、皆集まり荷物を持つ。


 行きより荷物は非常に少なくなったので、馬も楽そうだ。


  「何だか名残惜しいですわ。本当に美しい所ですもの。……又来れるかしら」


 アナスタシアが呟く。


 「是非又お越しくださいませ。アナスタシア様。ガルシアや子供達と心よりお待ちしておりますから。本当に是非!」


 コレットが優しくアナスタシアに話す。


 アナスタシアが柔らかく微笑んで

 「ありがとうございます、コレット。貴女には本当に感謝しております。又参ります、必ず。

それまで待っていてくださいませ。(わたくし)の宝と、この地をお願い致します」

とコレットに頼む。


 「その御心、しかと胸に。お任せくださいませ、アナスタシア様。私の全てを掛けてお守り致します」


 コレットが真摯な声で応えた。


 アナスタシアははしゃぎすぎてウトウトし出したクロエを見つめながら、小さく頷いたのだった。



次話は明日か明後日投稿します。

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