275 おはようって声かけられると緊張するよね
※この作品には暴力的な描写が多く含まれます。読者の年齢や感受性に応じてご注意ください。(今更)
「おはよう、弥月」
「ひっ! お、おはよう……でも、いきなり後ろから声をかけるのは、やめてほしい、です……」
後ろから声をかけると、彼女は凄く驚いていた。
その綺麗な水色の目が大きく見開かれてよく見えた。
ちゃんとヘアピンを付けてきてくれたことが嬉しいってのもあるが、驚いているその顔が面白くて少し笑ってしまった。
なので後ろから声をかけてはいけないという反省を生かし、次の日はちゃんと視界に入るようにした。
「おはよう、桜井さん」
名前呼びもダメなのかと思い、名字呼びにしてみた。
弥月はいきなり視界に入られて驚いたようだった。じゃあどうすればいいのかと思ったが、本を読んでいて集中していたのも事実だった。
次の日、今度は声をかけないことにした。
「……………」
「あ、おはよう木野さん」
「おはよう鈴木さん」
そこで彼女は俺の存在に気づいたのか、読んでいた本からと顔をあげた。
俺はクラスメイトに振った手を下ろさないまま弥月に目線を移した。
「……え、え!? うえ!? なんで、いるの!?」
「そりゃ自分のクラスなんだから……」
「で、でも声かけなかった……」
「昨日驚かれたから、今日は声をかけないでみようと思って」
「あ……おはよう」
「おはよう」
彼女は少しすねたように本に視線を戻した。
本を読まれるとその綺麗な目が見えないので、少し嫌だった。
次の日。
「おはよう」
今日は普通に声をかけた。
彼女はもう驚かなくなっていた。
「……ぉ、おはよう。鏡、くん……」
「……え?」
「え?」
名前で呼ばれたことに驚いて、思わず固まってしまった。
「え、あ、ごめんなさい。木野さん。名前呼びは嫌でしたか。じゃ、じゃあ、また木野さん呼びに戻ります」
「いや、そう言う意味じゃないんだよ。ただちょっと驚いて」
慌てる弥月を見て、少し安心するし、ほほえましく感じる。
今思えばこれはきっと、恋だったんだと思う。
・・・
「鏡さん、今帰りですか?」
帰り道、弥一と同じクラス、つまり、隣のクラスの紀章に出会い、一緒に帰ることになった。
「そうですか……桜井弥月さん」
紀章は彼女の顔を思い出すように名前をつぶやいた。
それからはぁ、とため息をつく。そしてその後、ため息をついたことに気づいたのか、すみませんと謝った。
「……そうですね。面倒ごとが起きなければいいですが……」
ランドセルの肩ひもを握りしめながらそうつぶやく紀章の意図が、この時はまだ、理解していなかった。
ナ「面倒ごと?」
分かんないの? アホだね。さすが低学歴。
ナ「なんだと? お前も低学歴だろ」
仕方ないでしょ? まだ義務教育中なんだから。
作「低学歴です☆」
白「私も☆ ブーメランじゃんキキ」
ナ「全員低学歴じゃん。っていうか頭の良さに学歴関係ないよね?」
……確かにそうですね。




